vistlip「夜明けに向かっていく決断ができた」 19年の航海と解放のアルバム『DAWN』を語る

vistlip、19年の航海と解放のAL『DAWN』

 vistlipがニューアルバム『DAWN』を完成させた。「未明」に始まり、ジャジーとヘヴィの黄金比で奏でられる「Figure」、絵本的な寓話が切なく胸を締めつける「ドクガエルとアマガエル」、楽器隊の凄腕が光る「Midnight Crown」、そして「Drawing Dawn」で静かに夜が明けていく……収録された全11曲は、バンドが19年かけて手に入れたすべての武器を惜しげもなく詰め込んだ作品だ。その核心にあるのは、vistlipとしての挑戦と、智(Vo)が紡いだ剥き出しの言葉である。〈光を探す途中で、僕らは壊れてしまったんだ。〉——この一行を書けるまでに、どれほどの真っ暗な夜を越えてきたのか。かつて手放しかけた夢があり、諦めそうになった光があった。それでも彼らは、今20周年に向けて走り続けている。このインタビューは、その夜明けの証言である。智、Yuh(Gt)、Tohya(Dr)の3人にじっくり話を聞かせてもらった。(編集部)

vistlip New Album「DAWN」trailer

vistlipは解放に向かっていく流れができていた(智)

智(Vo)
智(Vo)

――vistlipのニューアルバム『DAWN』は、このタイトルとリンクするかのように「未明」から始まっていくことになります。作曲の段階からこれが表題曲的な存在になっていく予感はあったのでしょうか。

Tohya:いや、全然そういうふうにはとらえてなかったですね。アルバムに入れる曲が出揃った時点で、智が「今回のリードチューンはこれで行こう」って決めた感じだったんです。ただ、なんとなく「1曲目か最後かな?」と自分でもちょっと感じていたところはありました。デモ出しの段階で、この曲はイントロとドアタマのサビしかないラフな状態でみんなに聴かせた時は、そこまで反応よくなかったんですよ(笑)。だけど、そこからしっかり作り込んでいったら自分でも手応えを感じて、結果としてこれが1曲目でリードチューンっていうことに決まったという流れでした。

――この「未明」は最初に静かな雰囲気から始まって、途中では力強い展開になり、最後にはまた静けさが戻ってくるような曲構成がとてもドラマティックです。

Tohya:そこはもう智さんのおかげですよ。僕自身は夜明けのイメージを意識してなかったけど、智が詞をつけた段階で曲のなかにストーリー性が生まれていきましたね。アルバム全体の方向性も、この曲が完成したところからまとまっていったんです。話し合いとかは特にしてなかったんですけど、智の考えていたこととちょうど合致する曲を作れてよかったです。

――Yuhさんは、「未明」はどのようなプレイを心がけましたか。

Yuh:これはMV曲になるって決まってからアレンジをしたんですけど、スタッフサイドから「絵面としても映えるトリッキーなギターソロを弾いてほしい」という意見があったんですね。それで、本来だったら完成形の半分くらいの尺だった間奏を伸ばして、ギターソロを入れる予定がなかったところにタッピング推しのフレーズを無理やり詰め込みました(笑)。だから、ちょっと不思議な構成になってるんです。

――その少しばかり強引とも思えるくらいのギターソロが、とても鮮やかですし流麗で。Yuhさんの凄腕ぶりが光っていますね。

Yuh:リードチューンでMV曲で1曲目となると、最も表に出る曲でもありますし。向き合い方としては、「主張のある音でしっかり弾かなきゃ」と意識しながらレコーディングに臨みました。個人的には、前にあるバンドが前奏にギターのタッピングを入れたということで話題になってたことがあって、その時に「俺もできるけどなあ」と思ったんですね。これは、別に悪口とか下に見てるとかそういうことではまったくなく、純粋に手法としてインパクトのあるトリッキーなギターソロを弾くならば、という発想として。あと、前作のアルバム『THESEUS』や、その後に出した『BET』とか『UNLOCKED』のレコーディングを経て、次にクリアしたい課題も浮かび上がっていたので、音質や音色の面で改善したかったところに関しても今回はちゃんと取り組めました。

――Yuhさんは、プレイこそ派手ですけれど、丁寧な積み重ねを続けていらっしゃるところは、むしろ地道なタイプですよね。

Yuh:そうかもしれないですね。最近TikTokを個人で始めたんですけど、それはSNSを通してギタリストとしての自分をより明確にブランディングしていきたいと思ったからなんですよ。vistlipは今年で19周年で、来年には20周年を迎える。だから、ここからもっとたくさんの人たちに「Yuhってすごいタッピングをする人だよね」みたいなイメージを認知してもらいたいなという気持ちがあるんです。そういう意味では、この「未明」でも明確にアピールできたんじゃないかと思ってます。

Yuh(Gt)
Yuh(Gt)

――音質や音の響きという点では、「未明」のドラムも今までにない音に仕上がってますよね。

Tohya:今回はドラムのレコーディング日が4日間あったんですけど、最初に録った曲が「未明」だったんですよね。方向性としてストレートな音で録ってるのもあって、特に探ったり迷ったりすることもなく、嘘のない生音というものを録れました。ライブでそのままプレイできるような感じで叩いてるから、ほかの曲と比べてもこれがいちばん力強い音になってるかもしれないですね。

――智さんは、「未明」の歌詞はどういうことを書こうと思って、作詞をスタートさせていったんですか?

智:シングルとして『BET』や『UNLOCKED』を作ったことで、vistlipは解放に向かっていく流れができていたと思うんですよ。で、いざその曲たちを今回のアルバムに入れるとなった時に「どうつなげていこうかな?」とまず考えて。そこにあがってきた候補曲たちのなかに「未明」があって。これを1曲目にしようと決めた時に、僕は夜明けのイメージを持ったんですね。そこから『DAWN』というアルバムタイトルも浮かんだし、一枚を通して「未明」からだんだんと夜が明けていく流れにしたいっていうテーマも決まっていきました。これまでの僕は、夜を描くとなるとひたすら悲しい雰囲気の詞ばっかり書いていたんです。でも、今回は「ここでその夜を明けさせちゃおうかな」って。

vistlip『未明』Music Video ( short ver. )

――つまり、夜明けのイメージがご自身の心境がリンクしたわけですね。

智:自分の心境だったり、バンドのメンタルだったりがタイミングとしても重なったことで、こういう作品が生まれていったというのはあると思います。今回の歌詞だと、「未明」と「Drawing Dawn」は完全にノンフィクションです。

――だとすると、「未明」の全体的な内容と最後で歌われている〈何者でもない僕を生贄として捧ぐ。〉という1節は、かなりシビアではありませんか。

智:そうなんですかね。そのあたりはもうそのまま受け取ってもらえればいいかな、と。

――なるほど。瑠伊さんが作曲した「Figure」はジャジーな曲調とヘヴィな音像が交錯する仕上がりで、この絶妙なミスマッチ感をYuhさんはどのように解釈していきましたか。

Yuh:「Figure」は、ジャズっぽさとヘヴィなギターを重ねることで、面白い対比を生み出せましたね。相反する要素がすごくうまくハマりました。これはvistlipだからこそ表現することができる唯一無二の音楽として完成させることができたと感じてます。

――こちらもギターソロが鮮烈ですよね。

Yuh:これも結構頑張りました。右手と左手の指を4本ずつ使う、エイトフィンガーっていう奏法をしてるんですよ。ミスマッチなバランスの曲にさらにミスマッチな要素を加えて、彩り豊かにしたかったんです。

――ダークチョコアイスにピンクペッパーかけて食べるとおいしい的な面白さとインパクトを感じます。

Yuh:そういうスパイス的なテイストのソロかもしれないですね(笑)。

Tohya:僕としてはイントロでバンド全体の音が鳴る前に、Yuhがワウをかけてジャカジャカしてるところも聴きどころだと思ってます。制作中に瑠伊が「ちょっと音が大き過ぎないかな?」って心配してたんですけど、僕は「いや、ギターの音がもはや主役だから逆にもっと上げよう!」って言ったくらいです(笑)。

――(笑)。この「Figure」で、智さんは〈「骨を埋める覚悟を持って…」/今更でごめん。〉と歌われていますよね。ここにはきっとアーティストとしての覚悟を込めたんじゃないかなと思ったんですが、やはりボーカリストというのは、それだけの重責を負う立場なんでしょうね。

智:うん、そうかもしれないですね。

――受け手のひとりとしては、「未明」での〈何者でもない僕を生贄として捧ぐ。〉と密接につながっているのが「Figure」の歌詞世界だなと思いました。

智:これも、ある意味ノンフィクションではあります。

Tohya(Dr)
Tohya(Dr)

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