BTS「答えは自分たちのなかにあった」 規格外のカムバック――新章“BTS 2.0”幕開け、ARMYが照らす未来

BTSの新章が始まった――。3月21日20時より韓国・光化門広場にてBTSがカムバックライブ『BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG』を開催した。およそ3年半ぶりとなる完全体でのステージは、この日を世界中のARMY(ファンの呼称)が待ち望んでいたことを証明するひと時となった。
設置された特設ステージは、まるで都心のど真ん中に一夜城が突如出現したかのようだった。野外とは思えない奥行きと高さを備えた洗練されたセットと、伝統的な光化門とのコントラストが、この日が歴史的瞬間であることを強く印象づける。ソウルの街に掲げられたビジョンもまた圧巻だった。あたり一帯がBTS一色に染まり、大通りそのものが祝祭の舞台と化している。開演時間が近づくにつれ、この瞬間を待ちわびたARMYの歓声と熱気が高まっていく。



開演時間になると真っ黒な衣装に身を包んだダンサーたちが整然と列をなして登場。まるで封じられていた時間がほどかれていくかのように彼らが姿を消すと、ついに7人が姿を現す。「アンニョン、ソウル! We’re back!」と最初に声を上げたのはリーダーのRMだ。ARMYが掲げるスティックライト、通称“アミボム”がきらめくなか幕開けを飾ったのは、「Body to Body」。音楽に身を委ねるように踊る7人の姿からは、この瞬間を純粋に楽しもうとする空気が伝わってくる。この日を迎えるまで、彼らが計り知れない重圧や不安と向き合ってきたであろうことは想像に難くない。目まぐるしく変化するエンターテインメントの世界において、活動を休止するという選択は大きな決断を伴う。その復活を望む声は絶えなかったが、これほどの規模で、これほど多くのARMYが集う光景を前にした時、彼ら自身もまた、その重圧から解き放たれる瞬間を迎えていたのではないだろうか。



BTSが新たなチャプターとして提示した最新アルバム『ARIRANG』。「アリラン」とは韓国の伝統的な民謡であり、“第2の国歌”とも称される存在だ。郷愁や別れ、切なさを内包するその響きには、兵役義務期間中に抱いた複雑な思いと、待ち続けてくれたARMYへの感謝がにじむ。この日のステージでも、プロジェクションマッピングによって近未来的に彩られた光化門を背景に「アリラン」が披露されるなど、自らのアイデンティティを体現しながら世界へと挑み続ける覚悟が示された。
その勢いのまま「Hooligan」「2.0」と新曲を立て続けに披露。高音の歌声で観る者を引き込みながら、次の瞬間には力強さを増したラップとダンスで圧倒する――。その振れ幅こそが、現在のBTSの強度を物語っている。



この日、リハーサル中の怪我によりRMはマイクスタンドを用い、あるいは着席でのパフォーマンスとなったものの、メンバーが自然と彼のもとへ歩み寄る場面も見られた。そうした掛け合いと支え合いの在り方もまた、BTSというグループの本質的な魅力である。
あらためて、この場に7人で立てたことへの感慨を語り合うMCを経て披露されたのは、世界的ヒット曲「Butter」。待ちわびていた瞬間が訪れたとばかりに、会場一体が一気に熱を帯びる。BTSが放つエネルギーと、それに呼応したファンの熱狂が相互に増幅し合い、この場にしかない高揚感を生み出していく。その渦中で披露された「MIC Drop」では、さらにギアを上げたダンスで観客を圧倒。歓声は幾重にも重なり、空間そのものが震えるかのようだった。パフォーマンスの一瞬たりとも見逃すまいと、観る者の目も耳も大忙しだ。
「Aliens」では美しいファルセットが印象的に響き、ボーカルの深化を感じさせる。SUGAの「飛ぶ準備はできましたか?」という煽りからなだれ込むように披露されたのは「FYA」。肩を寄せ合いながらリズムに乗る7人の姿は楽しげで、カメラに向けて仲睦まじくアピールする様子からも、「これぞBTS」と感じさせる瞬間が生まれていた。



歌い終えると、JUNG KOOKが「ああ、面白かった」「とても久しぶりなので、楽しいです」と切り出す。するとJINは「ステージに上がる前にこう言っていたんですよ。『今は震えてるけど、(舞台に)上がったらすぐ『MIC Drop』してるはずだ』って。でも、その『MIC Drop』も、もう一瞬で終わっちゃいましたね」といたずらっぽく笑い、会場の空気を和ませた。

J-HOPEが「実は今回のアルバムには本当に多様な曲が収録されています。そのなかには僕たちのたくさんの悩みも詰まっています」と本音をこぼすと、SUGAも「立ち止まっていた時間のなかで、自分たちが最後まで守るべきもの、そして変わるべきことを本当に本当に本当にたくさん考えました。今でも確信は持てないし、不安もあります。でも、そういう感情も全部が自分たちの感情、自分たち自身なんだと思っています」と続けた。さらにRMは、「どんな選択をすべきなのか、どんなアーティストとして残りたいのか、自分自身に問い続けてきました。でも、答えは外ではなく、自分たちのなかにあったんです」と語り、「悩みや不安、迷いも含めて、包み隠さず正直に表現すること。それが今回のアルバムの目標だった」と、その制作の核を言語化していった。


JIMINが「僕たちはそんな特別な人間じゃなくて……」と口にすると、すかさずARMYから反応が起こり、「違うの? 僕たち特別だった(笑)?」という軽妙な掛け合いに発展。そのやり取りにも、彼らが愛される理由が詰まっていた。「みなさんと同じように、僕たちはアルバムを制作していても、今回のステージを準備しながらも怖かったし、悩んだりしました。だけど、そんな感情も受け入れて、僕たちが一緒に“KEEP SWIMMING”していけば、いつか答えにたどり着けると信じています」と真摯な思いを届けた。そしてVが、「僕たちがただできるのは、立ち止まらずに一歩ずつ進みながら、音楽を出して、公演をして、ARMYのみなさんにとって素敵な姿を見せること。それが僕たちのやるべきこと」と語り、「この曲が少しでも慰めや力になれば」と、『ARIRANG』のタイトル曲「SWIM」へとつないだ。



ブルーの水面を思わせる映像を背に、透明感のある歌声が響き渡る。ゆっくりと水中へ沈んでいくような振りも印象的で、光と影のコントラストが際立つステージは、これからさらに大海原へと進んでいく彼らの現在地を映し出しているかのようだった。
「Like Animals」では荘厳かつ神秘的な世界観で観客を圧倒し、「NORMAL」では空のビジュアルを背景に、丁寧に歌い上げる繊細な表情で楽曲を届けていく。その一連の流れからは、ここから再び始まる7人の歩みを強く実感させられる。それは、彼ら自身にとっても同様だろう。トップアーティストとしてのスケールを持ちながら、揺れ動く心情を隠さず表現していく姿に、BTSの人間味が浮かび上がる。


終盤のMCでは、「とてもいいですね」と微笑み合いながら、J-HOPEがそれぞれのお気に入り曲を尋ねる場面も。J-HOPEが「NORMAL」を挙げると、JUNG KOOKは「FYA」、JINは「Into the Sun」、SUGAは「Body to Body」、Vは「Aliens」と最新アルバムの収録曲のなかからチョイスしていくなか、JIMINだけがJ-HOPEのソロ曲「Daydream」を選ぶというチャーミングな一幕も見られた(最終的には「they don’t know ‘bout us」をセレクト)。一方で、RMは「ころころ変わります。午前までは『Body to Body』、今は『Like Animals』。回転寿司みたいにね」とユーモアを交えて語り、会場の笑いを誘う。さらに、RMのために用意された椅子にVがなぜか座っているという展開もあり、メンバー同士の自然体な関係性が垣間見える、あたたかな空気が流れていた。

そして「“今日の”最後の曲です」と告げられ披露されたのは「Dynamite」。集まったARMYも一体となって大合唱が巻き起こる。椅子に座るRMを置いてセンターステージから花道へと移動していく6人に、「ちょっと待って! 僕を置いていくの?」とRMが声をかけ、会場に笑いが広がると、このままでは終われないとばかりに「Mikrokosmos」へ。ARMYの放つアミボムの光が、小さな宇宙のように広がっていく。
「BTS 2.0は始まったばかり」――そう語った彼らがこれから進んでいく世界を照らすのは、紛れもなくARMYの存在だ。その光とともに、7人は新たな物語を胸に、迷いさえ抱えながら世界へと泳ぎ出していく。













































