“韓国の『グラミー賞』”から、BLACKPINK×国立中央博物館の歴史的遭遇まで――韓国トレンドレポート 2026年3月号

 K-POPや韓国ドラマにとどまらず、2026年の韓国カルチャーはアート、ファッション、フード、ストリートまで多彩な分野を横断し、グローバルでの存在感をさらに強めている。この連載では音楽・ファッション・食が交差する“今”の韓国を毎月スナップしていく。

 2月の主要イシューを扱う今号では、音楽的達成を称える『第23回韓国大衆音楽賞』の全貌、BLACKPINKと国立中央博物館の歴史的遭遇、観客動員数1500万人を突破して社会現象化した映画『王と生きる男』、聖水洞のアイデンティティをスニーカーに封じ込めた「Nike」の「Air Max 95 Seongsu」のローンチ、そしてデザイナーブランド「JiyongKim」と「PUMA」によるコラボレーションまで、韓国カルチャーの最前線を象徴する5つのトピックを深層レポートする。

「韓国のグラミー賞」と呼ばれる『第23回韓国大衆音楽賞』開催

 2月26日、『第23回韓国大衆音楽賞』(『2026 Korean Music Awards』/以下、『KMA』)の授賞式が開催された。『KMA』は韓国の音楽賞の中で唯一、商業的な成績や大衆的な人気ではなく音楽性そのものを尺度として評価する、権威ある授賞式である。毎年、候補発表や授賞式のたびに、アーティストや業界関係者、さらにはコアな音楽ファンの間で熱い視線が注がれる。先立って2月5日に発表されたノミネート作品をもとに、計3分野26部門にわたり、その年の韓国ポップミュージックにおける成果を代表する受賞作が発表された。

 総合分野である「今年のミュージシャン」はシンガーソングライターのHANROROが、「今年のアルバム」はCHUDAHYE CHAGISが、「今年の新人」はウ・ヒジュンが、「今年の歌」はAKMUのメンバーとしても知られているイ・チャンヒョクがそれぞれ獲得した。特にイ・チャンヒョクは3冠に輝き、研ぎ澄まされたクリエイティビティを証明。ウ・ヒジュンやCHUDAHYE CHAGISも2冠を達成した。また、BLACKPINKのメンバーでもあるJENNIEとSik-K & Lil Moshpit、そしてクォン・ナムもそれぞれK-POP部門、RAP&HIPHOP部門、フォーク部門を席巻し2冠に輝いた。前年度の受賞者であるDanpyunsun and the Moments Ensembleとイ・スンユンの祝賀公演も行われ、授賞式に華を添えた。一方、世界的な注目を集めたハイパーポップの新星・Effieと2つのアルバムを候補に上げたK-POPグループのNMIXXは、それぞれ6部門、4部門にノミネートされたものの、惜しくも受賞には至らなかった。

 受賞結果からは、時代性と音楽的成就が総合的に評価されたことがはっきりと見て取れる。CHUDAHYE CHAGISが韓国の伝統的な巫歌(ムガ)をHIPHOP、ダンスホール、ファンク、サイケデリックロックの文脈に落とし込み、“サイケデリック・シャーマニック・ファンク”と自称する独創的な音楽性が認められたことや、同世代に響く癒やしの連帯を導き出したHANROROが「今年のミュージシャン」に選出されたことが、その証左である。普段メインストリームのメディアでは触れる機会が少ないであろう、韓国のエレクトロニックやフォーク、ジャズなど多彩なジャンルの主要作に出会える機会であるだけに、韓国のポップミュージックをより深く、多様に探求したい日本のリスナーにとって、『KMA』の受賞および候補リストは良き道標となるだろう。

国立中央博物館とBLACKPINKの前例のないコラボレーション

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

BLΛƆKPIИK(@blackpinkofficial)がシェアした投稿

 近年、韓国の国立中央博物館は、文化財コスプレ大会やライブフェスティバルといった斬新な参加型イベントや、遊び心溢れるグッズラインナップを立て続けに披露し、従来の保守的で堅苦しいイメージを完全に払拭している。その結果、若い世代が熱狂するホットな文化スポットへ飛躍した。特に昨年は『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(Netflix)の世界的な成功に後押しされ、海外からの観覧客が急増。2025年の年間観覧客数は650万人を突破し、世界TOP5に堂々のランクインを果たした。そして2026年、博物館の革新的な歩みは、世界的なK-POPアイコンとの出会いへとつながった。BLACKPINKの3rdミニアルバム『DEADLINE』の発売に合わせ、開館以来初めて外部のポップアーティストに空間を開放する、大規模な公式コラボレーションを成立させたのだ。

 今回のプロジェクトが作り出したスケールとディテールは、大きな話題となった。夜の帳が下りると、博物館の巨大な外部ファサードと広場がBLACKPINKを象徴する強烈なピンク色の照明に染まり、このスペクタクルな光景はSNSを通じて瞬く間に全世界へと拡散された。このプロジェクトは視覚的な華やかさだけでなく、コンテンツの深さも格別なものに。博物館の内部では、メンバーたちが自ら録音した多言語音声ドーセント(音声ガイド)が提供された。観覧客はメンバー4人の声をガイドに、金銅半跏思惟像など韓国の国宝を鑑賞し、古美術の情緒と現代のポップアイコンの魅力が交差する共感覚的な体験を味わうことができた。

 この異例の出会いは、10〜30代の若年層や外国人観光客にとって博物館の敷居を下げるだけでなく、韓国の伝統美学をグローバルな若い世代の感覚に合わせて再解釈を促したとも言える。“最も韓国的な伝統”と“最もグローバルな現代大衆文化”が出会い、爆発的なシナジーを生み出したこの出来事は、韓国の文化遺産が洗練された感覚で全世界とコミュニケーションをとれる通路を開くと同時に、K-POPというジャンルがいかに韓国のアイデンティティと有機的に呼吸し、新たな価値を生み出せるかを証明した好例である。

映画『王と生きる男』が巻き起こした“端宗シンドローム”の社会現象

[왕과 사는 남자] 공식 예고편

 数多くのヒット作に出演してきたベテラン俳優 ユ・ヘジンと、アイドル出身という枠を超えて確かな演技力を証明したパク・ジフンがダブル主演を務めるファクション(ファクト+フィクション)時代劇映画『王と生きる男』(現代:왕과 사는 남자)が、韓国映画界に巨大な旋風を巻き起こしている。2026年3月現在、公開から50日で累計観客動員数1500万人を突破。興行収入においては、歴代の国内公開映画の記録を塗り替え、堂々の1位という快挙を成し遂げた。

 本作は、首陽大君が王位を簒奪するために起こした癸酉靖難を経て、王位を奪われ江原道・寧越へと流刑にされた悲運の少年王・端宗と、彼を監視しながらも次第に人間的な哀れみを感じていく村長の物語を、切なくも温かい眼差しで描き出している。記録された歴史の上に感動的な叙事を乗せたことへ賛辞が注がれる中、特にパク・ジフンが演じた端宗の悲劇的な生涯が観客に強烈な印象を残した。注目すべき点は、この映画の波及力が単なる興行成績にとどまらず、現実社会の巨大な文化的現象、いわゆる“端宗シンドローム”へと拡張されたことだ。

 映画の余韻から抜け出せなかった観客たちは、自ら歴史の痕跡が残された場所に向うことも多いようだ。端宗の陵である寧越の荘陵や流刑地であった清泠浦は、週末ごとに人波が押し寄せ、季節外れの観光特需に沸いているという。昨年の場合、6月になってようやく訪問者10万人を超えたが、今年は3月8日時点ですでに11万人を優に超えている。書店では、端宗や朝鮮前期の歴史を扱った書籍の販売量が前月比数百パーセントも急増したという。丁寧に作られたウェルメイドなローカルストーリーが、いかに大衆の知的好奇心を刺激し、地域経済をも潤す文化現象へと広がっているのかを実感できる。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる