アルステイク、全身全霊で挑んだキャリア最大規模のワンマン ライブバンドの矜持を見せたステージ

アルステイクが11月24日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にてワンマンライブを行った。『アルステイクpresents 「いつも通り いつも以上」会場限定シングルリリース編』のツアーファイナルだ。
まだ場内BGMが流れたまま、照明もついた状態で、ふらりとステージにやってきたひだかよしあき(Vo/Gt)、のん(Ba/Cho)、あむ(Dr/Cho)の3人。ひだかの〈本気で愛されていました〉という歌から「chisa」を始めると、“いつも以上”の大きさの会場はあっという間に“いつも通り”のライブハウスに変わった。そんなライブハウスと、ライブハウスに集まったファンへの思いを伝えるように「ロックに騙されていることに気が付かないほど信じてる」を続ける。〈あのロックバンドに/出逢った日〉とひだかが歌うと、フロアからはアルステイクへの思いを爆発させるようにひときわ力強く拳が上がった。



「星の夜」ではミラーボールが回り、ロマンチックな歌詞と共に3人の演奏が会場いっぱいに溶けていく。会場限定シングル収録曲でありながら、サビでひだかが「いける?」とフロアに問いかけると、大きなシンガロングが広がった。また「今日はアルステイクのことをもっと好きになって帰ってください。アルステイク好きだけど他にも好きなバンドいるな~っていう人は、今日はそのバンドのこと思いっきり忘れて帰ってください」と独占欲むき出しにしたひだかは、「マーキング」を歌い、さらに「ダメ彼女」では〈なんかムカつくしそいつのフォロー外しといて〉の歌詞を〈あのバンドのフォロー外しといて〉に変える拗ねっぷりで、アルステイクを刻みこんでいった。

ライブは「アイプチ」から少しずつ寂しさを募らせていく。「アイプチ」を歌い終えたひだかは、ギターをポロポロと弾きながら〈ずっとそばに居たかった〉と「アイプチ」の最後のフレーズを繰り返した。そこから「ずっとそばに居ると思ってた。ずっとそばに居るもんだと思ってた」と、思い出を語り始める。ひだかの話なのかフィクションなのか、フロアの観客は自分の思い出と重ねるようにじっと聞き入る。そしてひだかが「嫌いになってはないけど、君のこと好きかわからない」と呟いて、バンドはシームレスに「ワガママ」「裸足と裸足」を続けた。さらに思いを募らせるように「もう好きじゃないのは確かだけど離れ方がわからない」と語りながら、そんな葛藤を歌った「終わりの続き」を選曲。傷をえぐるようなセットリストを歌い終えたひだかは、「苦しかった思い出が忘れられますように、じゃなくて、苦しかった思い出が、今日だけちょっと好きになれますように」と言った。これがアルステイクがラブソングを歌う理由だ。

しんみりしたムードは、「2階席があるライブハウスってあまりないなと思って」と嬉しそうに手を振るひだかの無邪気な姿であっという間になくなる。しかしその後、ひだかは「えーー」「うーん……」と言葉に詰まり、ギターを掻き鳴らした。そして、一瞬で勢いと言葉を得ると、「岡山、マックス200人の小さいライブハウスから、マックス2500人の、今目の前にいる2000人にライブをやりにきました。何回も言うけど、あんたの一番のバンドになりにきました」と改めて宣言し、「今日は」でライブを再開させた。

「俺らの人生に、俺らのライブに巻き込まれてくれ」「思いやりを持って自分勝手にやろう」と、先ほどまで「えーー」「うーん……」と困っていたのが嘘のように言葉を投げかけ、「一閃を越え」「ダメ彼氏」「わんちゃん」と性急な楽曲を連投。フロアは大暴れで、そんなフロアを見てのんがダイブするなど、会場中に熱狂が渦巻く。その盛り上がりは「走れ」で爆発。一度演奏を終えたあと、ひだかが静かに見ている2階席に気づき「業務連絡です。2階席って立っちゃダメとかいうルールありますか?」と確認し、そんなルールはないとわかると「走れ」をおかわり。さらにもう一度“業務連絡”から「走れ」を叩き込んだあとも、バンドは「光れ」「踊れ」「#だるい」と衝動的な曲を続けていく。



「1秒でも俺たちに共感した以上、俺はその君の拳を、ぎゅっと引き上げたいわけ。その拳をぎゅっと強く優しく握りたいわけ。ただ忘れたくない。俺は俺のためにバンドやってる!」と叫んでから始まった「チェリーメリー」では、「今日という日がアルステイクの通過点になりますように」「自分のために生きて、誰かが感動する。ライブハウス最高だ」と、音楽やライブハウスへの思いをひたすら吐き出していった。そして、フロアに目をやり「こうやってアルステイクに1分でも1秒でも自分を重ねた人が、もっと自分のことを愛せますようにという曲です」と紹介し、拳を強く優しく握りしめる代わりに、会場限定シングル収録曲「君へ」を優しく届けた。

「ゆっくり歌うから、ちょっとキツそうだったら少しだけ下がってあげて」とフロアを気遣ってから「ふたりぼっち」「ふたりの季節」とバラードを続けられるのもワンマンライブならでは。先ほどのような衝動に駆られる楽曲もあれば、丁寧に紡がれたバラードを、どっしりとした演奏で届けられるのもアルステイクの魅力だ。また「page」で〈式挙げるときは誰よりも幸せになって欲しい〉と歌い終えたあと、フロアの同志たちに「昔の恋人よりも、俺たち幸せになろうぜ!」と声をかけ、〈ズルい君に 少し、少しくらい/バチが当たりますように〉と歌う「嘘つきは勝手」を続けるところにはアルステイクの愛おしさが垣間見える。

「マイナスを心に潜ませても、人の前ではヘラヘラしている。俺はそんな人が大好きです」と心を寄せてから始まった「心」では、「再生した音楽はいつも俺のことを歌っていた」「今の俺が目の前の君に歌う番!」とフロアへ優しいまなざしを向け、「足跡」では、「当分は今日のことで頭がいっぱいで、空を見上げることすらも難しくなりますように」と、ここでも独占欲全開に。そうやって、曲前、曲中にたくさんの言葉を重ねてきたひだかだが、本編最後は「約束しよう、またライブハウスで」とたった一言告げ、「別れの指切り」でステージを去った。

アンコールは「未完成のまま」から。「売り切れなかったからまたリベンジしたい」と素直に悔しさを滲ませつつも、「思い切りできて気持ちよかった!」と、まさに“未完成”でありながらも魅力的な姿を見せる。さらに「光れ」「走れ」を再度お見舞いして、 “いつも通り いつも以上”のアルステイクのライブは終幕した。

「ダメ彼氏」の〈形はないけど感じられるもの〉のあと、ひだかは「サブスクの音源だけじゃわかり切らないことがある。SNSのMCだけじゃ伝わり切らないことがある」と言葉を挟んでいた。また、「スマホの中だけ見たらラブソングばっかり歌うバンドって思われがちだけど、それだけじゃないんだよ。目の前で体感してほしいんだ」とも訴えていた。また、こうも言っていた。「“ずっと”がないってわかっているのに、『今日みたいな日がずっと続けばいいのに』と願ってしまう」と。「ライブハウスのライブは儚いものだなって今日も思った」と。だから彼らは、音楽だけでなく曲中も使って言葉を尽くそうとするし、テンションが上がるたび何度でもフロアに飛び込むし、ドラムセットから立ち上がって目の前の景色をじっと噛み締めたりもする。全身でライブを味わうのがアルステイクなのだ。そして、「ずっと」がないとわかっているからこそ、指切りをしたいのだ。そんな彼らはこの日、次の約束として、2026年3月から初のワンマンツアーを開催することを発表した。
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アルステイク『初めてのワンマンツアー』
<2026年>
3月16日・17日 高田馬場CLUB PHASE
3月22日 札幌ペニーレーン24
4月25日 岡山YEBISU YA PRO
4月30日 名古屋CLUB QUATTRO
5月8日 福岡BEAT STATION
6月7日 仙台darwin
6月18日・19日 心斎橋BRONZE

























