「正直、ずっとガールズバンドを続けていると思っていました」――SAKI、自身の“芽吹き”と日本音楽シーンの多様性

日本のシーンには、自分たちが思っている以上に自由な部分もあると思うんです
――ここからは曲ごとにお聞きしていきます。リード曲でもある表題曲「PLUVIA」は、岡ナオキさんとの共作で、アレンジも岡さんが担当されていますね。
SAKI:岡ナオキさんとは10年以上前、Mary’s Bloodの頃からの知り合いなんです。私のこともすごくわかってくださっているので、「PLUVIA」は最初に私が作っていた部分をお渡しして、「こういうイメージです」と伝えて、そこから構築していただきました。サビのメロディや、和を感じさせる音階などは岡さんが考えてくださって。「なるほどな」と思いましたし、そこも面白かったです。
――ピアノのしっとりした音から始まり、まさに雨が降り出すような流れを感じました。
SAKI:本当に、私のなかにある「雨が降っている、ちょっと静かな感じ」をお伝えしました。そこから曲の表情がすごく変わったなと思ったのは、川口千里ちゃんに、ほとんどフリーのドラムソロのように叩いてもらったところです。ちょっと嵐じゃないですけど、曲の起承転結にもつながっていて、曲の流れを汲んだドラムを叩いてもらえたと思います。
――続く「Dezerted Zygos」は、躍動感あふれるリズムが印象的です。
SAKI:「Zygos」はラテン語で“天秤座”という意味なんです。私は天秤座なので、そこからひとりで荒野のなかにいるようなイメージでこの曲を作っていきました。ドラムは打ち込みなんですけど、Yuki Shibasakiさんが全部打ち込んでくださいました。指ドラムのように手で叩いていただいたものを、みんなでさらに細かく調整していったので、打ち込みではあるんですけど、かなり作り込んでいます。
――Yuki Shibasakiさんは今回、多くの曲でアレンジを担当されています。
SAKI:岡さんに紹介していただいて、2024年にリリースした『GERMINANS EP』収録曲で、今作にも入っている「THE EMPRESS」で作曲とアレンジをしていただいたのが最初でした。もともとバンドをやられていた方で、今回もバンドっぽさと打ち込みっぽさのバランスをすごく考えてくださいました。「Dezerted Zygos」もバンドがメインではあるんですけど、印象的なシンセを入れたいという相談にも乗ってくださって、すごくありがたかったですね。
――「THE EMPRESS」は“女帝”という意味ですよね。
SAKI:Shibasakiさんが作ってくださったトラックを聴いて、自分のなかでは、K-POPのガールクラッシュ系というか、かっこいいトラックの上でギターを弾いている曲をやりたかったので、バッチリでしたね。ちなみに「THE EMPRESS」というタイトルは、使っているギターのモデル名が“Empress”だったこともあります(笑)。なかなか曲名が決まらなかったんですけど、女性の強さも表しているし、ギターにもちなんでいるので、このタイトルにしました。
――オーケストラヒットの使い方や、トライバルな旋律など、確かにK-POP、特にBLACKPINKを連想しました。
SAKI:K-POPのアーティストって、みんな音の作り込みがものすごいですよね。そういえばちょうどアルバム制作期間にピラティスへ通っていて、そこでよくK-POPが流れていたんですよ。そのイメージも結構強いかもしれないです(笑)。「こういう曲がかかっていそうだな」と思って、実際にそういう音楽を聴いていたので。

――いわゆるガールクラッシュ的なスタンスや表現には、共感する部分もありますか?
SAKI:うーん、どうなんでしょうね。以前、海外のインタビュアーの方から「日本は女性の地位が低いのに、なぜガールズバンドが多いんですか?」と聞かれたことがあって。その時にちょっとイラッとして、「じゃあ、なぜあなたの国は女性の地位が高いと言われているのに、ガールズバンドが少ないんですか?」と聞き返してしまったんですよ(笑)。
――とてもいい返しです(笑)。
SAKI:もちろん、ガールズバンドの草分け的存在であるSHOW-YAのメンバーさんたちは、当時すごく苦労したとおっしゃっていました。でも、日本には80年代からプリンセス プリンセスやSHOW-YAのようなガールズバンドがいて、その流れが脈々と続いて、今はSCANDALのようなバンドもいるわけじゃないですか。だから、そんなふうに言われてもな、と思ったんですよね。
日本の音楽シーンって、すごく多様だし、海外と比べても開かれている部分があると私は思うんです。かわいいフリフリのアイドルもいれば、ガールクラッシュ系のグループもいるし、やろうと思えばいろんな表現ができる。そこはすごく自由だと思います。もちろんそれは、先輩方のおかげでもありますが。
――“女性のエンパワーメント”という言葉が、海外ではある種の強い文脈として語られることも多いですが、SAKIさんの感覚とは少し違うのでしょうか。
SAKI:形骸化している部分もある気がするんです。女性のエンパワーメントが、ということですけど。海外では特にそう感じることがあります。もちろん、実際に問題があることもあると思いますし、自分も変なことを言われたことはあります。普通に言い返しますが(笑)。
でも、日本のシーンには、自分たちが思っている以上に自由な部分もあると思うんです。だから「私も頑張ろう」とエンパワーメントされる、という感じではないんですよね。女性が強いキャラクターになること自体は悪くないと思いますし、そういう雰囲気の曲は作りたかったのですが、「THE EMPRESS」は何かをエンパワーメントするための曲というより、ひとつの表現としてそういう強さを取り入れた曲ですね。




















