原因は自分にある。の季節は廻る、何度でも――尽善尽美の設計、ツアー『輪廻の箱庭』解体レポート

原因は自分にある。『輪廻の箱庭』解体レポ

 原因は自分にある。が3月にリリースしたEP『文藝解体新書』には、日本文学の名作と春夏秋冬を掛け合わせた4曲が収録されている。本作を携えて始まった『LIVE TOUR 2026 輪廻の箱庭』は、箱庭のなかで巡る四季を追体験するような、そして徹底的に設計された尽善尽美のライブだった。本稿では、ツアー初日となる3月17日の大宮ソニックシティ公演第2部の模様をレポートする。

 会場に響くのは、時計の針が刻まれていく音。やがてレーザーが一本の線を描き出すと、同時に心電図のような音が聞こえてくる。その線が箱型へと変化し、内部に浮かび上がる大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人のシルエット。ツアータイトルにある“箱庭”という世界観を想起させるオープニングだ。次の瞬間に幕が落ち、1曲目の「藍色閃光」へ。間奏ではメンバーが手を掲げる動きに呼応するようにライティング装置が下から上がっていき、まるで彼らが光を操っているかのような演出が美しかった。

 ライブは、吉澤が主演を務めたドラマ『親友の「同棲して」に「うん」と言うまで』(読売テレビ)のオープニング主題歌「NOW」、桜木が出演したドラマ『修学旅行で仲良くないグループに入りました』(朝日放送テレビ)のオープニング曲「トレモロ」と続く。直後のMCでは、ドラマと楽曲にまつわるトークが繰り広げられた。「NOW」には吉澤による〈「こっち向いて」〉というパートがあり、「言う前は、観測者(ファンの呼称)はそれぞれの推しを見ていた気がするけど、言ったあとは(自分が)視聴率100%になった気がする」と話すと、小泉が「でも、僕推しの方は僕を見てましたよ?」と返し、会場の笑いを誘う。一方、桜木は2日後に誕生日を控えたタイミング。20歳を迎える前の心境を問われると、「何もないよ! このライブしか考えてなかった」と語り、ライブへの気合いを感じさせるひとことには、ひときわ大きな歓声があがった。

 本ツアーは昨年末に行われたファンクラブ限定ツアーに続き、バンドセットでのパフォーマンスも特徴のひとつ。スタンドマイクで披露された「Foxy Grape」は、グルーヴィーなベースにギターやピアノの音色が華を添える、ジャズの香りのするアレンジに。続く「疾走」は、太宰治の『走れメロス』を題材にしたEP収録の“夏”にあたるナンバー。力強いドラムが原曲以上に躍動感を生み、観測者のコールも重なって会場の熱量をさらに押し上げた。

 幕間映像が流れている最中も、バンドによる生演奏が続く。ロック調のアレンジがなされているが、嵐が吹き荒れるのを想像させるけたたましい旋律は、ヴィヴァルディの「四季」より「夏」第3楽章だろう。そこから、同作品の「秋」第1楽章へと繋がれていく。どうやら、季節が夏から秋へと移り変わったらしい。

 季節の巡りを象徴するように、続いて披露された「愛無常」は、夏目漱石の『こころ』をモチーフにした“秋”を表す一曲。メンバーは椅子やステッキを用いながらシックに歌い踊り、R&Bテイストのサウンドと相まって大人びた空気を醸し出していた。きらびやかなピアノのイントロが鳴ると同時に歓声が上がった「魔法をかけて」は、この日1曲目の公演替わり曲。軽やかなダンスで魅せた後は、「ギミギミラブ」をポップに届けた。

 「パラノイドランデブー」「貴方に溺れて、僕は潤んで。」を経て、再びヴィヴァルディの「四季」より「冬」第1楽章がバンドによって奏でられる。スクリーンの映像にも、冬の雪景色が広がっていく。ステージに戻った7人は、怪しげな笑みを浮かべる。そのまま「Mania」で観測者たちを引き込むと、〈JUDGE〉の掛け声も響いた「因果応報アンチノミー」では、杢代が「大宮、まだまだいけるだろ?」と煽って会場のボルテージを引き上げていく。遠藤周作の『沈黙』を題材にした、EPでは“冬”にあたる「Silence」を届け、続く「スノウダンス」はテクノハウスのアレンジが施されていた。〈季節は廻る何度でも〉と歌われるこの曲は、なんて今回のライブに相応しいのだろうか。そんなセットリストの妙も感じさせながら、7人は曲の終盤で華麗に舞い踊り、ステージを去っていった。

 バンドの明るく華やかな演奏が、春の訪れを告げる。クラシック音楽に親しんだことがなくても一度は耳にしたことがあるだろう、「四季」より「春」の第1楽章だ。スクリーンには満開の桜が映し出される。花をあしらった衣装で登場した7人が披露したのは、EPのリード曲「ニヒリズムプリズム」。梶井基次郎の『蒼穹』を題材とした、“春”を表す楽曲である。本日2度目の日替わり曲「柘榴」を経て、春にぴったりの「桜Ground」では、会場にふわりと花の香りも漂う。7人の優しくも力強い歌声には、彼らがここにいることを強く感じさせるように、たしかな温もりが宿っていた。

 そこから突如、ステージに“3:40”の数字が現れる。メンバーが「無限シニシズム」を歌い上げるなか、数字は刻一刻と減っていく。そして、パフォーマンスが終わると同時に数字も“0”に。冒頭と同じようにレーザーが線を描き、やがて心電図が途切れるような音が響きわたる。命が尽きた、という意味だろうか――。だが、ライブタイトルの“輪廻”の言葉の意味を踏まえれば、何も悲しいことではないのかもしない。私たちはきっと、また彼らに会うことができる。

大倉空人
小泉光咲
桜木雅哉
長野凌大
武藤潤
杢代和人
吉澤要人
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 そして、誰もいなくなったステージに浮かび上がる『ARENA TOUR 2026 仮ノ現』の文字。6月27日、28日に兵庫・ワールド記念ホール、7月4日、5日に東京・有明アリーナにて開催される、原因は自分にある。にとって初のアリーナツアーだ。今度は箱庭ではない、もっと広い場所で――再び彼らに巡り会える時が楽しみだ。

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