Official髭男dism、SUPER BEAVER、福山雅治、Eve、TAEYEON、Travis Japan……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はOfficial髭男dism「Sanitizer」、SUPER BEAVER「それでも世界が目を覚ますのなら (AA1)」、福山雅治「龍」、Eve「Underdog」、TAEYEON「인사 (Panorama)」、Travis Japan「Welcome To Our Show Tonight」の6作品をピックアップした。(編集部)

Official髭男dism「Sanitizer」

Official髭男dism - Sanitizer [Official Video]

 初のスタジアムツアー開催、『SUMMER SONIC 2025』メインステージへの出演などキャリアハイを更新するような活動を繰り広げた2025年を締めくくる新曲「Sanitizer」は、Official髭男dismの創作のモチベーションと直結した楽曲だ。美しく練られたコード進行、心の機微と同期するメロディ、シンプルで奥行きのあるアンサンブルとともに伝えられるのは、決して満たされることのない心の穴。歌詞のなかの〈君〉は恋人ともファンとも解釈できるが、どんなに愛されても、どんなに認められても、自分のなかにある渇きは自分で癒やすしかない。その第一歩は自分を信じることであり、それが本当の意味で〈君〉を愛することにつながるはずだ――音楽を奏で続ける意味を端的に描き出した「Sanitizer」によって彼らは、まちがいなく次のフェーズへと進んでいくだろう。(森)

SUPER BEAVER「それでも世界が目を覚ますのなら (AA1)」

それでも世界が目を覚ますのなら (AA1)

 バンド初となるアコースティック編成盤『Acoustic Album 1』(このタイトルはシリーズ化を匂わせる)。近年のものから懐かしいものまで選曲は多岐に渡るが、これはバンドが自主レーベルを立ち上げて間もない頃に出た2013年のミニアルバムの収録曲。タイトルの長さも、問いを投げ続ける歌詞も、当時相当な覚悟をもって書いたのだと思う。12年が経ってリアレンジ&リテイクされたニューバージョンは、覚悟や理想を一つひとつ現実に、さらに大多数を巻き込む夢へと変えてきたビーバーの歩みを総括するような仕上がりである。6分半の尺も決して長いとは感じないし、〈だから命を懸けているんだ〉という少し重めの一言も、必然の言葉として響く。(石井)

福山雅治「龍」

Ryu

 ムロツヨシと佐藤二朗のダブル主演による映画『新解釈・幕末伝』の主題歌「龍」。このタイトルはもちろん、かつて福山自身が大河ドラマ『龍馬伝』(NHK総合)で演じた坂本龍馬から取られているのだろう。アレンジの基調となっているのはジャズ。激しく、美しく、奔放にスウィングするサウンド、華やかに鳴り響くホーンセクションに乗って福山は〈生きろ〉と聴く者を鼓舞するように歌う。幕末にも匹敵する、いや、それ以上の激動を迎えている現在、もし龍馬が存在していたら、どんなアクションを起こすだろうか……という刺激的な想像こそが、「龍」のクリエイティブの根幹だ。まさに龍の如く立ち上るバンドグルーヴ、すべてを包み込み、どこまでも力強く響くボーカルもこの曲の聴きどころだ。(森)

Eve「Underdog」

Underdog - Eve Music Video

 「Underdog」とはしばしば“弱者”や“負け犬”と訳されることが多いが、単なる敗北者ではなく、不利な状況にありながらも困難に立ち向かう存在というニュアンスで使われることもあるとのこと。「なるほど、つまりEveの新曲にはポジティブなメッセージがあって……」などと安易な結論に飛びつき、わかった気になる態度への疑問こそが、「Underdog」の背景なのだろう。どこか不穏で不安定なイメージを聴く者にもたらすトラック、諦念や静かな憤りを感じさせる歌声、そして、虚実の境目が本当にわからなくなった状況を想起させるリリック。ここにあるのは“今”そのものであり、それを優れたポップミュージックに転化できるセンスと技術こそがEveの真骨頂なのだと思う。(森)

TAEYEON「인사 (Panorama)」

TAEYEON 태연 '인사 (Panorama)' MV

 少女時代のメンバーでありソロ歌手としても活動してきた彼女の、ソロデビュー10周年記念ベストアルバム『Panorama: The Best of TAEYEON』。新たに収録された新曲がこちら。前半は静かなバラード風だが、サビに入るとエレキギターと力強いドラムが入ってくることで、ポップスよりもロック寄りの壮大なパワーが押し寄せてくる。TAEYEONの歌唱はバンドサウンドにまったく負けないもので、最初は透明なファルセットを使っていたサビを、2回目からは見事な歌唱力で乗りこなしていくのだ。世界標準の流行を意識しない作りが、逆にアーティストとしての自信を感じさせるうえ、謎の少女とTAEYEONによるロードムービー風のMVも見応えあり。(石井)

Travis Japan「Welcome To Our Show Tonight」

Travis Japan – 'Welcome To Our Show Tonight' Music Video

 メンバーの松倉海斗が総合プロデュースした最新アルバム『's travelers』からの先行配信曲。旅をテーマとする今作は、70年代や90年代、00年代などを自在に行き来する曲が多いが、こちらは50年代のスウィングジャズがテーマ。映画『ラ・ラ・ランド』のように今にも夢心地のショータイムが始まりそうな、そして誰も彼もが恋に落ちてしまいそうな、ワクワクの予感が押し寄せるポップスだ。MVももちろんミュージカル仕立て。スーツ姿の粋なダンスシーンはもちろんのこと、カメラのカット割を極力減らし、全体のフォーメーションをワンカメで追うシーンが多いところに注目。さりげなく見えて高度な動きと、絡みのシーンで滲み出る仲の良さ。これは推せます。(石井)

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