「自分が幸せだったら勝ち」――ENVii GABRIELLA、“時代の違和感”をダンスミュージックに 『ENGABALL』を語り尽くす!

エンガブ、新作で向き合った時代

 ENVii GABRIELLAが、メジャー2ndフルアルバム『ENGABALL』をリリースした。“ダンス”をテーマに制作された本作には、思わず身体が動き出すディスコソングからエンガブの色で表現された盆踊りソングまで、さまざまなパーティーチューンが収録されている。しかしその歌詞に耳を傾けてみると、明るく楽しいだけではない、時代を見つめたシリアスなメッセージが込められていることに気づく。

 リアルサウンドでは、Takassy、HIDEKiSM、Kamusにインタビュー。本作で“ダンス”をテーマに掲げた理由、SNSが楽曲制作に与えた影響、歌詞に忍ばせた真意まで幅広く話を聞いた。真剣に、しかし時にふざけ合いながら語ってくれた3人の言葉から、本作に込められたメッセージを受け取ってほしい。(編集部)

“観てもらう”から“一緒に楽しむ”への意識の変化

ENVii GABRIELLA(撮影=加古伸弥)
Takassy

――今作でダンスをテーマにした理由を教えてください。

Takassy:ENVii GABRIELLAは、ダンス楽曲、クラブサウンドと呼ばれるものをずっとやっていたんですが、「お客さんと一緒に盛り上がる」というよりは、「私たちが好きなものを見てもらう」「それに共感してくれる人がいたらいいな」というスタンスだったんです。でも、ライブを重ねるうちに「まさかここでコールアンドレスポンスが起こるんだ!」とか「ここでこういうふうにノってくれるんだ!」という発見があって。だったら、次のツアーでは、“観てもらうSHOW”というより、きてくれた人も一緒になって楽しめる空間を作ってみたいなと思ったのが発端です。

――年々ライブの規模も大きくなっていますしね。

Takassy:そうそう。あと、去年出したミニアルバム『DVORAKKIA』がコンセプトアルバムだったことの反動が大きかったんだと思います。ツアーも一本の映画を観てもらっているような作りになっていたので。流れている曲にノってもらえればいいな、って。「みんなでノって踊ろう!」ということだけを考えて作りました。

――YouTubeでは「明るい歌詞を書こうと思って苦労した」ということをおっしゃっていましたよね(※1)。明るい歌詞を書こうと思ったのはどうしてだったんでしょう?

Takassy:世のなかが暗いから、ですかね。3人で話していても税金の話とか保険の話とか――。

HIDEKiSM:「野菜高くない?」とかね。

Takassy:そうそう(笑)。あとX(旧Twitter)だと、みんな文句しか言ってないじゃないですか。「男ってこうだ」「女ってこうだ」って決めつけた発言とかもあって。そういうものを見て辟易しちゃっていたというのもあると思う。こんなご時世だから、楽しめる音楽を3人で作ろう、って。

――ちょうど、“ダンス”というテーマと感じていることがリンクしたんですね。実際に踊れる楽曲が収録されていますが、核になった曲を挙げるとしたらどれになりますか?

Takassy:作っていて核になったというよりは、結果的にアルバムの核になったなという感覚なんですけど、それで言うと1曲目「Love is Always Light of My Life」と10曲目「(Life is always like a )Ball」。あえてタイトルも同じような文法にして、「愛とは」で始まって「人生とは」で終わる構成にしました。

ENVii GABRIELLA(撮影=加古伸弥)
HIDEKiSM

――「Love is Always Light of My Life」は、アルバム収録曲のなかで最初に着手して最後にできあがったそうですが、どういったところから作り始めたのでしょうか?

Takassy:単純に「ディスコの曲を作りたい」というところから始まりました。「ダンスといえばやっぱりディスコでしょ!」みたいな。私たちはそういう曲が特にハマるし。そういうしっかりしたイメージがあって着手したんですけど……明るい歌詞が本当に苦手なので、歌詞のテーマが全然出てこなくって。最終的に、友人や近しい人への愛を歌った曲にしました。

――悩んだ末に、近しい人への愛を歌った歌詞にしたのはどうしてですか?

Takassy:「何が私の人生を照らしてくれるのか?」を考えた時に、恋愛感情を超えた友達との楽しい時間や思い出だったんですよね。そういう時間があるから、この先も人間を大事にしようと思えるな、と。失恋しても裏切られても人を求めちゃうのって、そういう思い出があるからなんだろうな――そういうところに行き着いて、この歌詞になりました。

――それが、ENVii GABRIELLAなりの「愛とは?」ということなんですね。HIDEKiSMさんはこの曲を聴いた時、どのように感じましたか?

HIDEKiSM:「とてもハッピーだな〜!」って。

Takassy:何、そのテキトーな感想! あとでその髪の毛のお団子、むしってやるわ!

HIDEKiSM:ヤだあ(笑)!

Kamus:あはははは!

HIDEKiSM:私はこれまでディスコ系のサウンドというものをあまり聴いてこなかったんですけど、souljuice(Takassyの作家名義)が作る楽曲だとスッと入ってくるんですよ、いつも。だから、この曲をもらってからディスコ調のサウンドが好きになりました。

――あまり聴いてこなかったジャンルということですが、歌うのはいかがでしたか?

HIDEKiSM:ディスコをイメージしながら歌ったので――行ったことないですけど(笑)――自然と口角が上がるというか。自然と「みんなで楽しく踊ろうぜ!」という感じになりましたね。

――Kamusさんはこの曲を聴いて、どのように感じましたか?

Kamus:私はHIDEKiSMと違って、一瞬でステージが見えました。踊っている人もいれば、隅っこでお酒を飲んでいる人もいる、みたいな。それくらいディスコの煌びやかさや楽しさが見えて、「この人はまた面白い曲を作ったわ!」と思いました。それをライブで表現するのが楽しみだなって。

――まさにライブでめちゃくちゃ映えそうな曲ですもんね。

Takassy:もうそのことしか考えてなかった(笑)。

Kamus

――3曲目の「誕生誕生Birthday」は、ハッピーなお誕生日ソングです。個人的にはこの曲がすごく刺さってしまいまして。特に〈生きてることは普通じゃない/今日は明日じゃ満たされない/昨日までの全自分が勝ち取ったでしょ〉という歌詞には思わず涙が出そうになりました。

Takassy:エンガブのライブって、ポジティブな曲で号泣されている方が結構いらっしゃるんですよ。「あ、泣いてる」って思いながら歌ってますけど(笑)。

HIDEKiSM:私たちから出る苦労臭を感じるのかな(笑)。

Kamus:「言われたかったことを言ってもらえた」みたいな感覚があるんじゃない?

Takassy:ああ、そうね。でも、「このフレーズは自分のために歌われてる」みたいに言ってもらえるのは、すごくうれしいです。

ENVii GABRIELLA【MV】誕生誕生birthday - Official Music Video-

――よかったです(笑)。そんな「誕生誕生Birthday」はどういうことをきっかけにできた曲なのでしょうか?

Takassy:ヤケクソですね。

――ヤケクソ?

Takassy:またXの話になってしまいますけど、今って行間を読んでもらえないシステムになっていて、何を言っても揚げ足を取られるような、優しくない世界じゃない気がしていて。たとえば、家族について歌おうとしたら「家族がいない人は傷ついてしまうかもしれない」と考えるようになってしまったりして。そういうなかで「万人に共通するものってなんだろう?」と考えたら「誕生日だわ!」とひらめいて、誕生日をテーマにすることにしました。歌詞にもありますが、その人が生まれたことを讃える曲になっていて。「あんたのために人生分の〈誕生〉を言ったわよ!」って感じなので(笑)。この曲は令和版「Happy Birthday to You」になってほしいなと思いますね。

――もはや人生讃歌のような歌詞ですよね。

Takassy:最初はね、教訓めいた歌にしようと思ったの。365日って、区切りがないじゃないですか。「じゃあ人って何で区切るんだろう?」と考えたら、やっぱり誕生日かなって。歌詞にもありますけど、意味を持たせれば翌日から違う日々が始まるけど、普通の一日だと思っていたら、ただ毎日が過ぎていくだけだよ、って。

――私が感動したフレーズもそうですけど、そういうことを一度噛み締めるタイミングが誕生日だよ、と。

Takassy:そうそう。自分では「頑張ってきた!」って思いづらいじゃないですか。だから、誕生日に一年間の自分を労って次に進めばいいし、だらだら生きてきちゃったなっていう自覚があるんだったら、誕生日をきっかけにまた頑張ればいい。誕生日を切り替えるきっかけにしたらいいんじゃないかなって思って、書きました。

ENVii GABRIELLA(撮影=加古伸弥)

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