Gakuの歌は「春風」のように揺れながら前へ進む いくつかの転機を経て迎えた『楽祭』ワンマン

Gaku、『楽祭』レポ

 ライブハウスやストリートで活動を重ねながら、日々歌を磨くシンガーソングライター、Gaku。季節の訪れとともにワンマンライブを重ねてきた彼が、5月6日、東京・Shibuya eggmanで『楽祭 ~Gaku LIVE 春風~』を開催した。

 ライブは、Gakuの弾き語りによる「全てを」から始まった。シンガーソングライターとしての真っ向勝負と言える、潔いオープニングだった。〈全てをかけた僕の声を/君は受け取ってくれるかな/かけがえのない時間をくれた君に/どうか届くように〉と始まるこの曲は、紛れもなく目の前の観客に向けた歌だ。この春、いくつかの転機を経てこのステージに立っていたGaku。「全てを」で歌われるリスナーに寄り添う姿勢は、より深みを増していた。その力強い歌声がライブハウスの空気を、そして聴く人の心を震わせる。演奏後に「Gakuです、どうぞよろしくお願いします」と言葉を添えることで、この曲を最初の挨拶に変えた。

 2曲目の「偽り」からサポートメンバーが合流。Gakuの歌声はバンドサウンドに埋もれるどころか、むしろ翼を得ていきいきと羽ばたいている。ギターカッティングに合わせて手拍子が起きるなか、Gakuが「僕だけじゃなくてみなさんにも歌ってほしい曲があるんですけど、準備できてますか?」と提案し、「グッデイ」では観客とコール&レスポンスを楽しんだ。さらに、最近ファンから上がる「Gakuくんが遠くなっちゃう」という声を受けて、「少しでも近い距離で歌えたら」という想いで弾き語りパートを設けるなど、ライブは豊かに展開した。

 そんなGakuにとって、この春は特別な意味を持つ季節だった。今年3月、日本最大級のギター弾き語りフェス『J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2026 supported by 奥村組』にオープニングアクトとして出演。自分のステージを終えた時、「やりきった」という感覚があった。しかしその後、先輩アーティストたちのライブを目の当たりにして、「悔しい」「俺もあんなふうにカッコよくなりたい」という気持ちが込み上げてきたという。今回のライブでは、先輩アーティストへの感謝とリスペクトを込めて、同フェスにも出演していた秦 基博の「鱗」をカバー。さらに、〈憧れていたんだ/あの人の様になりたい〉〈たぎりだすこの感情が/僕の心に火をつけて〉と歌う「燈」を放ち、自らを奮い立たせた。

 転機はもう一つあった。専門学校の仲間とともに約4年続けたバンドが5月1日に解散した。GakuはMCで「青春の日々が終わる寂しさを感じている」「でも、楽しかった日々が背中を教えてくれる気もしている」と心境を語りながら、「ラストワンマンが終わったあとの夜、一人ぼっちな感じがしたんです、とても。これまで過ごした日々とこれから向かっていく未来を見失わないように、曲にしました」と明かした。そして披露されたのが、4月にリリースしたばかりの楽曲「春風」だ。和の情緒を帯びたメロディに切なさが滲む。バンドサウンドが疾走するなか、Gakuの声はまっすぐに突き抜け、しかしどこか泣いているようにも聴こえた。剥き出しの感情がそのまま歌になったような瞬間に、この日一番の拍手が起きた。続く「going down」ではサポートメンバーのソロまわしを経て、Gakuが「ボーカル、Gakuです!」と宣言。バンドがアグレッシブな演奏を繰り広げるなか、「イェー!」とGakuの爆ぜるような叫びがフロアを貫いた。

 本編ラストのMCは、「最近は、"なんで歌ってるんだろう"、"音楽をやってるんだろう"と思う夜があります。すごいアーティストさんが溢れてる世の中で、僕じゃなくてもみんなを楽しませられると分かってるのになんでやってるんだろう?って」という正直な告白が心に残った。そしてGakuはその問いに対する答えを既に持っている。「路上やSNSで出会ったみんながかけてくれる声やコメント、今日ここに来てくれたことが、僕が音楽をやってる意味なのかなと思ってます」と、さらに「この先どんなに悲しいことやつらいことがあっても、あなたの隣に僕の声と音楽があるから大丈夫」と言葉を重ね、「Blue」を歌い始めた。Gaku自身の孤独から生まれた、聴く人の心を穏やかに照らすこの曲を、観客は静かに受け取った。

 アンコールでは、リリース前の新曲「りんご飴」や「切夏歌」が披露され、次のワンマンを今年11月に行うことが発表されるなど、次に向けた動きもあった。そして「お父さんと日本武道館に立つ」とかねてからの夢も改めて語られた。Gakuが「ここにいるみんなもつれて最高の景色を見に行きたいんですけど、どうですか?」と投げかけると、観客が温かい拍手で応える。春風のように揺れながらも前へ進むGakuの歌は、この夜、確かに未来に向かって吹き始めていた。

■セットリスト
1.全てを
2.偽り
3.グッデイ
4.愛を
5.まだら
6.泡
7.鱗
8.アマレット
9.燈
10.春風
11.going down
12.Blue
13.りんご飴
14.切夏歌

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