35.7のライブに我々はなぜ希望を見るのか? 日々を生き抜くことの意味、バンドである理由――衝撃のワンマンを観て

11月7日東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)にて開催された、『35.7 ONEMAN LIVE TOUR 2025』。EP『火星探索』を携え、9月宮城・MACANAを皮切りに全9カ所をまわったツアーも、この日が最終日。ファイナルで音をかき鳴らすゴーテンナナの勇姿を見届けようと、チケット完売となったフロアには満員のオーディエンスが詰めかけている。この光景を見るだけでも、ゴーテンナナへの期待と注目度が窺えるが、この日、我々の眼前で繰り広げられたライブは、その期待を大きく上回る、激しくも儚いエモーショナルなライブだった。

開演の時、静寂を切り裂くようにSEが流れるとステージに姿を現した、たかはし(Gt/Vo)、かみのはら(Gt)、さくや(Ba)、こな(Dr)の4人。35.7のライブは、〈浅瀬で泣いた座礁鯨/溺れるような恋はもう/20歳で捨てたわ〉と「百年公約」から幕を開けた。たかはしの歌声を中心にフロアへと広がる極上のバンドアンサンブル、その鳴り音にオーディエンスは腕を突き上げ呼応していく。たかはしの一声で会場の空気が変わったことを肌で感じる。「ワンマンツアー、東京。よろしくお願いします!」と声高らかに宣言すると、間髪を入れず「最果て」に突入。そのスキルフルな曲の繋ぎにフロアからは大きな歓声が巻き起こる。こなのドラムは力強く会場を揺らし、さくやはステージ上を縦横無尽に動き回ってベースの低音をオーディエンスの耳に届ける。そして、一見すると冷静にギターを奏でるかみのはら、彼女のギタープレイが凄まじくいい。魂が宿ったその鳴り音は、完全にフロアを掌握している。冒頭から、この一体感。見事である。続けざまに「Hurtful」、「nemus」とエモーショナルに音を奏でていく。たかはしは魂を込めて、その歌を届ける。


この日会場には1300人以上のオーディエンスがいるはずなのに、自分ひとりに向けて歌ってくれているような錯覚に陥るのは、なぜだろうか。それはきっと彼女が発する言の葉、歌の葉には我々の背中を優しく押す力があるからだろう、そんなことをふと思う。歌声とバンドサウンドに浸っていると、「ツアーファイナルですよ! 興奮しています!」と元気な声が耳に届く。こなが興奮気味に口を開くと、「(人間)3人と茄子1本でバンドをやっています」と最近金髪から緑髪へとイメージチェンジした、さくやをイジりながら小気味よいMCを展開すると、たかはしはこのツアーを経て上手になったというEP『火星探索』の説明をし始める。そして、彼女は「わかり合いたい」と口にした。この言葉が、たかはしの、そしてゴーテンナナの根幹にあるブレない想いなのだと感じる。人それぞれ解釈は異なるけれど、わかり合おうとすることの大切さ、そしてわかり合いたいと渇望しながら音を鳴らすゴーテンナナの音楽は、だからこそ何より美しいのだ。


「忘れることに対して書いた曲です」とスタートした「運命論」では「忘れるは希望だよ」と言葉にして音を奏でるたかはし。「永遠もないし、ずっともない。そうやって繰り返していこう」とまた背中を優しく押しながら、「バッドリピートエンド」。頭上のミラーボールが回ると、自然発生するオーディエンスのクラップ。またひとつ、フロアのボルテージが上昇する。ピンクに照らされたステージ上では、かみのはらのギターが泣く。オーディエンスは、ゴーテンナナのかき鳴らす音を浴びながら、自由に体を揺らし、乗りこなす。止まることなく展開していく極上のライブ。「ワン、ツー!」とオーディエンスの掛け声が決まると、「50%」へとなだれ込んだ。フロアの熱気はさらに上昇し、ライブは熱を帯びる。

天井知らずの盛り上がりのなか、「空気洋燈」でミディアムテンポに一転。エモーショナルな空気が漂う、Zepp Shinjukuの壁に映し出される、4人の影。最高の空間が創出されていく。たかはしはギターを爪弾きながら「あの時、素直になれたら、向き合えたらよかったな、そもそも出会わなかったらよかったなと思う、後悔がいっぱいあった恋の歌です。後悔を引き受けても、一緒にいたかった」と「忠犬ボク公」を歌い始める。続く「すももドロップ」でも、彼女は我々の存在や感情を肯定するように歌い奏でる。それがあたたかい。

ライブはすでに終盤戦に差し掛かっていた。たかはしは、普段感じていることをひとつずつ丁寧に吐露する。フロアに集まったオーディエンスを見渡す。「やってこれたな、私。だからこそ、私はここにいるし、みんなもここにいる。生活することは疲れちゃうけど、諦めなくてよかった」「『幸せになろう』って私はよく言うけど、無理になろうとしなくていいと思う。ここにいることが大事。頑張ってきたね、私たち。今までの地獄はこの日のためにあったんだ。生き続けてくれて、ありがとうございます。あなたらしく、私らしく、生き続けましょう」。そう続け、「しあわせ」を奏で始めた。たかはしの言葉を聞いて、彼女に音楽があってよかったなと、そんなことを思う。不器用だけれど、純粋にただただ音楽が好きで、生きて、この場所で音をかき鳴らしている。それだけで、観ているこちらも幸せになれるんだから、やっぱり音楽は最高なんだな――そんな気づきを与えてくれる。

ライブはここからフルスロットル。「一緒に歌おう!」と「祝日天国」で起こった、〈僕の好きな君を/僕より好きな人はいないし〉の大合唱。この日いちばんの一体感のなか、「ちぐはぐ」、「うそうそほんと」と轟音を鳴らし続けた4人。ラストでも大合唱が巻き起こる、幸福な空気に満ち溢れた、『35.7 ONEMAN LIVE TOUR 2025』ファイナル公演はこうして幕を閉じたのだった。
――が、ライブはまだまだ終わらない。アンコールを待ち望むオーディエンスのクラップがフロアに規則正しく響く。すると、再びステージへと姿を現したさくやとこな。ふたりによるグッズ紹介を挟むと、たかはし、かみのはらもステージへ。2026年に行われる新たなワンマンと対バンライブの開催を発表すると、「かっこいい姿を見せられたらと思うので、また生きて会えたら」と言葉にし、「ふたり」、「eighteen candle」の2曲を披露した。「eighteen candle」を歌う前にたかはしが口にした、「18歳、想像してなかった光景が広がってる。こういう景色があるから、生き続けてる。これからも一緒になれますように。みんなの人生に35.7を入れてくれてありがとうございます」という言葉に嘘偽りはなかった。「私たちは強いから!」――そうしてこの日のライブに終止符を打った35.7は、最高に輝いていた。
■セットリスト
01. 百年公約
02. 最果て
03. Hurtful
04. nemus
05. 運命論
06. バッドリピートエンド
07. かに座のうた
08. 50%
09. 空気洋燈
10. スローファイヤー
11. 忠犬ボク公
12. すももドロップ
13. しあわせ
14. 祝日天国
15. ちぐはぐ
16. うそうそほんと
EN 01. ふたり
EN 02. eighteen candle

■ライブ情報
『35.7 two-man live “houi”』
2026年3月7日(土)大阪・Live House ANIMA
OPEN 17:00/START 17:30
※ゲストあり
2026年3月29日(日)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
OPEN 17:00/START 17:30
※ゲストあり
<チケット>
スタンディング:4,800円(税込) ※ドリンク代別、未就学児童入場不可
オフィシャル先行(抽選):11月17日(月)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/sanjugotennana/
『35.7 graduation ceremony “汽笛”』
2026年3月14日(土)東京・Spotify O-Crest
OPEN 18:00/START 18:30
<チケット>
スタンディング:4,500円(税込)※ドリンク代別、未就学児童入場不可
オフィシャル先行(抽選):11月17日(月)23:59まで
受付URL:https://eplus.jp/sanjugotennana/
35.7 オフィシャルサイト:https://sanjugotennana.com/
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