棚橋弘至「音楽ファンとプロレスは絶対に相性がいい」 引退試合目前に夢見る“100年計画”、新たな魅力の発信へ

棚橋弘至、音楽とプロレスの共通点

 リアルサウンドに棚橋弘至の登場だ! 「音楽サイトにプロレスラー?」と意外に思うかもしれないが、自らを「プロレスの入口」と語る棚橋は「音楽好きこそプロレス会場に足を運ぶべき!」と力説する。

 入場曲、衣装、照明、コール、選手が紡ぐ成長ストーリー……。プロレス会場には、まるでコンサートやライブフェスのような一体感があるというのだ。「プロレスを観れば、大人になるにつれて忘れかけていた喜怒哀楽の解放がある」――それは心と体をリフレッシュさせる効果まである、とも。

 長年プロレス界を牽引し、「疲れない」を信条に駆け抜けてきた“100年に一人の逸材”は、来年1月の引退試合を目前に控えている。「やっぱりさみしい」とこぼしつつも、これからのプロレス界をさらに盛り上げるべく、プロレスの世界へエスコートしてくれた。 「手ぶらで大丈夫。あとは僕たちが楽しませるから」と――。(佐藤結衣)

音楽ファンへ伝えたい魅力「今の生活がもっと楽しくなる可能性が残っている」

棚橋弘至(撮影=池村弘至)

――リアルサウンド音楽は音楽を専門としたサイトになるのですが、ユーザーのなかでも「プロレスをちゃんと観に行ったことはないけれど、棚橋選手の名前は知っている」という人は、たくさんいる印象です。

棚橋弘至(以下、棚橋):そうだと嬉しいです! 僕はいろんなところに“ホイホイ”を仕掛けているのでね。僕をきっかけに、少しでも多くの人にプロレスを好きになってもらいたくて、スポーツ、ファッション、ゲーム、そして音楽と、さまざまな場に顔を出してきました。それは僕自身、高校生の時にプロレスを好きになってから、生活がすごく楽しくなったという経験があるから。だから、プロレスをまだ観に行ったことがない人たちは、今の生活がもっと楽しくなる可能性がまだ残っているんですよ!

――わ、もう楽しくなってきました(笑)。

棚橋:そうでしょう(笑)? 音楽ファンとプロレスって、絶対に相性がいいと思うんですよ。実際に新日本プロレスはロックフェスと何度もコラボしていて、過去には『JOIN ALIVE』や『RADIO CRAZY』で音楽ファンを前に試合をやったこともあるんです。やっぱり音楽ファンの皆さんは盛り上がり方を知っているんですよね。ものすごい熱気でした。だから、音楽好きはまず一度プロレス会場にきていただきたい。そうすれば絶対に楽しませる自信があります!

――2022年にはプロレス入場曲だけのフェス『シンニチイズム ミュージックフェス』も開催されていましたね。

棚橋:プロレス会場も入場曲をはじめとした音楽による演出がすごく大切ですし、選手のマイクパフォーマンスも大きな見どころ。そういう点ではライブとの親和性が高いんですよね。僕は10-FEETが大好きなんですけど、やっぱりライブでのMCにも刺激を受けます。魂や感情のこもった言葉からは感動が生まれるんだな、と。プロレスラーも「この野郎! やってやるぞ!」だけじゃ伝わらないですからね。

――棚橋選手は「100年に一人の逸材」や「疲れない。落ち込まない。諦めない」など、数々の言葉を残してきました。どういうところからそういった言葉が出てくるのでしょうか?

棚橋:もともと読書が好きで、いい表現に出会ったら胸の奥に貯めておくんですよ。そうすると、リング上でマイクを握った瞬間、その扉がパッと開いて出てくる。でも、「100年に一人の逸材」って言ってから、「あ、日本のプロレスの歴史ってまだ100年経ってなかったな」って。向こう数十年、逸材が出てこないことになっちゃう、なんて焦ったこともありました(笑)。

 「疲れない」というのは、かつてアントニオ猪木さんに「お疲れさまでございます」とご挨拶した時に「疲れてねえよ」と言われて、その時の「かっこいい!」という衝撃がずっと残っていて。2012年の東京ドーム大会でオカダ・カズチカから「あなたの時代は終わりました。棚橋さん、お疲れさまでした」って煽られた時に、その扉が急に開いて「悪いな、オカダ。俺は生まれてから疲れたことがないんだ」って。何万人もの前で「疲れたことがない」って言ってしまったんですよ。だから、それ以来“疲れられない十字架”を背負って生きてるんです。

――(笑)。

棚橋:もちろん、僕もやる気が出なくて体が重い時もありますよ。でも、それは“疲れ”ではない。認めないんです。そうすれば、ただただそういう状態っていうことなんですよね。本人が「疲れてない」って言えば、それは疲れではないんですよ。

棚橋弘至(撮影=池村弘至)

――なるほど。“疲れ”という言葉に頼らないことは大きいですね。

棚橋:そうなんです。それに、「疲れた」って言うと、その疲れがまわりの人たちに伝播するんですよね。その場の空気が重くなるじゃないですか。だから、僕は「疲れない」と言い続けることで、周りにエネルギーを渡し続ける。歩く充電器!

――また名言が!

棚橋:扉、開きましたね! 近頃は“ギバー”、“テイカー”という言葉がありますけど、僕は常に“ギバー”でありたいと思ってるんです。プロレスと出会って生きるのが楽しくなった。だから、その好きなことをシェアすることで、もっとみんなにも楽しくなってほしい。なので、ぜひ使ってください。「お疲れさまでした」って言われたら、笑顔で「ありがとう。でも大丈夫、私、疲れてないから!」って(笑)。

 ただ最近、僕が「疲れない」って言い続けているせいか、スタッフから「お疲れ“ない”さまです」って挨拶されるようになってしまって。こっちは「お疲れさまです」って言われる前提で待ち構えていたので、「あ、ああ……」と戸惑ってしまいました。

――(笑)。プロレス初心者としては、プロレスを楽しむためには“お作法”のようなものを知らないといけないのではないか、という不安もあるのですが……。

棚橋:そんなことはないですよ。好きなように観ていただければ大丈夫。僕はいつも言ってるんですよ、「手ぶらできてください。あとは楽しませますから!」って。きっと何を叫んでも、周りの声にかき消される勢いなので、遠慮はいらないと思います!

――なるほど。とはいえ、会場に着いたらまず何をしたらより楽しめるか、ヒントをください!

棚橋:そうですね。僕のことが気になって来場してくださったのなら、まず“棚橋Tシャツ”を着てください。そして、入場曲の「LOVE & ENERGY」が流れたら「GO ACE!」って、メインビジョンの演出やまわりの方々に合わせてコールして盛り上がってくれたら最高ですね。リングに上がると、僕は必ず2カ所のコーナーに立って観客席を眺めるので、僕のTシャツを着ている人を見つけたら必ず視線を送って指を差しますから! もし「いきなり棚橋Tシャツは……」という方は、ぜひ新日本プロレスのライオンマークTシャツを着てください(笑)。そうしたら「あ、この方はハコ推しなんだな」ってわかるので。

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