歌声分析 Vol.4:TOMOO 透明感と芯が両立する無二の個性 ”温度”を宿すボーカルが聴き手に響く理由を説く
声の密度と湿度を自在に操る「餃子」、センスが光る「コントラスト」
アルバム『DEAR MYSTERIES』の中で個人的に最も印象深いのが「餃子」。この曲では、母音処理による表現の幅が際立っている。Aメロでは、音と音を繋ぐように丁寧にトーンを伸ばすことで、淡々としたメロディに感情の起伏を加えている。また、トーンが中低音域になる部分でも、声を低域に落とさず、柔らかさが残るようにすることで歌声の透明度を保っているのはお見事。バックサウンドが増えていく〈もう誰かのせいではないなら〉以降では、母音を跳ねるように切り上げ、リズムを前に出すアプローチへと切り替わる。そして〈餃子のプリーツ 見つめてクエスチョン〉で低音域を解放し、言葉の意味を声の質感ごと聴き手の中に置いてくる。声の密度と湿度を自在に操ることで成立している楽曲だ。
最後に触れたいのが、バラード「コントラスト」である。この曲では、溜めや過度なビブラートに頼らない、驚くほどストレートな歌唱が印象的だ。そんな中で、TOMOOのセンスが光るのがサビ前のブリッジ。〈夢見てしまう〉というフレーズで“め」”、“て”、“まう”と、強めの発声のトーンが続く。このパターンは、ともすれば、歌声の湿度が高くなり、やぼったく感じる場合も多いが、そうならずに爽やかさが宿っているのはTOMOOの声質のおかげだと考察する。「コントラスト」は、感情を大きく揺らすのではなく、静かなまま深く届く声だからこそ成立しているバラードだ。音圧ではなく、声の密度をコントロールすることで、柔らかさと強さの対比を描いている。
4曲を通して浮かび上がるのは、TOMOOが言葉とメロディの関係を深く理解した上で声を扱っているという事実である。母音処理の美しさ、語尾の抜き、テンポ変化への柔軟性。そして何より、声そのものに“温度”がある。感情の小さな揺れを拾い上げ、そのまま鳴らす。だからこそTOMOOの歌声は、確かな芯を保ったまま、聴き手にまっすぐ届くのだろう。
2026年1月には、TOMOOと10年来の親交を持つBREIMENが彼女をフィーチャリングに迎えた新曲「ファンキースパイス feat.TOMOO」が、TVアニメ『ハイスクール!奇面組』(フジテレビ系/ノイタミナ枠)のオープニングテーマに起用されることも決定している。その歌声で、ますますリスナー層が広がりそうだ。






















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