LUNA SEA J「俺は本当に幸せなやつ」 春畑道哉&ラルク Kenも登壇し“楽器の哲学”を語った『FENDER EXPERIENCE 2025』レポ

10月11日から13日にかけて東京・原宿〜表参道エリアにて行われた、楽器メーカー・Fenderによる体験型イベント『FENDER EXPERIENCE 2025』。3日間にわたってトップアーティストの愛器やFender Custom Shopのマスタービルダーが手がけた希少な楽器の展示、人気アーティストによるライブやトークセッション、ワークショップなど、さまざまな企画が実施された。本稿では、最終日の13日に表参道ヒルズ スペースオーにて行われたふたつのトークセッションの模様をレポートする。

春畑道哉(TUBE)×Ken(L'Arc-en-Ciel)

 春畑道哉とKenが登壇したトークセッションでは、Fenderが2019年に世へ送り出したFender Acoustasonicシリーズについてのトークが繰り広げられた。気心の知れたふたりだけに、フレンドリーな空気感に満ちた和やかなムードのステージを展開。軽妙な掛け合いで大いに観客を楽しませた。

 Acoustasonic(通称:アコスタ)とは、エレクトリックとアコースティックの異なるサウンドキャラクターを1本で奏でることができる、ギター界の大谷翔平とでも呼ぶべきハイブリッドな製品。たとえばライブ現場において、エレクトリックギターを演奏中に「急にここだけアコギを弾く」ようなシーンで重宝するとKenは言う。音の品質も申し分なく、アコスタを爪弾きながら話すふたりが思わず「アコギの音、キレイですよね……!」と漏らすほど。

 そんなAcoustasonicが登場したときの印象について、春畑は「めっちゃナイスアイデアと思った」と振り返る。通常のエレクトリックとは違い、スラム奏法(ボディを叩いてパーカッションのように演奏する手法)が使えるところも面白いと感じたそう。「初めて弾いたときに気に入りすぎちゃって、アコスタでしか弾けない曲をTUBEで2曲作りました(笑)」と話し、それが「BLUE WINGS」「スマイルフラワー」であることを明かした。

 また、ホロウボディ(ボディ内部が空洞になっている構造)ゆえに通常のエレクトリックよりも生音が大きく、なおかつ一般的なアコースティックよりは控えめな音量が「家で弾くのにちょうどいい」とふたりは意見を一致させる。ベッドルームにもアコスタを1本常備しているという春畑は、「アンプとかをそろえなくても単体で気持ちいい音が出るので、これからギターを始めたい人にもいい」と笑顔。一方のKenは「たまに違う楽器を弾くと気分が変わって、そこにいろんなヒントがある」と述べ、1本でさまざまな音を出せるアコスタは新たなアイデアを生むきっかけになり得ることを示唆した。

 ステージの終盤にはふたりによるL'Arc-en-Ciel「虹」などのセッションも披露され、息の合った華麗なプレイで聴衆を魅了。会場に盛大な拍手を巻き起こしたのち、ギター初心者へ向けたメッセージを求められたKenは「買うのがめんどくさかったら、持ってる人に……弾けなくてしまってる人がいると思うから、『貸して!』つって(笑)。そこから始めて、どんどん自分の好きな音のする楽器を選んでいったら、楽しいですよー!」と笑顔をはじけさせた。

 すると春畑が、「よく”Fの壁で挫折“とか聞くんですけど……Fを弾かなきゃいいんですよ(笑)」と身も蓋もなく言い放って爆笑をさらう。冗談めかしてはいたものの、Fコードなど押さえられずともギターは弾けるというのは紛れもない事実である。彼は続けて「つまり誰にでもチャンスはある! ぜひギター楽しんでください」と呼びかけ、ステージを晴れやかに締めくくった。

J(LUNA SEA)

 今年9月にFender Custom Shop製のシグネチャーモデル「J Precision Bass® King's Red Sparkle」および「J Precision Bass® PJ, King's Red Sparkle」の2機種を発表したばかりのJは、「ベースを語る。」と題するトークセッションに登壇した。

 盛大な歓声に迎えられてステージに現れた彼の傍らには、4本のエレクトリックベースが並べられていた。うち2本は前述の新機種で、もう2本は既存のシグネチャーベース「Black Gold」と「Heavy Relic® Champagne Gold」。いずれもFender Custom Shopのマスタービルダーであるグレッグ・フェスラー氏が設計を手がけたもので、Jのベースプレイヤーとしての哲学が余すところなく注入された楽器だ。

 新機種2本のうち1本は、彼が長年愛用してきたプレシジョンベースの新たなカスタムモデル。もう1本はプレシジョンベースにジャズベース用のピックアップを追加した、いわゆる「PJ」と呼ばれる2マイク仕様になっている。後者はJモデルとしては新機軸となる仕様だが、これは大きな会場でライブを行う際により輪郭の際立つ音を追求した結果なのだという。

 というのも、レコーディングや小規模会場でのライブといった環境下では最高の音を出す楽器であっても、大会場のライブで同じように鳴らすのは物理的に困難だからだ。アリーナ会場やドーム会場などで「ベースがよく聴こえない」あるいは「ボワッと広がって聴こえる」というような経験をしたことのある読者も多いことだろう。これについてJは、「ベーシストはいつも『こんな音じゃねえぞ』と思ってる(笑)」と証言する。そこで「それならベース単体でもっと輪郭の出る楽器を使おう」と考えた結果、今回のPJモデルの製作に至ったのだそう。ボディには普段使っているアッシュ材ではなく、JBピックアップとの相性を考慮してアルダー材を採用したとのこと。「それがまんまとハマりました」と会心の表情を浮かべた。

 「King's Red Sparkle」と名づけられたカラーをはじめとするビジュアル面も含め、楽器の出来栄えには相当満足している様子のJ。「これ以上はない」と思っていた既存のシグネチャーモデルをも上回る楽器に仕上がったといい、「ベーシストとして、ミュージシャンとして、ロッカーとして、さらに次のステージへ行けたらいいなと思わせてくれるベースなんですよね」と感慨深げだ。「人生のなかで、果たして自分にちゃんとフィットするものに出会えるだろうかと思うと、これだけ素晴らしい楽器に囲まれている俺は本当に幸せなやつだなって」としみじみ語った。

 そして最後に、楽器初心者へ向けた締めコメントを求められたJ。「僕も自分なりに『こうだろうな、ああだろうな』と思いながら今もベースを弾いています」と切り出した彼は、「ルールはない。皆さんもぜひ機会があれば楽器を手にして、自分なりのやり方で自分なりのサウンドを自分の人生のように奏でてもらえたら」と柔らかな口調で聴衆に語りかけ、にこやかにステージをあとにした。

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