ヴィジュアル系ファンに訪れた数々の奇跡 レジェンド復活、夢の共演……伝説の1年を経て続いていく物語

 2025年はヴィジュアル系シーンにおけるトピックが目白押しの1年だった。かつての熱狂を思い出した人もいれば、映像や音源でしか触れたことのないバンドを初めて目撃した人もいるだろう。幅広い世代を巻き込み、シーン全体が活性化した2025年を振り返っていきたい。

黒夢、PIERROTら伝説的バンドの活躍が目覚ましかった2月

 今年始めに掲載されたコラム(※1)に書いたとおり、まず2月が凄まじかった。

 2月9日に東京ガーデンシアターで10年ぶりの再始動ライブを開催した黒夢。前述のコラム執筆時は、あくまで清春のデビュー30周年に伴う企画の一貫だろうと考えていた。ところが、ぴあアリーナMMでの追加公演を終えたあと、ライブハウスツアーのほか、大型フェスやジャンルレスなイベントにも積極的に進出。ロックバンドとしての実力と破天荒なパフォーマンスで、令和の音楽シーンに黒夢の名前を刻みつけてみせた。

 何度かライブを体験するなかで、ライブを重ねるほどに攻撃性と自由さが研ぎ澄まされているのを感じ、黒夢はやはり生粋のライブバンドであることを噛み締めた。2026年2月にも『黒夢Zepp TOUR CORKSCREW 2025』の追加公演が決定しているが、その先も活動が継続することを願うばかりだ。

Like@Angel / 2025.02.09 TOKYO GARDEN THEATER

 2月8日、9日に10年ぶりのワンマンライブを行ったPIERROTもまた、同ステージで5月のKアリーナ横浜公演を発表。計4回にわたるステージで、集結した“ピエラー”(ファンの呼称)とともに衰えぬカリスマ性と無二の存在感を示した。

 そして、PIERROTのキリト(Vo)、KOHTA(Ba)、TAKEO(Dr)によって結成されたバンド・Angeloも“天使の日”である10月4日に活動再開を果たす。Karyu(Gt)、ギル(Gt)を含めた5人でAngeloとしてステージに立ち、新曲「NEOCREATE」を披露するなど、この先の展開を予感させるライブを繰り広げた。ちなみにキリトはKIRITOとしてソロ活動も行っていたため、PIERROT、ソロ、Angeloと3つの世界線を渡り歩いたことになる。

【DAY1ダイジェスト公開‍】END OF THE WORLD LINE at ARIAKE ARENA 20250208

 激動の2月を締め括ったライブと言えば、LUNA SEAの東京ドーム公演『35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE- LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-』だ。前日のGLAYとのツーマンライブ『The Millennium Eve 2025』も含めて、自らの伝説を自ら塗り替える、圧倒的な2日間で35周年を締め括った。

 さらに、そこから約半年後の11月、10年ぶり3度目となる主催フェス『LUNATIC FEST. 2025』を開催。初回、第2回に引き続きボーダレスなラインナップが揃うなか、THE YELLOW MONKEYやT.M.Revolution、黒夢など、LUNA SEAと活動初期から関わりを持ち、お互いに30周年を超えたアーティストたちが初出演した。それぞれ波瀾万丈な道程を経ての邂逅は、まさに歴史的な名場面だった。

LUNATIC FEST. 2025 ラインナップ発表ムービー

 少し余談になるが、マクドナルドのCMで誕生したLUNA SEA公認のコピーバンド「LUNA CHEE」(ルナチー)も、2025年のヴィジュアル系流行語大賞枠として添えておきたい。

 2月の大阪城ホールから始まったSIAM SOPHIAは、10月にTOYOTA ARENA TOKYOでのライブを経て、『LUNATIC FEST. 2025』がラストステージとなった。30周年を迎えたSOPHIAが同年同月にメジャーデビューしたSIAM SHADEのメンバー4人と結成したスペシャルユニットとして、もともと2025年限定の活動と宣言されていたとはいえ、少し寂しいのは事実。しかし、限定だからこその濃密なプログラムと豪華なステージは、忘れられない思い出として語り継がれていくはずだ。

2025 SIAMSOPHIA FINAL @TOYOTA ARENA TOKYO 10.13.2025 TEASER

La'cryma Christi、ViViD、R指定……時代を彩ったバンドの復活

 一方、『LUNATIC FEST. 2025』の翌週に開催された『CROSS ROAD Fest』では、約12年ぶりに再結成したLa'cryma Christiをはじめ、90年代ヴィジュアル系シーンを彩ったバンドを中心としたレアなラインナップが実現。全国から幅広い年齢層のファンが集まり、幕張イベントホールを2日間にわたって埋め尽くした。久しぶりにライブを行う貴重なバンドから、長く活動を続けてきたバンドまで、多彩すぎるほどの個性の持ち主ばかり。あらためて当時のヴィジュアル系シーンの華やかさを証明するとともに、色褪せない魅力を届けた。

 La'cryma Christiは2026年5月まで続くツアーを行うなど、同フェス出演バンドの今後にも注目が集まる。

La'cryma Christi - 未来航路 (Official Video)

 ここまで90年代のバンドに言及してきたが、2000~2010年代以降のバンドにも外せないトピックがたくさんあった。

 そのひとつが、『CROSS ROAD Fest』で14年ぶりの再集結を遂げたD'ESPAIRSRAY。インダストリアルを取り入れた洋楽志向なサウンドは今なお鮮烈で、それぞれ音楽活動を続けてきたメンバーの実力も折り紙付き。2026年5月にZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブ、7月に海外フェス出演も決定しており、その先の活動に期待が募る。

「REDEEMER」Music Video Full

 遡って3月には、2015年に解散したViViDが1年間限定での活動再開を宣言。3月の東京ガーデンシアター2DAYSを皮切りに、ライブハウスツアーやメンバー生誕記念ライブなど、精力的にライブを行い、年末にはカウントダウンライブも控えている。TVアニメの主題歌でもお馴染みのポップさと、彼らならではのミクスチャーロックは、ジャンル問わず多くの人の心を掴んできた。2026年3月27日・豊洲PITまで、残された時間をじっくり堪能してほしい。

ViViD 『BLUE』 Live version at TOKYO GARDEN THEATER

 4月には、2010年代を牽引し、2020年を迎える前に“凍結”したバンド・R指定が“解凍”の日を迎えた。時に過激な言葉を使いながら孤独や病みを表現する彼らのロックは、むしろ今の時代にこそ必要とされているのかもしれない。9月に地元・福岡、10月に大阪、12月に神奈川とライブを重ね、果たして2026年はどうなるのか。牙を失うことなく再び歩き出したR指定の動向に注目だ。

R指定「病ンデル彼女」Music Video【公式】

 なお今年のシーンの盛り上がりに繋がったのは、復活や再始動だけではなく、現役で最前線を走り続けているバンドたちがいるから、ということを忘れてはならない。

 25周年を迎えて13年ぶりに日本武道館に立ったNIGHTMARE、東京ガーデンシアター公演で20周年プロジェクトを締め括るlynch.、メンバーチェンジを経験しながらも20周年を迎えたNoGoDなど、一歩ずつ進んできたバンドの物語はかけがえのないものだ。

 さらに、1月に初武道館公演を開催したキズ、2024年末の初武道館を経て47都道府県ツアーに挑んだDEZERTなど、新世代の活躍も見逃せない。

 数々の奇跡をただ単純に「懐かしい」「青春が甦る」といった言葉で消費するのは簡単だけれど、積み重ねてきた歴史があるからこそ実現した奇跡を受け取って、その先の未来に繋げていくことが大事なのだと思う。

 2025年に生まれた火種が2026年にどんな大爆発を巻き起こすのか。ヴィジュアル系は今現在、最新のシーンがいちばん面白いのだという結論をもって、本稿の締めとしたい。

※1:https://realsound.jp/2025/01/post-1897092.html

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