夏川りみ「やっぱり私には歌しかない」――音楽への真摯な姿勢が滲んだステージ 夢心地に導く歌声で名曲を披露

夏川りみのワンマンライブツアー『夏川りみ コンサートツアー “たびぐくる” 2025』東京公演が3月24日に東京・めぐろパーシモンホール 大ホールで行われた。“2025”と銘打たれているとおり、本公演は昨年7月に開催予定だった公演の振替公演にあたる。結果的にツアーファイナルを担うこととなった会場には、約8カ月間にわたって夏川の歌声を渇望していたファンが多数詰めかけ、開場後まもなく待ちきれない様子で座席を埋め尽くした。
開演時刻が近づくと、場内BGMが優美なクラシック音楽から波音のSEに変化。しばし静かな海辺のムードに会場を包み込んだのち、ゆっくりと客電が落とされると、ブルーの逆光照明が照らす薄暗い舞台上にバンドメンバーの醍醐弘美(Key)、玉木正昭(Per)、樋口直彦(Gt)が現れて持ち場についた。すると3人はおもむろに柔らかなヒーリングサウンドを鳴らし始め、そこへ夏川が舞台袖から歩み出て万雷の拍手を呼び込む。迷いのない足取りで舞台中央に陣取ったかと思うと、すかさず繊細かつ芯のある透き通った歌声を〈海よ祈りの海よ 波の声響く空よ〉と穏やかに響かせた。たちまち客席を丸ごと甘美な歌世界にゆったりと引きずり込んだのも束の間、不意に「イーヤーサーサー」の掛け声とともにアグレッシブなアーシービートが打ち鳴らされ、場内に盛大な手拍子を巻き起こす。文字どおりダイナミックに展開する楽曲「ダイナミック琉球」で、華やかにステージの幕が切って落とされた。

ドラムセットのように組みあげられたリグから発せられる変幻自在のパーカッション、控えめながら勘所を心得た小粋なプレイが光るアコースティックギターと電子ピアノ、そして唯一無二の圧倒的なボーカル。ドラムレス&ベースレス編成で届けられるミニマルでオーガニックなアンサンブルが、みるみるうちにホール内を極上の癒し空間へと塗り替えていく。バンドの低音をピアノのみがまかなうことによって帯域に余白が確保され、そこを夏川の歌声が自由自在にのびのびと泳ぎ回ることができる仕組みだ。その大海原のように開けた音空間はボーカル表現の豊かさを際立たせ、細部までを味わい尽くさせる。「とにかく“歌”を聴いてほしい」という確固たる意思が明確に表れたバンド編成といえる。

ところが、1曲目を歌い終えた夏川は開口一番「皆さん、異変に気づいていますね」とおそるおそる切り出す。「ちょっと喉の調子が最悪な事態になっておりますが……」と申し訳なさそうに明かした彼女は、「精いっぱい心を込めて歌いたいと思います」とまっすぐな目で宣言。ひとたび歌いだせばコンディション不良を感じさせない伸びやかな歌声を響かせてオーディエンスを終始夢心地に導いた。
序盤は沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」やメガヒットナンバー「涙そうそう」、昨年リリースの最新アルバム『うた』収録曲と、繊細な歌表現が要求されるゆったりしたスローナンバーをひたすら披露し続けた夏川。喉の不調を感じさせない、真っ向から歌の力で勝負するストイックなセットリストを展開した。そんな彼女の心意気に打たれてか、客席から幼い少女の声援が飛んで会場を和ませるひと幕も。2024年にデビュー25周年のタイミングで発表されたシンボリックなバラード「詩、歌、唄」の披露前には、幼少期から歌とともにあった人生を改めて振り返り、彼女の歌に対する思いの強さが客席の温かな拍手を呼び込んだ。


続くミディアムテンポのポップチューン「君の暮らす街で会いましょう」はこの日唯一オケをバックに歌唱され、バンドメンバーがダミー楽器を抱えて夏川とともに一列に並び振付ダンスを披露。これを境にライブは陽気でアッパーなムードへと様変わりし、お囃子コール&レスポンスを機に景気よく提起された「エイサーの夜」を皮切りに、「祭りのあと風」「安里屋ユンタ」「豊年音頭」と怒濤の琉球ダンスナンバー連発で観客を踊らせる。そして「やっぱり私には歌しかないと思っているので、おばあになってもずっとずっと歌っていきたい」の言葉で喝采を浴びたのち、本編最後は「皆さんも一緒に歌ってくれるかなと思って選びました。私の声がこんなだから(笑)、みんなの声を聴きたいなと思います」と前置きして「花」をパフォーマンス。客席に盛大な合唱を巻き起こしつつ、夏川自身も手話を交えながら心のこもった歌声を届けた。

アンコールでは、どこまでも伸びるロングトーンが印象的なオルタナティブポップチューン「海の彼方」にはじまり、今年高校生になる我が子にかつて子守歌として歌った思い出話に絡めて「童神〜ヤマトグチ〜」を披露。華々しくも穏やかにフィナーレを飾ったのち、バンドメンバーを見送ってひとり舞台に残った夏川は、「もう1曲やっていい?」と問いかけて喝采を浴びる。父の教えもあり、幼少期から意識的に民謡を避けてきたことで“なんでも歌える歌手”になることができたという夏川だが、「小さいときから何曲か島唄を教えてもらえばよかったな」と胸中を吐露。「近いうちに古典民謡だけのアルバムを作りたい」との構想を明かした。そして三線を手にし、スポットライトに照らされて地元・石垣島に伝わる子守歌「あがろーざ節」を朗々と弾き語り。約2時間半に及んだ濃厚なステージに幕を引いた。

■セットリスト
01. ダイナミック琉球
02. 芭蕉布
03. てぃんさぐぬ花
04. イラヨイ月夜浜
05. 涙そうそう
06. 光と影
07. 永遠の消印
08. イコロ
09. 言葉
10. 詩、歌、唄
11. 君の暮らす街で会いましょう
12. エイサーの夜
13. 祭りのあと風
14. 安里屋ユンタ〜豊年音頭
15. 花
<アンコール>
16. 海の彼方
17. 童神〜ヤマトグチ〜
18. あがろーざ節
■ツアー情報
『夏川りみ コンサートツアー“たびぐくる” 2026』
日程:6月7日(日)
会場:大宮ソニックシティホール・小ホール <埼玉>
時間:開場 15:00 / 開演15:30
日程:6月14日(日)
会場:関内ホール <神奈川>
時間:開場 15:00 / 開演15:30
日程:6月27日(土)
会場:神戸新聞松方ホール <兵庫>
時間:開場 14:45 / 開演15:30
日程:7月4日(土)
会場:八千代市市民会館・大ホール <千葉>
時間:開場 15:00 / 開演15:30
日程:7月20日(月・祝)
会場:森ノ宮ピロティホール <大阪>
時間:開場 14:45 / 開演15:30
日程:8月29日(土)
会場:めぐろパーシモンホール・大ホール <東京>
時間:開場 17:15 / 開演18:00
※詳細:https://www.rimirimi.jp/schedule/?category_id=1&sub_category_id=0&page=1&id=343



















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