Rockon Social Clubが追求する可能性 堺正章、氣志團、亀梨和也ら幅広いコラボを実現させる職人技

 Rockon Social Clubが10月21日放送の音楽番組『うたコン』(NHK総合)に出演。堺正章とのコラボレーション曲「プンスカピン!」をパフォーマンスしたほか、同バンドの成田昭次(Vo/Gt)、岡本健一(Vo/Gt)、そしてブルー・コメッツのギタリスト・三原綱木がバックバンドを担当し、堺が在籍したザ・スパイダースの曲「あの時君は若かった」(1968年)、さらに天童よしみをゲストボーカルに迎えて美空ひばりの曲「真赤な太陽」(1967年)のカバー演奏を披露した。

『うたコン』で裏切るRockon Social Clubの固定観念

 番組のトップを飾った「あの時君は若かった」は、“若さ”をテーマにした楽曲。それを堺が瑞々しく歌い上げ、成田、岡本、三原は骨太なサウンドで同曲に内包されているエネルギーを表現した。続く「真赤な太陽」ではは、存在感と迫力にあふれた天童のボーカルとせめぎ合うようなギターを響かせる。どちらも約60年前に発表され、今なお多くの人が口ずさむことができる普遍的名曲だが、成田、岡本らギター隊がロック的要素を加えて演奏したことで新鮮な印象を与えていた。

堺正章&Rockon Social Club「プンスカピン!」Music Video

 番組後半では「プンスカピン!」を演奏。グループサウンズ(GS)の代表格だったザ・スパイダースへのリスペクトが伝わってくる曲内容とステージングだった。演奏前、成田が堺について「子どもの頃からのヒーロー」と言い表していたように、堺はザ・スパイダース時代から変わらない軽快なボーカルをしっかりと聴かせ、彼を讃える空気感がバンドの演奏から伝わってきた。

 そんな「プンスカピン!」について、Rockon Social Clubのプロデューサーでもある寺岡呼人(Gt/Ba)は「スパイダースの『バン・バン・バン』(1967年)や『フリフリ』(1965年)のように、言葉に意味はないのに耳に残る曲を作ろうと思った」とコメント。たしかにサビのフレーズ〈プンスカピン!ピピンピン!〉は、一度聴くと記憶に残るもので、ついつい一緒に口ずさんでしまう。人差し指を立て、それを繰り返し突き上げる振り付けも覚えやすく、番組共演者たちも振りをコピーするなどして盛り上がっていた。

 そして何より間奏の振り付けである。顔の前で手を右へ、左へ流していく振り付けが、「バン・バン・バン」とまったく同じなのだ。そういった点でもはっきりとザ・スパイダースへのオマージュが窺えた。

 それにしても驚いたのは、男闘呼組のメンバーが中心となっているRockon Social Clubの音楽的な柔軟さである。男闘呼組をリアルタイムで見てきた者としては、ライダースジャケットにリーゼントヘアの1980年代不良カルチャーを踏襲し、「明日への暴走」(1988年)、「TIME ZONE」(1989年)などワイルドなロックンロールを聴かせる印象が強い。いわば“柔軟”とは真反対の“硬派”が売りのグループだった。今回のコラボはそんなこちら側の固定観念を痛快に裏切ってくれた。

コラボレーションアルバム『THE SHOW MAN』に光る職人技

Rockon Social Club「THE SHOW MAN」全曲ダイジェスト

 11月5日にリリースされるコラボレーションアルバム『THE SHOW MAN』のプロモーション映像を見聴きしても、やはりレンジの広さが分かる。ゲストに迎えたミュージシャンのイメージや音楽性を尊重した多彩な曲を揃えている。

 たとえば氣志團とのコラボ曲「愛死天流」は、1970年代から1980年代の日本の不良ロックのルーツを辿ったようなアメリカンなロカビリーかつスウィンギンなテイストになっており、亀梨和也とのコラボ曲「亀の恩返し」は、2026年2月23日に40歳を迎える後輩・亀梨の心情に寄り添ったメッセージ性あふれる楽曲だ。収録される10曲すべて、まったく異なる味わいがある。Rockon Social Clubの視野の広さに俄然、興味が深まった。

 遡れば、2023年8月には『RISING SUN ROCK FESTIVAL in 2023 EZO』でMISIAのステージに登場し、コラボステージも展開した。同年9月にはMISIAとのコラボ曲「傷だらけの王者」も発表。NHKのラグビーテーマソングということもあって、パワフルな曲調のナンバーだった。この曲は、まさにRockon Social Clubの真骨頂とも言えただろう。

 ロックという核は見失うことなく、さまざまな色合いのナンバーを制作することができるのは、男闘呼組として活動してきた成田、岡本、高橋和也(Vo/Ba)、前田耕陽(Vo/Key)の確かなスキルと豊富な経験、青山英樹(Dr)の技術、そしてJUN SKY WALKER(S)のメンバーとしてはもちろんのこと、数々のアーティストのプロデュースや楽曲提供、共作を行ってきた寺岡の感性が融合したからにほかならない。だからこそ、コラボ相手のアーティスト性を尊重した楽曲を作り上げることができる。バンド名に“Social”を冠しているのも納得だ。ロックミュージックという地盤の上で、いろいろなミュージシャンたちが交わっている様子が浮かぶ。

 Rockon Social Clubのスタイルはダイナミックであり、職人的でもある。それはまるで、さまざまな形のコラボを実現させることで、自分たちのミュージシャンとしての可能性を追求しているようだ。大ベテランばかりのメンバーだが、ゲストミュージシャンを迎えることでそのあり方はどんどんアグレッシブになっているように思える。11月5日リリースの『THE SHOW MAN』はもちろんのこと、さらにその先の展開にも期待が高まる。

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