ENVii GABRIELLA「“オバさん”というワードの価値観を変えたい」 森高千里オマージュ新曲に宿した真意

ENVii GABRIELLAが、新曲「私はオバさんになってる」をリリースした。候補楽曲のなかから、ファン投票によって選ばれた本作。そのタイトルからもわかるように、森高千里の楽曲「私がオバさんになっても」をオマージュしたユーモアたっぷりのパーティソングに仕上がっている。
しかし、それだけで終わらないのがENVii GABRIELLA。コミカルな楽曲のなかにも、将来に希望を持てない若者世代に向けたメッセージが込められている。リアルサウンドでは、Takassy、HIDEKiSM、Kamusにインタビューを行い、ファン投票企画の真意や「私はオバさんになってる」制作の経緯について聞いた。(編集部)
ファンが選んだ新曲――投票企画の真意とは

――新曲「私はオバさんになってる」は2月にKanadevia Hallにて開催されたライブ『ENVii GABRIELLA LIVE 2026「TRIGENESICA」』の投票企画で決まったものということで、まずは『TRIGENESICA』について聞かせてください。
HIDEKiSM:大感動でした! Kanadevia Hallでやらせていただくのも夢のひとつだったし、そこにたくさんの方が集まってくださったこともうれしくて。3階まで席がある会場でライブをやるのは初めてだったんですよ。だから景色も今まで見ていたものとは全然違って。それと、ステージの背面にビジョンを入れたんですが、そうやって作りたかったライブを形にできたこともうれしかったですね。
Kamus:アルバムを携えたツアーではなく、「また新しいエンガブを作る」というコンセプトのもと開催したライブでした。そこで「私はオバさんになってる」を含めて未発表曲を4曲披露したんですが、そのうち2曲でひさしぶりに振り付けに参加させてもらいました。振り付けしたのも、それを踊ったのも、新しいエンガブを見せられたことも楽しかったです。
Takassy:Kanadevia Hallの作りもあって、ステージに出て客席を見た時に「そんなに大きくないな」って思いました。奥行きがない作りだからだと思うんですけど。だから変に「今まででいちばん大きい会場だ」と思いすぎず、気張らずにステージに立てました。そう思えるのって、自分たちが成長した証でもあって。だから満足感と同時に、終わったあとには「もっと大きいところでできるはず」という意欲もわいて「ここで満足したくない」という気持ちにあらためてなった、そんなステージでしたね。
――そんな『TRIGENESICA』の投票企画「エンガブの未来を決めるのはアナタ!」で、次のシングルとして「私はオバさんになってる」がリリースされることが決まりました。この企画を行おうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?
Takassy:この企画自体は、そもそも『TRIGENESICA』というライブを盛り上げるために考えた企画でした。今回のライブはまた新しいことをしたいなと思って、近未来のイメージを持った『TRIGENESICA』というタイトルにしたんですね。だから(音楽でも)新しいエンガブを見せるために前回のツアーが終わってから、「火ノ鳥」「Pure Frigidity」という新曲をリリースして。ほかにもライブに向けて曲を作っていたから、だったら、これまで応援してくださった皆さんにも参加してもらって「次のシングルを決める」という形にして、溜まっている曲を出しちゃおうって。

――おふたりはTakassyさんからこのアイデアを聞いた時はどう思いましたか?
HIDEKiSM:「ああ、また言ってるわ」って(笑)。
Takassy:あははははは! いつも通り?
HIDEKiSM:そうそう。でも今回のライブは、リリースに伴うライブじゃなかったから、ここまでの集大成という感じのライブをやるのかなと思っていたけど、9周年ってすごく微妙。だったら、先に進む姿を提示する、新しいものを取り入れたライブになっていいなと思って賛成しました。
Kamus:めちゃくちゃ面白い企画だなと思いました。これまでにやったことがなかったし、エンガブの曲ってどういうものが密やかに人気なのかわからなかったから。とはいえ、投票してくれるのはきてくれた人の半分くらいかなと思っていたんですよ。そしたらほぼ全員くらいの勢いで投票してくれて。しかも締め切りまであと3日くらいのところでものすごく伸びて。
――皆さん、ギリギリまで真剣に悩んでくれたんですね。
Kamus:そう。だからやってよかったなと思います。
――とはいえ、「エンガブの未来を決めるのはアナタ!」という通り、シングルの選曲をファンの方に託すって、ファンに対して相当な信頼がないとできないことですよね。
Takassy:そうなんですけど、私たちとしては、「ホール公演を盛り上げたい」という気持ちが大きくて、あまり深く考えていなかったんです(笑)。もちろん「エンガブというものをファンの方と一緒に作りたい」「シェアしていきたい」という気持ちではあるんですけど、私たちのほうが軽く考えちゃっていたというか。私たちは「みんなどの曲に投票するかな」くらいの感じだったんですけど、ファンの人が「どうしてこの曲に投票したのか」をSNSに結構書いてくれていたんですね。それを見ていると、「個人的にはこの曲が好きだけど、新たなファンが流入するには『オバさん』がいいと思った」みたいなことを言ってくださる方がすごく多くて。「エンガブの未来を決めるのはアナタ!」なんて言っちゃったからファンの方も純粋に好きな曲に投票できなくなっちゃったっていう(笑)。
HIDEKiSM:でも、ファンの方が「エンガブを売るために」ということに注力してくれるということがわかって。そういう意味ではこの企画をやってよかったなと思います。
Takassy:そうだね。
新曲「私はオバさんになってる」を生んだSNSポスト

――投票結果で、次のシングルが「私はオバさんになってる」に決まりましたが、結果をご覧になった時は、どう思いましたか?
Takassy:「マジか!」って(笑)。「かっこいいエンガブが好き」という声を聞くから、予想は別の曲だったんですよ。だから、ギョギョッ!って思いました(笑)。もちろんどの曲も好きだからどれになってもよかったんですけど、予想に反していたからびっくりしました。
――そんな「私はオバさんになってる」について伺っていきたいと思います。この曲もいつも通り、タイトルからできたのでしょうか?
Takassy:そうですね。以前、「オリビアを聴きながらを聴きながら」という名曲のオマージュをリリースしたんですが、その頃から「私はオバさんになってる」という曲を作りたいということは考えていました。
――ずいぶん前から温めていたアイデアだったんですね。
Takassy そんななかで、SNSでとある投稿を見かけたことがきっかけになって作り始めました。それは若い子が、「年配の方とか年上の人がどんな投稿をしても叩かれているところを見て、将来に絶望しかない」と言っているポスト。それを見た時に「『私はオバさんになってる』を今作ったほうがいい」と思いました。ネガティブに捉えられがちな“オバさん”を、ポジティブに変換していきたいなって思ったし、意外と“オバさん”って言われることに関してこちらは何も感じていないということを、若い子に教えてあげたいなって。
Kamus:まあ、私たちは20歳なんですけど。
Takassy:そうそう。
――SNSでいえば、“平成1桁ガチババア”みたいな言葉も流行りましたしね。
Takassy:そう、「だから何?」って思う。私からしたら「もう年齢しか言うことないんだな」「それしか戦える武器はなくてかわいそう」って微笑んでいるくらいですけど。それこそ私たちが“オカマ”とかそういうワードに晒されてきたから余計に感じることなのかもしれない。“オカマ”も“オバさん”も親しい人に言われると「へへ」ってなるけど、明らかに悪意があるとすごく嫌な気持ちになる。だからこの“オバさん”というワードの価値観を変えたいなって。

――歌詞にもありますが、実際、いわゆるオバさんと呼ばれる年齢になってみると、オバさんのほうが楽になると言うか、生きやすくなることもありますよね。
一同:うん!
Takassy:2番の歌詞にもありますけど、チートできるようになるじゃないですか。年齢を重ねれば重ねるほど「こっちに行くと失敗するな」ってわかるから、ショートカットできたりして。買い物ひとつとっても、損しない買い物ができるようになったりとか。どんどん生きやすくなって、その分楽しくなってくる。
Kamus:なんか「20歳になったらまともにならなきゃいけないんじゃないか」とか「30歳になったらこういうポジションでいなきゃいけないんじゃないか」みたいな考えが勝手にあったんですけど、別に気にしなくていいんだなって。オバさんというか、大人になるってそういうことなのかなって思ったりはしますね。
Takassy:あと、キャリアって年を取らないと重ねられないじゃないですか。HIDEKiSMさんは、歌を始めて今年で20周年なんですよ。当たり前ですけど、20年経たないと20周年にはならないじゃないですか。そう思うと、「その年齢で戦える?」って思いますよね。
HIDEKiSM:私は昔からオバさんっぽかったから、アレなんですけど。
Takassy:私はオバさんになってた。
HIDEKiSM:そう、なってた。だけど2番の〈会える頻度 場所とか話すこと/年々変わってく〉っていうところがあって。そこにはコーラスで「保険と税金」って入るんですね。実際、会話のネタは年を取ると昔よりかわいげはなくなりますよね。だけど、知識が増えているからできる会話みたいなのも増えていくし、だからこそそのあとに続く〈そんなこと気づかない位には/楽しんじゃってる〉もそうで。そういう会話すらも楽しんでるから。
この曲のきっかけになったSNSの話もそうですけど、私たちが楽しまないと、下の世代の子達が楽しめないんですよ。それはステージに立つ時に、「お客さんを楽しませる前に私たちが楽しまないと」っていうのと同じで。だから年を取ることってワクワクするんだよということを、この曲で伝えたいなと思います。
――ENVii GABRIELLAがこれまで、自分たちが楽しむ姿を見せることでGAVii(ファンの呼称)が楽しんでいく姿と、それが広がっていく様子を見てきたからこそ、なおさら歌いたかったことなのかもしれないですね。
Takassy:そうなのかもしれない。



















