香取慎吾が宿す“パンク精神” 忌野清志郎、THE BLUE HEARTSへの共感 壊し続けたアイドルの概念

 香取慎吾が“サロンの主”として進行を担う音楽トーク番組『偏愛ミュージックサロン』(NHK総合)の、レギュラー化を望む声が高まっている。『偏愛ミュージックサロン』は、昨年6月に第1弾が放送されると、たちまち大好評。これを受けて、放送時間を拡大した第2弾が3月28日にオンエアとなった。

 サロンでは、貴重な映像や音源を紹介するナビゲート役のDJとして岡崎体育も出演。ゲストを招き、自らが偏愛する音楽について思いのままに語り尽くすトークバラエティに、収録直後の香取の口からは「長年テレビやってるけど、このぐらいのテレビが大好きです」(※1)という言葉も飛び出した。

 この日のゲストは、俳優ののんとお笑い芸人で作家の又吉直樹。のんは忌野清志郎を、又吉はTHE BLUE HEARTSを、それぞれ偏愛するアーティストとして挙げると、その並びに香取も「清志郎さんからのブルーハーツって、なんですか今日!」と高揚を隠しきれない様子を見せた。

 のんが忌野清志郎の魅力に触れたのは、彼がすでに亡くなったあとだったそう。それでも遺された音楽に「心を掴まれて。大好きです」と瞳を輝かせる。そして、「忌野清志郎は“興奮”だ」という独自の持論を展開。「うぬぼれてはいけない」と多くの大人から言われるなかで、清志郎が〈うぬぼれてごらん〉(「I Like You」)と歌ってくれたことに衝撃を受けたという。「明るい曲を歌っていても切ない響き」に魅了され、のんが20代の鬱屈していた時期にも彼女を励まし続けた。布団のなかでひたすら音楽に耳を傾けて過ごす日々もあったそう。だが、気づけば「すごく興奮して。お布団の上で飛び跳ねてるみたいな。その興奮のおかげでいろいろ乗り越えて、楽しめてる」と、人生の“救い”となった体験を語った。

 そして、忌野清志郎のライブパフォーマンス映像を食い入るように眺めるふたり。汗だくになって熱唱する「スローバラード」の映像には思わず拍手とため息が漏れる。「いやあ」「よかった」とふたりが天を仰ぐと「もう何も喋れないし、喋らなくていい」(香取)、「もうこれで帰りましょう」(のん)とまったりした雰囲気に。トークバラエティのリズムをあえて外していくような遊び心あるそんな展開もまた、清志郎ワールドと共鳴しているように見えた。

 一方、又吉も「THE BLUE HEARTSはかっこいい」というストレートでシンプルな持論を語った。大人への不信感を抱いていた少年時代の又吉にとって、〈先生たちは僕を 不安にするけど/それほど大切な言葉はなかった〉(「少年の詩」)と歌うTHE BLUE HEARTSに「大人のなかにもいるぞ、こっちの味方をしてくれる人が」と勇気をもらったのだと振り返る。

 さらに、自分自身も文学賞を受賞したときには、「昔、自分が『イヤやな』って思っていた権威的な大人に(分類)されたらどうしよう」という危機感があったとも明かす。そんな又吉の気持ちに呼応するかのように、かつてギターの真島昌利が語った貴重なインタビュー映像が流れた。そこに映し出されたのは、ロックと文学の関係性について「詩とか小説とかの表現活動って、その当時のロックだったんじゃないかなって思う」と話す姿。その言葉を聞いた又吉も「嬉しいですね。いわゆる文豪と呼ばれてきた人たちって、決してみんなから尊敬されてる“先生”とは限らなくて。もっとパンクというか、不良性があって、破壊的で、でもやさしくて……っていう小説家もたくさんいて。やっぱり小説とか文学っていうものは、ロックと一緒で、どうしようもなさとか、情けなさ、愚かさを描くジャンルのひとつだと思ってる」と言葉を紡いだ。

 すると、最後に香取が「どこかね、ロックとかパンクなんですよ、香取慎吾って」と自身について語り始めた。「“慎吾ちゃん”って、あんまりそういうイメージないんですけど、実はそうなんです。スマホのメモとかにもね、『ぶち壊せ』とか『お前、何ゆったり落ち着いてんだ』みたいな言葉を残したり。『お前、パンクじゃないのか!』って奮い立たせるところもあって。そこには、今日の清志郎さんとブルーハーツが実はすごくいる。あんまり言わないけど、反骨みたいな」と、内なるパンク精神の一端を明かすのだった。

 思い返せば、香取の歩みは知らず知らずのうちに築かれた先入観や固定観念を壊すものばかりだった。アイドルの概念を変え、活動の場を広げ、国民的スターでありながら身近なアイドルであり続けた香取。その歩みは、“大人”という言葉でまとめられがちな、どうしようもない権威や鬱屈とさせられる世界への抵抗にも通じていた。その声にならない叫びは、ときに美術作品に、フィクション作品の演技に、そして歌やダンスの表現に昇華されてきたのだ。

 みんなの“慎吾ちゃん”の笑顔の奥に渦巻いていた純度の高いエネルギーは、変化の著しい現代にこそ不可欠なものだ。その破壊的でありながら、やさしく包み込む表現こそが、ロックやパンクで歌われる“愛”なのだとすれば。香取が長年言い続けてきた「アイシテマース」のフレーズが、王道にしてパンクなアイドルとして歩み続けてきた強さ、たくましさをもって響いてくる。『偏愛ミュージックサロン』で垣間見える、香取の強かな眼差しをレギュラー番組としてもっと覗いてみたい。そんな気持ちがくすぐられるのも納得だ。

※1:https://x.com/nhk_musicjp/status/2037903791186641105

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