“生き様界隈”ミーマイナーが綴る本物の感情 美咲×さすけが語る『あくまで生活』、失恋や孤独を歌う理由

何かを失う悲しみを感じた時に一番心を動かされる(さすけ)
──そんな中、9月に3rdEP『あくまで生活』がリリースされました。本作には失恋の楽曲が並んでいますが、失恋楽曲を集めてEPを作ろうと思って作り始めたのでしょうか?
さすけ:そもそも僕らの曲、ほぼ失恋ソングなんですよね。
──それはどうしてだと思いますか?
さすけ:何でだろう? 楽しいことや「夢を追いかけよう」というものよりも、何かを失う悲しみを感じた時に一番心を動かされるから、そればっかりを曲にしているのかな。美咲は?
美咲:私は、そもそも最初から孤独や絶望の独り言を曲にしていたので、明るい曲をそんなに書いた経験がないんだよね。失恋ソングに共鳴して「この表現いいな」と思って追求しているうちに、そうなっているのかなと思います。
さすけ:あと、2人とも好きな曲はだいたい失恋ソングだよね。ヨルシカ、クリープハイプ、マカロニえんぴつ、Saucy Dogって。
──失恋ソングがお二人の琴線に触れるんですね。
美咲:そうだと思います。

──では、収録曲について聞かせてください。表題曲「あくまで生活」は「私たちは別々を生きてきた2人」と俯瞰した視点がユニークなロックチューンですが、この曲はどのようなところからできた曲なのでしょうか?
美咲:私は人との距離感があまり上手く取れないタイプで。相手のことを自分のように扱ってしまったり、逆に他人を遠ざけて傷つけたりしてきた。皆さんも、デートとか慣れてきたら適当になってきたりすることってあると思うんです。そんな中で「恋人といってもあくまでも他人だし仕方ないよな」「それを受け入れて生きていくんだろうな」と思ったことがあって、書きました。
──すごい視点ですよね。悟りを開いているというか。
美咲:そうですよね。こじらせ曲です(笑)。
さすけ:でもポジティブな曲だって思われるよね。
美咲:そうなんです。サウンドは明るいし、アップテンポだから、ライブでも“楽しい曲”の枠に入っているんですけど、実は歌詞を読むと重たくて。ギャップがある曲だなと思います。
──さすけさんはこの曲を初めて聴いた時はどういう印象を持ちましたか?
さすけ:このテンポ感とコード感にこの歌詞って、似ている曲もないし、すごく“美咲ワールド”でいいなと思いました。歌詞も、本の中の言葉のようなものではなくて、自分の中にあるワードだからか、TikTokでも割と聴かれているんですけど、同世代の人に刺さっていたらいいなと思いますね。
──編曲の際にはどのようなことを意識しましたか?
さすけ:音楽的にいうと、3度フラットのコードを入れるなどオールドファッションなサウンドメイクを意識しました。最先端のサウンド感というよりは、生活に馴染むようにということを考えました。
──歌や演奏ではどのようなことにこだわっていますか?
美咲:Aメロが結構低いのでそこは気を配っていますが、基本的には楽しくやっています。
さすけ:みんなで歌うパートは、楽器も遊んでいて。コード進行はほかのサビと一緒なんですけど、セッションっぽい動きを入れていています。そこはこだわった点ですね。

──さすけさんが作詞曲を手掛けた「夏時雨」は打ち込み全開のバラード。この曲はどのようなところからできた曲なのでしょうか?
さすけ:これはもの憂げ時代からある曲なんですけど、夏のバラードがなかったので、その方向性で作ろうと思って作り始めました。夏曲って、太陽ギンギンのパーティ系が多いじゃないですか。でもそうじゃなくて、夏の悲しみを切り取りたいなと思って、雨をテーマにしました。
美咲:私、この曲がめちゃくちゃ好きなんですよ。もの憂げの頃から好きで歌いたかったので、「今作に入れてください」ってお願いしました。
──ボーカルもほかの曲とは雰囲気が違いますが、どのようなことを意識して歌ったのでしょうか?
美咲:さすけさんから「演歌っぽい歌い方をしてほしい」というディレクションがあって。
さすけ:僕は昭和歌謡やJ-POPが出始めた頃の女性ボーカルのバラードが大好きで。「部屋とYシャツと私」とか、「ラヴ・イズ・オーヴァー」「時の流れに身をまかせ」とか。あの頃って弱い女性目線の曲が多いんですよね。その時代の哀愁を出したいなと思って、ディレクションしました。
美咲:今までの曲とは違う歌い方だったので苦戦しましたが、頑張って理想に近づけられたんじゃないかなと思います。
──そしてEPの最後を飾るのは「終わり」。美咲さんの弾き語りです。
美咲:これは、初めて恋愛じゃない出来事から書いた曲です。妹と1年くらいだけ一緒に住んでいたんですが、その1年の間、妹が悩んでいる時期があって……だけど私は近くにいる時に何もしてあげられなかったなって、妹が出て行ってから思って。いなくなった部屋とか、静かな夜に、妹の不在を感じて、それを曲にしました。はじめの〈全てのことには終わりが来ると/始まる前から分かっていたのに〉というところは私の人生観でもあって。それが曲にできたので、自分にとってすごく大事な曲です。
──バンドアレンジにせずに、弾き語りのままにしたのはどうしてですか?
美咲:あまりにも私の心に寄りすぎて、この子が孤独でいることがこの曲のあり方だなと思ったから。
──さすけさんはこの曲を初めて聴いたとき、どう感じましたか?
さすけ:めっちゃ好きです。ファンです。
美咲:ありがとうございます(笑)。
さすけ:〈全てのことには終わりが来る〉って、世の中の真理だし、老若男女問わずいろんな人に届くといいなと思っています。しかもこの曲、レコーディングは一発録りで。マイクの前でギターを持って「はい、どうぞ」って。
美咲:歌い終わったら「はい、帰ります」って。
──本当に1回しか歌わなかったんですか?
さすけ:テイク10くらいまで録りはしましたけど、実際に使ったのは最初のテイクなので、実質一発録りです。
美咲:ミックスも直しもしていないので、本当に録って出し。呼吸やその場の空気まで届けられてたんじゃないかなと思います。
──本当にリアルな歌そのままなんですね。この曲は10月1日に配信リリースされましたが、反響や反応はどのように受け取りましたか?
美咲:どうなんだろう? でもライブでは、泣きながら聴いてくれる子がいて嬉しかったです。私は普段から出来上がった曲はボイスメモに入れているんですけど、この曲を作った時は泣きながら歌ってボイスメモに録音できないくらいだったんです。だからそれがちゃんと届いているんだと思ったらすごく嬉しかった。
──そう考えると、美咲さんが音楽を始めた時の作り方と一緒ですね。
美咲:そうですね。私は「ああでもない、こうでもない」っていろんなことを考えるのが好きなんですけど、考えるだけだと落ちていく一方なので、こうやって音楽にすることで自分自身が救われてる。それをステージで歌うことで、誰かと共鳴して、もしかしたらその子が救われているかもしれない。そう思うと本当に幸せだなと、最近特に思います。
──美咲さんが音楽をやっている意味が、そこにあるんでしょうね。
美咲:はい。私自身、底抜けに明るい曲に救われたことってないんです。それよりも、歌っている人の超個人的な絶望を歌っている曲に救われてきた。だから私もこういう、誰にもわからないだろう、共感されないだろうと思う部分を掘り下げることを大事にしていて。それが誰かに刺さってくれたらいいなと思っています。
──それこそ、お二人が失恋ソングばかり作るのも、そういう理由なのかもしれないですね。
美咲:うん、そうだと思います。


















