上白石萌音にとって“歌うこと”は何を意味するのか? 今向き合った映像と音楽の存在――アルバム『texte』を語る

上白石萌音、AL『texte』完成インタビュー

上白石萌音と映像の結びつき、そして小林武史によるプロデュース「すごく興奮しました」

――「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」をプロデュースした小林武史さんとは、どんなやりとりがありました?

上白石:小林さんは、レコーディングディレクションの時は本当に言葉が少ない方で。普段はすごくお互いおしゃべりなんですけど(笑)。レコーディングに入ったら、感覚的に通じ合う次元にいらっしゃる感じなんです。歌入れでも、早い段階で「いい感じ、いい感じ。じゃあもう1回やってみよう」「うん、いい感じ」みたいな感じで。4回ぐらいやった時点で、小林さんが「うん」って言って部屋を出て行かれたんですね。私は、その後も録り続けてたんですけど、小林さんのなかではもうそれがOKテイクだったみたいで。戻っていらした時に「まだ録ってたの?」みたいな(笑)。

――(笑)。

上白石:で、いろいろ聴き比べた時に、やっぱり小林さんが「うん」って思ったものがいちばんよくて。多くを語らずに、音で会話をする方なんだなと思いました。この曲は、レコーディング段階では楽器が少なくて、ピアノがメインで、あとチェロも入っていたかな。弾き語りに近いくらい音数が少なかったんです。そういうなかで歌録りをして。そのあとに楽器を足してくださったんですね。その場で生まれたもの、その人だから出てくるものをすごく大切にして作られるんだなって、いろいろ納得しました。完成したものを聴かせていただいた時、「こうやって作ってるんだ!」って興奮したのを覚えてます。私、映画『はじまりのうた』(2013年)のなかで、音楽プロデューサーが女性のシンガーソングライターのギターの弾き語りを聴いている時に、頭のなかでいろんな楽器の音が聴こえてきて鳴り出すシーンが大好きなんです。小林さんって、それを地でやる方なんだと思って、すごく興奮しました。この声にはこの音、みたいな作業を料理するみたいにやられるんだなって。

――興奮した時も、映像がリンクするんですね。

上白石:あ、たしかに! 「あの時のあれじゃん!」を繰り返している人生です(笑)。

――ははははは。今回のアルバムで“真っ暗にして歌う”というのはひとつのチャレンジだったと思うんですが、ほかにも新たにチャレンジしたことはありましたか。

上白石:「AUDITION (THE FOOLS WHO DREAM)」と「時をかける少女」の2曲で新しい試みをしていて。楽器と同時に一緒に「せーの!」で録るということを初めてやったんです。

――一発録りというやつですね。

上白石:そうです。いつもツアーで一緒にやってくださっているミュージシャンの方々とレコーディングできたらいいなと思ったのがきっかけだったんですけど。「いつものメンバーだったら普段の呼吸感を閉じ込めるし、いいかもしれないね」って、自然な流れで決まったんです。みんなと話して、「あ、いいね、楽しそう!」「やろうやろう」みたいな感じで。

――ひとりで歌うのとは、楽しさが違いました?

上白石:違いました。心強かったし、みんなで一個の大きい筆を持って書いてるみたいな感じ。特に「AUDITION (THE FOOLS WHO DREAM)」とかは、同期もクリックも一切なしで、本当に揺れたいようにみんなで揺れながら録ったんですよ。やっぱり“生”が好きだし、生で音を楽しむっていう、音楽の神髄を感じたような気がしました。本当にこのレコーディングは楽しかったです。プロの第一線のミュージシャンの方々の力を借りたからこそできたことですね。

音楽が飛び越える瞬間の体験「『ああ、こんなことがあるんだな』と思いました」

――もしデビュー当時の自分に『texte』を聴かせるとしたら、どの曲から聴かせたいですか? 理由も教えてください。

上白石:えー、何だろう……? でも、やっぱり頭から聴いてほしいです。曲順もしっかり考えてるので。あと、デビュー当時の私はジョニ・ミッチェルを知らないので、ジョニ・ミッチェルの原曲よりも先に私のを聴かせて「どう思う?」って聞きたいです(笑)。

――それはいいですね(笑)。10年歌い続けてきたなかで、「歌っていてよかった」と思った瞬間を教えてください。

上白石:母の小学校の時の先生が私の歌をずっと聴いてくださってるそうなんです。その先生が母に電話でよく感想をくださるんですけど、母が先生の了承を得たうえで、その電話を録音してくれてたんですよ。それを聴いた時に、「歌っててよかった」って思いました。90歳を超えたおじいちゃんなんですけど、「聴いてると心がほぐれるんだよ。若い時に戻ったような気持ちにもなるし、体のこわばりが楽になる感じもあるんだよね」って、しみじみ言ってくれていて。しかも、そこに母が嬉しそうに相槌を打ってる。その録音を聴いた時に「ああ、こんなことがあるんだな」と思いました。たくさんの人に届くとかじゃなくて、ひとりにでもそういう届き方をしてたら、もう私はそれでいいなって思えたんです。

――いい音楽は世代を超える、ということを上白石さん自身が証明して、体感したんですね。

上白石:本当に音楽ってすごいなと思いました。映像とか演劇を楽しむよりも短い時間で、その人の思い出と結びついた形で広がるのが音楽なのかな、って。手渡しできるプレゼントみたいな感じ。それが世代を問わず届くんだなと思った時に、「こういうことがあるから頑張れるな」と思いました。

――『texte』は自分にとってどんな存在のアルバムになっていきそうですか?

上白石:歌を歌わせていただくうえで大事にしたいことに、今まで以上に迫れたというか、それが浮き彫りになったのが『texte』というアルバムだと思います。曲を生み出してくれた方へのリスペクトを持って、なるべくそこに自分が歩み寄るような形で、言葉を心の底から本当だと思って歌いたい、ちゃんと映像を浮かべて、真実として歌いたい――そうずっと思いながらレコーディングをしました。それは今後、迷った時とかツラくなった時の指針になってくるんじゃないかなと思っていて。そういう経験がこのタイミングでできたのは、とても大きかったなと思います。

――ジャケット、すごくかわいいですよね。見た時に「萌音がモネタッチの絵画に!」なんて思いました。

上白石:私もすっごく嬉しかったです。これまでも何回もジャケット描いてくださっている加藤大さんが描いてくださって。写真は『chouchou』を撮影した同じスタジオで、同じカメラマンさんに撮影していただいた写真がもとになっているんです。今回、クリエイティブの方々も、ミュージシャンの方々も、アレンジャーさんたちとも、この10年でいただいたご縁をもう一回呼び起こして、お声がけする形でできたのもとても嬉しかった。加藤さんも、私が「描いてほしいです」ってお願いをしたんです。

――イラストというより、本当に絵画ですよね。

上白石:そうなんです。本当に素敵な美術作品。これを表紙にして曲を届けられるのは、本当に贅沢で幸せだなと思います。

――ライブも予定されています。意気込みのほどはいかがですか。

上白石:ライブは、正直まだ何も中身が決まってなくて(笑)。でも、『texte』を掲げたライブとして、“誰かの言葉”を歌うことにより迫っていく時間になると思います。ライブの楽しさって、みんなで「せーの!」で録った時みたいな化学反応がどんどん生まれることだと思っているんです。舞台上だけじゃなくて、お客さんの反応を見て音楽が変わっていくこともあると思うから。それを対話だと思って楽しみながら、『texte』で得た経験と結果をもとに、曲の魅力を膨らませるような時間にできたらいいなと思います。

■リリース情報
ALBUM『texte』
発売中

販売/配信URL:https://lnk.to/mone_texte

・初回限定盤(CD+DVD):UPCH-7793 /5,500円(税込)
・通常盤(CDのみ):UPCH-2291/2,970円(税込)

<CD>
01. BOTH SIDES NOW(映画 『コーダ あいのうた』より)
02. アルデバラン(NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』より)
03. 時をかける少女(映画 『時をかける少女』より)
04. AUDITION (THE FOOLS WHO DREAM)(映画 『ラ・ラ・ランド』より)
05. Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜(映画 『スワロウテイル』より)
06. 奇跡のようなこと(映画『ペリリュー −楽園のゲルニカ−』主題歌)
07. 変わらないもの texte ver.(劇場版アニメーション『時をかける少女』より)
08. なんでもないや (movie ver.) texte ver.(映画『君の名は。』 より)

<DVD>
『Mone Kamishiraishi Special Live 105』ライブ映像+メイキング映像  

 <初回プレス特典>初回限定盤/通常盤共通
『Mone Kamishiraishi “yattokosa” 26 《texte》』
追加公演(2026年4月11日(土)東京ガーデンシアター)のチケット先行抽選予約応募用シリアルナンバー封入。
受付期間:2026年2月25日(水)18:00〜3月8日(日)23:59まで
※詳しくは商品封入の案内をご覧ください。

■ツアー情報
『Mone Kamishiraishi “yattokosa” 26 《texte》』
2026年3月21日(土)神戸国際会館こくさいホール
OPEN 17:00/START 18:00
※SOLD OUT

2026年3月22日(日)神戸国際会館こくさいホール
OPEN 16:00/START 17:00
※SOLD OUT

2026年3月29日(日)パシフィコ横浜 国立大ホール
OPEN 17:00/START 18:00
※SOLD OUT

2026年4月11日(土)東京ガーデンシアター
OPEN 17:00/START 18:00

ツアー特設サイト:https://yattokosa.com/

上白石萌音 オフィシャルサイト:https://kamishiraishimone.com/
デビュー10周年特設サイト:https://sp.universal-music.co.jp/kamishiraishi-mone/10thanniversary/
マネージャー X(旧Twitter):https://x.com/mone_tohoent
Instagram:https://www.instagram.com/mone_kamishiraishi
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCdzLYBOVmmOoHyA_E5VXbwg

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