KAT-TUN、“終幕”ではなく“証明”の夜へ――時代を駆け抜けたグループの軌跡、荒波の先に見える新たな出航
KAT-TUNが築いた数々の“事務所初”、充電期間を経て見せた覚悟と誠実さ
また、音楽配信に加えて、事務所内でイベントなどのライブ配信の先陣を切ったのもKAT-TUNだ。デビュー12周年の記念日である2018年3月22日、横浜・大さん橋で開催された初の野外イベント『KAT-TUN 2018 FIRST IMPRESSION - Ask Yourself』をLINE LIVEで生中継し、現地に来ることが叶わなかった全国各地のファンも楽しませた。さらに同年、『KAT-TUNの世界一タメになる旅!+』(Paravi)がスタート。バラエティ番組の配信は、事務所として初のことだった。東京ドームで行われた『KAT-TUN LIVE 2018 UNION』で、“天の声”によって発表されたのも懐かしい。
グループ活動に加えて、各メンバーがソロでドラマやバラエティ番組、舞台への出演を重ね、さまざまな経験とキャリアがあり、トーク力やバラエティ力の安定した強さが、制作サイドも安心して彼らにさまざまなコンテンツを任せられたのではないだろうか。誰もが手探り状態だったデジタル手法の過渡期を、ファンとともに支えてきたグループなのだ。
メンバーの活動休止や脱退を乗り越えながら、2016年4月、5月には、デビュー10周年を記念した3大ドームツアー『KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR "10Ks!"』を開催。最終公演となる東京ドームでのコンサートをもって、グループは充電期間に入った。“充電期間”を設けるというのも当時は珍しいことで、さまざまな苦難のなか、静かに活動を続けることもできなくはなかっただろう。しかし、これも長らくセルフプロデュースを行ってきた主体性ゆえか、自らその歩みを見直す期間を設けるという大きな決断に彼ららしい勇気や誠実さを感じた。
2018年1月に活動を再開。前述したライブの生配信や冠バラエティ番組の配信へと繋がっていく。2021年には『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場を果たすなど、“嬉しい驚き”をもたらすのもまた、彼らの活動の特徴と言えるだろう。
そして、誰もが衝撃を受けたであろう解散発表。2025年3月31日にはファンクラブ会員向けに『Thanks to Hyphen 2025』として生配信を行い、3人はそれぞれの道へと歩んでいくこととなった。
「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、このような未来を誰が想像しただろうか。荒波とも呼ぶべき出来事が起こっては、それを力強く、時にはユーモアを交えながら、彼ららしく乗り越えてきた。突然の解散をきっかけに彼らは別々の道へ進むことになったが、最後の最後までKAT-TUNのファンを思い、直接感謝を伝えようという意思を貫いた、その証が今回のラストコンサートだろう。
秋のZOZOマリンスタジアムを舞台に、どんなステージを見せるのか。大きな帆を掲げ、荒々しく出航した彼らの旅。KAT-TUNのステージではお馴染みの炎が、さまざまな感情を焼き払うようにして、最後の最後まで力強く走り抜くのだろうと想像する。彼らの人生のひとつの区切りとして、新たな門出、新たな出航の時を力強く応援したい。























