SHE'S、管弦楽団と奏でる極上の大合奏『Sinfonia “Chronicle” #4』 進化した4人と音楽のシンクロ

SHE'S『Sinfonia “Chronicle” #4』 レポ

 SHE'Sが管弦楽団を迎えて贈るスペシャルなライブ『Sinfonia “Chronicle”』も4回目。大阪で1日、東京で2日の計3日間の開催となった今回――管弦楽が存在する原曲をライブでも聴きたいというこちらの欲求を軽く超えてくるダイナミックなライブアレンジでアップデートされた演奏が惜しみなく繰り出された。期待通りのアレンジ、「この曲にストリングスとホーンが入るのか?」という驚きのどちらもあり、しかもアンコール含め全24曲の大盤振る舞い。今回のために数多くの曲を「大胆にアレンジした」と井上竜馬(Vo/Key)が珍しくわざわざ言及したのも納得の進化版“シンクロ”だったのだ。本稿では、東京会場である昭和女子大学人見記念講堂公演の初日を振り返る。

SHE'S(撮影=タマイシンゴ)

 ステージ前のドレープ越しにシルエットが見え、それが開くと13名の大所帯が現れる、それだけでカタルシスを生むオープニングだ。ストリングスは銘苅麻野(1st Vl)、三国茉莉(2nd Vl)、松本有理(Va)、結城貴弘(Vc)、4人とホーン隊の3人、永田こーせー(Sax)、米所裕夢(Tp)、馬場桜佑(Tb)、さらにシンクロでは初めてコーラスの佐々木詩織と土屋飛鳥の2人も参加。彼らは昨年のビルボードライブでその相性のよさを証明して以来のコラボレーションだ。

 序盤はどちらも空高く滑空するような体感をストリングスとホーンが拡張する「Super Bloom」と「追い風」。「追い風」は、「もはやもともとこんなアレンジだったのでは?」と錯覚するほどだ。服部栞汰(Gt)のダイナミックなギターソロも広い音の空間に映える。トライバルビートの「Masquerade」、サスペンスフルなストリングスのイントロが生であることでアンサンブルの緊張感を増す「Raided」、そして「No Gravity」では原曲の空間系のふわっとしたシンセのニュアンスがホーンにかわった面白さに刮目してしまった。

SHE'S(撮影=タマイシンゴ)

 ひとつのブロックを数曲シームレスにつないでいく彼らのスタイルのなかでも、シンクロの音を聴く楽しみは格別。最初のMCで早くもメンバー紹介をしたのは、井上がそれだけ全員の音とアンサンブルに注目してほしかったからなのではないだろうか。初期曲の管弦楽アレンジがナチュラルだったことも特筆モノで、UKロックにおけるストリングスの端正さを感じさせる「フィルム」、リズム隊である広瀬臣吾(Ba)と木村雅人(Dr)の刻むビートとストリングスリフが作るダイナミックな畳み掛けがエモーショナルで、最後のフレーズを井上がロングトーンで決めた「Night Owl」のいい意味での熱さ。その熱さは、バンドサウンドに管弦楽が彩りを加えるというニュアンスではなく、全員が束になってロックナンバーを鳴らす――そういう熱さだったのだ。

井上竜馬(Vo/Key)
井上竜馬(Vo/Key)

 この日、何度かオーディエンスが拍手のタイミングが訪れないまま次の曲が始まる場面を観たが、それぐらい、何か初めてのことを体験するような圧倒的な合奏だったのだ。このブロックでは、井上がまるでひとりきりの空間で独白するような「Silence」で声の重ね部分をコーラスのふたりが繊細に歌い、温かいのに寂しげなストリングスという、深い歌への理解にも大いに揺さぶられた。井上のボーカルが絶好調だったのは、背中を任せられるメンバーの曲の解像度の高さにあったのだと思う。

服部栞汰(Gt)
服部栞汰(Gt)

 今回のハイライトのひとつは、リリースされたばかりの新曲「花雨」の披露だ。SHE'Sには珍しい8ビートが新鮮で、イントロから1番のAメロまでにかすかに聴こえるギターの逆回転の小技がストリングスでもアレンジされていたこと、後半の服部のギターにシューゲイザー的な響きがあったことも印象的だった。演奏を始める前に、井上が亡くなった人を思うと、その人のまわりで花が舞う(という仏教の考え方をもとにした思考)ことからつけたタイトルだと話してくれたことも、優しいだけではないこの曲の背景への理解を深められた。

広瀬臣吾(Ba)
広瀬臣吾(Ba)

 それにしても井上竜馬の歌詞は、出会って、しかしもう会えない人の存在をどう自分に内在させるか――そんなことを多く歌にしてきたことにあらためて気づくのだった。さらに全員が束になってロックバンドとして今回のライブアレンジを鳴らすという側面は、これまで井上の強い祈りの印象が強かった「Your Song」にもあった。また、静謐なナンバーの代名詞「Letter」がストリングスとコーラスの導入で刷新され、小編成の室内楽風のアンサンブルで、ドラムもティンパニのような入れ方だったのも今回ならではの聴きどころだった。ホーンとコーラスの組み合わせは、「この曲でやらなければどの曲で?」ときっと誰もが思ったであろうゴスペルフィールの「Alright」で満足させてくれた。このエンディングに向かう際の井上のロングトーンの力強さは、過去最強だったんじゃないだろうか。

木村雅人(Dr)
木村雅人(Dr)

 井上は「明日やって終わりって、イヤや〜。常にこれ(『Sinfonia “Chronicle”』の編成)がいい」と駄々をこね始めるが、メンバー全員満たされた表情だ。最後のブロックは、ストリングスの入ったナンバーを象徴する「Blue Thermal」や「Over You」、さらに今年の新曲で、タイトルの通りバンドらしさが前面に押し出された「Four」も披露。「オー、オー」のシンガロングも自然に発生する。そして、チアフルなグルーヴを生み出す「Grow Old With Me」と「Dance With Me」の2曲が続くことでオーディエンスの参加する楽しみがホール空間を埋め尽くす。

SHE'S(撮影=タマイシンゴ)

 井上は、この編成とホール会場で受けた感銘を表しながら、「でも、場所じゃなくて大事なのは誰とするか。僕らの大事な大事なイベントなので、またやる時はきてください」とシンプルに言葉を紡ぎ、本編ラストは応援歌を歌わない井上の彼流の人の背中を押す歌である「Memories」が、それこそ13名の応援団が声のかわりに音でエールを贈ったのだった。アンコールの2曲を含め、言葉を失うほど圧倒的な演奏、しみじみ感じ入る演奏、そしてポップソウルな踊れる演奏……。選曲はインディーズ時代から最新曲までと幅広かったが、いつも以上にそのメリハリは自然なものだった。

SHE'S(撮影=タマイシンゴ)

<セットリスト プレイリスト>
https://shes.lnk.to/chronicle4PR

■ツアー情報
『SHE'S UNION Tour 2026
2026年2月22日(日)名古屋 DIAMOND HALL
OPEN 16:30/START 17:30

2026年2月23日(月・祝)大阪BIGCAT
OPEN 17:45/START 18:30

2026年3月2日(月)Zepp Shinjuku (TOKYO)
OPEN 17:30/START 18:30

<チケット>
スタンディング:5,500円(税込/ドリンク代別途)
※年齢制限:未就学児入場不可 小学生以上有料

SHE"Zoo"会員最速先行
受付期間:10月2日(木)21:30〜10月13日(月・祝)23:59
URL:https://fc.she-s.info/feature/union_tour2026

■配信情報
U-NEXT『Sinfonia "Chronicle" #4』
ライブ配信:2025年12月6日(土)19:00~ライブ終了まで
見逃し配信:準備出来次第~2025年12月21日(日)23:59まで
※視聴可能デバイスに関してはこちら:https://t.unext.jp/r/she_s
U-NEXT SHE’S特集はこちら:https://video.unext.jp/browse/feature/FET0012500

■リリース情報
Digital Single『花雨』
配信中

配信URL:https://shes.lnk.to/kauPR
MV:https://youtu.be/MfpwfyJ77TI

SHE'S オフィシャルサイト:http://she-s.info/
X(旧Twitter):https://x.com/SHE_S_official_
Instagram:https://www.instagram.com/she_s_official/
YouTube:https://www.youtube.com/@SHESChannel

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