2025.10.06 18:00

零（L.E.I.）=川村壱馬「すべてのことが無意味に思いました」　音楽を作る原動力、葛藤と重ね合わせた新曲「Crisis」

　THE RAMPAGEの川村壱馬が、零（L.E.I.）名義では3作目となる新曲「Crisis」を10月6日にリリースした。この曲には同じくTHE RAMPAGEで活動する山本彰吾（YAMASHO）をフィーチャー。信頼する仲間と作り上げた楽曲は、生の瀬戸際に立つ人間の切迫した感情を描くという、非常にシリアスな内容となった。今回は零に楽曲制作にまつわる話題を掘り下げてもらった。（宮崎敬太）

自分の本当の思いが全部乗っている

ーー川村壱馬さんのソロプロジェクト・零名義の新曲「Crisis」がリリースされました。グループ活動（THE RAMPAGE）と並行する形で進めていたと思います。

零：グループはグループで頑張るっていうのはもちろんあるんですけど、こっちでは零として自分の音楽性をがっつり出すというか。僕は伝えたい人間なので。この零というプロジェクトには、自分の本当の思いが全部乗っている、全部表現できていると思っています。作り物じゃない感じ。

ーーソロ活動へのモチベーションはいつ頃から生まれたんですか？

零：もうほんとに昔から。デビューして表に立つようになるかなり前から、やりたかったです。人目に触れる立場だからこそ、普通では経験しないような悔しい体験がいっぱいあって。僕は結構どんどん言うタイプではあるのですが、それでもいろんな気持ちが自分の中に蓄積されていって。内面の火は絶えることなく燃え続けていました。

零 L.E.I. / My Precious One (AUDIO Visual)

ーーご自身でトラックを制作された幸福感あふれる「My Presious One」から一転、今回の「Crisis」はかなりダークな楽曲です。

零：僕はヒップホップだけでなく、ロックやゲーム音楽とかも大好きなので、そのミックスされたルーツを表現したのが「My Presious One」でした。ドリル、ジャージー、ハイパーポップの融合というか。逆に自分でも「俺、こういうの作れるんだ」って発見することができました。今回の「Crisis」に関してはYAMASHO（THE RAMPAGE）さんと「どんな感じがいいですか？」と何回かキャッチボールしながらトラックを作っていきました。

ーー「Crisis」のリリックのテーマはどのように決まっていったんですか？

零：なんでこういう曲を作ったのかというと、それこそYAMASHOさんも含めて、僕の家で友達と飲んでいたんです。そこで自分たちの身の回りで起こったことや体験談なども話す中で、たとえば、自分で自分の人生を捨ててしまうほど辛い思いをしている人たちを、引き止めることができるような曲を作りたいですね、みたいな話になったんです。零として最初にコラボする人はYAMASHOさんと決めていたので、こういう感じのトラックとテーマで書くことになりました。

ーー零さんにとって、YAMASHOさんはどんな存在ですか？

零：家族みたいな、親友みたいな、兄弟みたいな。なんかちょっとよくわかんない。めちゃくちゃ仲が良い。「Crisis」のリリース日はYAMASHOさんの誕生日（10月6日）なんです。

ーー「Crisis」には内面の切迫感と、自己否定のループが描かれています。

零：これは自分のリアルと重ね合わせている部分があります。今から2年前ぐらいの時期に僕も初めて足を止めた時期がありました。いっぱいいっぱい、という言葉では軽すぎるくらい。言葉ではうまく表現できないんですけど、足を止めざるを得なくなってしまって、すべてのことが無意味に思いました。だって、何を発信しても何も変わらないし、あげく世界のどこかでは戦争が起こってしまうし。だからって僕が何かできるわけでもない。

ーー自分にも経験がありますが、鬱病の状態の時は、身近な出来事も、ネット上のネガティブな言説も、自分と関係のない世界中の出来事も、すべて並列になってしまい、それらがすべて自己否定につながってしまいます。

零：「Crisis」は第三者として適当に寄り添うとかそういうのじゃなくて、「俺も本当にどん底みたいな感覚を味わったことがある」というか、安易に「わかるよ」と言うつもりもないですけど、実体験をもとに僕なりのやり方でちょっとでも同じ経験をしている人に寄り添えたらな、と思いました。僕のリリックは主観で、YAMASHOさんは第三者の視点で語ってくれています。最後に2人で「鉄の扉この手でこじ開ける」と歌うことで、1ヴァース目の主観的なリリックに没入した辛い心情になった人をこちら側に引き寄せることができるのかなって。

ーー〈どっちがマシか今天秤に賭ける〉はとてもリアルだと思いました。

零：自分自身そういった経験がありつつ、じゃあなんで今もここに座って、こうして話しているのかと言ったら、やっぱり身近な人や先輩とか、あと「この人が連絡くれるんや」って人が声をかけてくれたからなんですよね。この人たちを大事にしたいと思ったし、この人たちを好きでいて間違いなかったと思えた瞬間だったんですよ。

ーーまさに「天秤に賭ける」ですよね。大事な人を悲しませたくないという。

零：その時は気付けないんですけど、あとあと思うとそういう人たちの存在が救いになっていたんだなって。あとは音楽です。僕はAnarchyさんの曲に勇気とエネルギーをもらいました。「ここまで言っていいんだ」っていうか。だから僕は零の活動で自分に蓋をしたくないんです。今はマシにはなりましたけど、僕はコンプレックスだらけの人間で。本当にちょっとずつ自分を変えていきました。今も落ち込むことは多いですけど、無理に蓋をしないで這い上がれそうになるまで待つようにしています。

ーーそういうギリギリの葛藤を描いた楽曲が、零さんにとって、かけがえのない人であるYAMASHOさんの誕生日にリリースされる、というのも意味があるし、素敵ですね。

零：そう言っていただけると嬉しいです。