KAWAII LAB. はバズからリアルへ デジタルの熱を動員に繋げる手腕――地位を確立し“時代”を作った2025年

2025年のアイドルシーンを振り返ると、まず思い浮かぶのがKAWAII LAB.の活躍だ。FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREETの4グループが、それぞれの持ち味を発揮しながら、今年のアイドルシーンにひとつの流れを作り出していった。
そして、その1年の到達点として、『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にはFRUITS ZIPPERとCANDY TUNEの2組が並んで初出場を果たすことになった。ライブアイドル発のプロジェクトとして始まったKAWAII LAB.が、いまや『紅白』に複数のグループを送り出す“国民的アイドルプロジェクト”として受け止められるようになったと言えるだろう。そこに至るまでの道のりには、KAWAII LAB.のバズを生み出す力と、それを確かな人気や動員につなげてきた4グループそれぞれの歩みがある。
積極的に“バズを起こしにいく”姿勢
KAWAII LAB.のすごみを端的に示すのが、毎年1グループは確実にブレイクさせるかのような再現性だ。FRUITS ZIPPERの躍進を皮切りに、CUTIE STREETがデビュー直後からTikTokとストリーミングで頭ひとつ抜けた存在となり、2025年にはCANDY TUNEが「倍倍FIGHT!」で本格的なブレイクフェーズに入った。
この人気を生んだ理由のひとつが、KAWAII LAB.の、“バズが起きるのを待つ”のではなく、“自分たちでバズを起こしにいく”姿勢だろう。CANDY TUNEの「倍倍FIGHT!」は、TikTok音楽チャートのトップ50と人気曲ランキング50で1位を獲得しただけでなく、イントロ部分を切り出した公式ショート動画を何パターンも公開し、全員バージョンやユニット、コラボ動画などバリエーションを増やしていった。お笑い芸人や人気キャラクターなど、ジャンルの異なるコラボも積極的に行ったことで、「自分も踊ってみたい」「真似してみたい」と思える流れが自然と生まれ、その積み重ねがロングヒットにつながっていった。
このUGC戦略は、CUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」の成功ですでに実証されていたものでもある。同曲はTikTok発のバイラルヒットをきっかけにストリーミングやカラオケ指標でも存在感を強めていった。TikTokでは、ブレイクソングに加えて、グループの別の楽曲と合わせて2曲が同時に上位に入り、「楽曲部門」のさまざまなランキングでも好位置をキープしてきたことを考えると、KAWAII LAB.の“バズの作り方”は、一度きりの偶然ではなく、複数の楽曲、グループで何度も結果を出せるものになっていると言えそうだ。
こうして振り返ると、これまで続いてきた各グループのブレイクの流れは、時の運だけではなく、綿密な戦略の上に成り立っていることが見えてくる。2025年も“KAWAII LAB.旋風”が止まらなかった背景には、デジタルで話題を生むための仕組みそのものを更新し続けてきた、プロジェクト側のはっきりとした意図があった。


大切にするリアルなコミュニケーション
もうひとつ強調したいのは、KAWAII LAB.が一貫して“バズの先”を見据えてきた点だ。FRUITS ZIPPERは『第65回 日本レコード大賞』最優秀新人賞や優秀作品賞を経て、日本武道館公演、全国ホールツアーを成功させたのち、2025年にはさいたまスーパーアリーナのスタジアムモード2daysへとステージを拡大した。CANDY TUNEもまた、今年2度の全国ツアーを開催。5月には初となるアリーナ規模でのワンマンライブを幕張メッセ イベントホール 2daysにて成功させたほか、夏フェスにも出演し、新たな層に向けてグループの魅力を届けた。このようにKAWAII LAB.は、SNS上だけではなく、ライブやイベントといった“リアル”なコミュニケーションのなかで、確かなパフォーマンス力とステージから発せられるエネルギーによって着実にファンを獲得。そこから『紅白』出場、そして2026年のFRUITS ZIPPERの東京ドームやCANDY TUNEの日本武道館公演へとつながっていく動線は、デジタルの数字をリアルな動員へときれいに接続してみせた例と言えるだろう。
“バズ”は目的ではなく、あくまでも起点。地道な努力によって磨いた実力とさまざまな接点を通じたコミュニケーションによって、グループを好きになってもらうことこそが重要であるという意識が、KAWAII LAB.の根底に根づいていることが窺える。

一時のブームではなく、シーンのなかで確かな地位を確立しつつあるKAWAII LAB.。その勢いを象徴するかのように、12月には新グループ MORE STARの誕生が発表された。メンバーは、KAWAII LAB.からのデビューを目指す次世代メンバー集団 KAWAII LAB. MATESから選ばれ、プロジェクト発足から約4年という短い期間ながら、すでに成熟した組織へと成長していることが感じられる。SWEET STEADYも着実に歩みを進め、新曲「カワイイコレクション」MVは、公開から約1カ月ながら160万再生超え(12月24日時点)。7,800以上のコメントが集まるなど新規ファンの増加を感じさせ、その熱量からは次なるバズグループとなる予感を感じさせる。


また来年2月にはKAWAII LAB.の4グループによる楽曲を収録したベストアルバム『KAWAII LAB. BEST ALBUM』のリリースを予定しており、4グループによる初の合同楽曲「CHU CHU CHU研究中!」を収録。積極的に新たな試みを続けながら、KAWAII LAB.にしか提供できない価値を追求している。さらにプロジェクト発足4周年記念イベント『KAWAII LAB. 4th Anniversary Special LIVE』の開催も予定しており、2月にはKアリーナ横浜で5日間、3月には神戸ワールド記念ホールにて2日間、所属グループがさまざまな形態で公演を行う。今後も「ライブでのコミュニケーションを大切にしていく」という確かな意思が感じられるイベントだ。
2026年、KAWAII LAB.は“ブームを作る”段階から、“カルチャーとして根づかせていく”段階へと進んでいくことになるはずだ。『紅白』本番を前にこの1年を振り返ると、2025年はKAWAII LAB.という名前が、ひとつのプロジェクト名を越えて、その時代の空気を象徴する言葉へと変わっていった節目の年だったと言える。


























