草彅剛「いつか必ずまた会えるよね」 大切な存在・クルミちゃんと過ごした8年9カ月、教えてくれた命の尊さ
草彅剛の愛犬・クルミちゃんが、9月23日に天国へ旅立ったことが伝えられた(※1)。出会ったからには、いつか別れが待っている。人間よりもずっと凝縮した一生を送る小さな命であれば、その覚悟を持っていたつもりだった。
しかし、そんなことを忘れてしまいたいくらい、クルミちゃんは“ペット”という言葉には収まりきらない大きな存在だったのだ。それは草彅にとってはもちろん、その姿を見守ってきた多くのNAKAMA(新しい地図のファン)たちにとっても同じだろう。
「僕が拾われたのかな」――人生の転機にやってきた新たな家族
草彅がクルミちゃんと出会ったのは、2017年のこと。フレンチブルドッグのクリーム色の女の子をずっと探していたという草彅は、ブリーダーを通じて生後3カ月のクルミちゃんを迎え入れた。聞けば、クルミちゃんが生まれたのは2016年12月30日。この年の12月31日にはSMAPが解散したことを思うと、まさに激動の時期だった。
そんな大きなうねりのなかで草彅のもとにやってきたクルミちゃんについて、「クルミちゃんのことを話してると、私ね、涙がちょちょぎれちゃいます」なんて笑いを取りながらも、熱い思いを語るYouTube動画をアップしたこともあった。
まだテレビタレントとYouTubeの世界が今ほど近くなかった当時、草彅は「ユーチューバー 草彅チャンネル」をスタート。そのチャンネルにオリジナリティを出したのも、クルミちゃんの存在だった。
クルミちゃんを前にするとテレビではなかなか見られなかったプライベートな顔が隠しきれない。自身を“パパ”と呼び、愛娘のように溺愛っぷりを披露する。ギターをかき鳴らし、クルミちゃんへの愛を歌にして熱唱したことも。そんな抑えきれない愛情を振りまく草彅に、クルミちゃんは「仕方ない」といった表情で付き合う。その落ち着きっぷりがまた視聴者の目尻を下げた。
草彅がテレビの世界から遠ざかることになった時期にも、クルミちゃんがメディアとのつながりを保ち続けた。バラエティ番組『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)へ出演したり、キヤノンのミラーレスカメラ「EOS Kiss M」のCMにも登場。大女優のような落ち着きと貫禄を見せてくれたことも話題になった。
そんなクルミちゃんの眼差しを「心を見透かされているような気がする」と語ったのは、ドラマ『拾われた男』(Disney+)のトークイベントでのこと。タイトルにちなんで「拾われたエピソード」を尋ねると、「僕が飼い主で迎え入れたけど、実はクルミちゃんに拾われたんじゃないかな」と話す場面も。
まっさらなところからスタートしなければならなかったあの時期、クルミちゃんという守るべきものができたから強くなれた。そして、「必死です」と言いながら走り続けた新しい地図の始まり。もちろんうまくいくことばかりではなかったけれど、クルミちゃんの物怖じしない姿に心を落ち着けることができた。言葉を交わすことはなくとも、すべてをわかってくれている。そんなクルミちゃんが草彅のそばにいてくれることを、NAKAMAたちも感謝しながら眺めていた日々だった。
“生きる”ことを表現し続ける草彅に、クルミちゃんが教えてくれたこと
クルミちゃんは、2020年に3匹の子犬を出産。世界がパンデミックの不安に包まれ、先の見えないステイホームに鬱々としているなかでのハッピーなニュースに心が温まったのを思い出す。草彅はクルミちゃんの代わりに子犬たちの排泄を手伝い、40分ごとにミルクをあげていたという。無事にクルミちゃんが出産を終えたこと、そしてレオン、マチルダ、桃と名付けた子犬たちの様子を語る草彅は、“パパ”の顔そのものだった。
香取慎吾とパーソナリティを務めているラジオ『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm)2020年6月28日放送回では、3匹のうち2匹の子犬を里親に出す時期が近づいたことを受けてのフリートークが繰り広げられた。「こんなに別れがたくなると思わなかった」としみじみ。そんな草彅の話に、香取も「泣いちゃう」と胸をつまらせる。
ほかの犬種に比べてリスクの大きいフレンチブルドッグの出産。そして、そこから子犬たちが元気に育つというのは、まさに奇跡的な出来事だった。みんなが健やかに成長していることに感謝しながら、新しい世界へと旅立たせる。保護者としての責任と、成長の喜び、送り出す寂しさ。それらを実感できる「貴重な経験」と草彅は語っていた。
命は繋がっていく。当たり前のように知っていることだけれど、実際に愛する家族が命がけで挑む瞬間を目の当たりにすると、その尊さに圧倒されるものだ。身をもってその“経験”を草彅にプレゼントしたクルミちゃんが、草彅の主演ドラマ『終幕のロンド —もう二度と、会えないあなたに—』(カンテレ/フジテレビ系)が始まるタイミングで虹の橋を渡ったというのも、運命めいたものを感じずにはいられない。
劇中の「昨日まで自分を待っていてくれた人が、明日も待っていてくれるとは限りませんから」というセリフを、草彅がどんな思いで発したのか。想像すると、まぶたの裏が熱くなって視界がぼやけてしまう。
まったくそのとおり。誰にでも命の終幕は訪れるもの。そして、そのとき遺された家族が感じるのは、「もう会えない」という悲しみと、どれだけのものをもらったのかという感謝の気持ちでもある。一緒に生きてくれた、その愛しい日々の思い出がこれからを生きる者の心を温め続けてくれる。
「いつか必ずまた会えるよね、クルミちゃん。僕たちは、もうしばらく、こっちの世界で自分の命を燃やして、クルミちゃんが教えてくれた通りに、精一杯自分の人生を全うします」という草彅の前向きなコメント、そしてこの1カ月間の気丈な振る舞いに、スターとしての矜持を感じる。
命を燃やし、人生をまっとうするとはどういうことなのか。これからもエンターテイナーとして、“生きる”ことを表現していく草彅。そんな“パパ”の活躍をクルミちゃんがじっと見守ってくれている姿が目に浮かぶ。
※1:https://contents.atarashiichizu.com/?p=27325&post_type=chizu_topic


























