i-dle、“アイドル”としての自問自答と進むべき道 リブランディング後初日本ツアーを観て

i-dleが『2025 i-dle first japan tour [ 逢い-dle ]』を開催した。セルフプロデュース型のグローバルガールズグループとして国境を越えて活躍する彼女たちは、日本でもこの夏に『SUMMER SONIC 2025』に初出演を果たし、10月3日にはリブランディング後初の日本1st EP『i-dle』をリリースするなど、精力的に活動を展開。今回の公演でも、日本向けのセットリストとトークで巨大な会場を埋め尽くしたネボボ(ファンの呼称)たちを楽しませた。本稿では10月4日、5日の2日間にわたって行われた埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演より2日目の模様をレポートする。

定刻になり、ステージにMIYEON(ミヨン)が登場すると、客席からどよめきが起こる。ほかのメンバーが見当たらず、途方に暮れる彼女。「MINNIE(ミンニ)! SOYEON(ソヨン)! YUQI(ウギ)! SHUHUA(シュファ)! みんなどこへ行ったの?」と叫ぶと、遅れて4人が次々とステージに現れ、その直後に華やかなサウンドが鳴り響いた。幕開けを飾ったのは「どうしよっかな」。果てしない夢を追いかけるグループの姿をポジティブなサウンドで表現したナンバーで、『i-dle』のリードトラックとして先日リリースされたばかりの楽曲だ。そこから「Fate」の日本語バージョン「傷つくのは嫌いだから」や「Klaxon」を立て続けに歌い上げると、客席のボルテージは早くも最高潮に達した。



「こんにちは、i-dleです!」――。元気よく挨拶した5人は、Apple Musicにおいて日本のJ-POPおよびK-POPのアルバムチャートで『i-dle』が1位となり、中国最大の音楽配信プラットフォーム・QQミュージックの日間/週間チャートでもトップに輝いたことを報告。「すべてネボボのおかげです。ありがとう!」と感謝の言葉を口にすると、場内は幸せなムードに包まれた。ちなみに本作はデイリー アルバムランキング(2025年10月18日付/オリコン調べ)でも1位を獲得するなど、さまざまなチャートで好成績を収めている。


続いて披露されたのは、「Wife」と「Uh-Oh (Japanese ver.)」。どちらもこのグループらしさが強く感じられるナンバーだ。ひとつの型に落とし込まれることを拒絶する前者、「望まれても渡さない」という毅然とした態度を見せる後者。迫力あるバンド演奏に支えられながら10人のダンサーとともに繰り広げられるパフォーマンスは、そんなメッセージをより鮮明にしていく。

コンサートの中盤はJ-POPのカバーソングで会場を大いに湧かせた。最初はMIYEONのソロで「永遠前夜」。『グラスハート』(Netflix)から誕生したバンド・TENBLANKのMVにMIYEONが出演していることから選曲されるに至った。彼女はドラマの主人公になったかのように気持ちを込めて歌い上げたのが印象的だった。SOYEONがカバーしたのは、日本のアニメ『デジモンアドベンチャー』(フジテレビ系)のオープニングナンバー「Butter-Fly」(和田光司)。幼い頃に慣れ親しんだであろうこの曲を、大勢のファンの前でギターを弾きながら歌う彼女は本当に楽しそうだ。
そして、MINNIE、YUQI、SHUHUAによる「愛♡スクリ~ム!」(AiScReam)では、〈〇〇ちゃん! 何が好き?〉というフレーズに各メンバーの名前を入れて歌い、キュートな笑顔としぐさで会場を盛り上げる。こうしたサービス精神あふれる演出もファンを引き付ける要因に違いない。

以降もレトロなJ-POPをイメージしたスローバラード「愛せなかった世界へ永遠にじゃあね」に始まり、「LATATA (Japanese ver.)」、「HANN (Japanese ver.)」、「Senorita (Japanese ver.)」といった代表曲の日本語バージョンでスペシャルな空間を作り上げるi-dle。なかでも途中でダンサーが幕で隠して衣装のチェンジを行う場面には、大きな拍手と歓声が起こった。こうしたアジアのエンターテインメントならではのシーンを見ると、今のK-POPを代表するグループなのだとあらためて痛感する。

ステージはラストへ向かって勢いのあるナンバーが続いていく。テレビアニメ『BEYBLADE X』シーズン3(テレビ東京系)の新オープニングテーマに採用された「Invincible」、疾走感あふれるギターロックの「Allergy」や「Never Stop Me」など、エッジの利いた楽曲で満員の客席を熱狂の渦に巻き込んだ。
「これぞi-dle」と言うべき極め付きのナンバー「TOMBOY」、「Queencard (Japanese ver.)」、「Good Thing」などで本編を締めくくった5人は、いったん舞台裏へ。アンコールを求める拍手に応じて再びステージに現れると、2回目の「どうしよっかな」に続き、しっとりと歌い上げた「Tung-Tung (Empty)」、ファンソング「Neverland」を披露。歌心あふれる3曲を通じて日本のネボボたちへの感謝の気持ちを伝えた5人は名残惜しそうにステージを去っていった。

アイドルとはどのような存在なのか――。そのような問いをグループ名に込めて活動してきたi-dleは、デビューから8年目の今、新たな答えを出せたのではないだろうか。誰にも媚びずに我が道を歩み、だからといって力まず、あくまでも自然体に。今回のステージからしっかりと伝わってきた魅力をこれからも届け続けることで、i-dleの未来はメンバーたちが思う通りになるはずだ。


























