ヒトリエ、wowakaとVOCALOIDがバンドに与えたもの 『初音ミクシンフォニー』初出演を機に振り返る10年史

「今ではwowakaの曲だけど自分流のやり方でやっちゃってる」(シノダ)

――実際、wowakaさんはヒトリエが始まってから「アンノウン・マザーグース」を2017年に出すまで、しばらくVOCALOIDの曲は作っていませんでしたよね。
シノダ:そうですね。
――あの曲は初音ミクの10周年のタイミングでリリースされたんですが、その間、ヒトリエ、そしてwowakaさんとVOCALOIDの距離感ってどういうものだったんでしょう?
シノダ:あの頃「バンドになろう」って必死だったんですよね。
ゆーまお:うん。あまり覚えてないですけど、wowakaがそういう文化を避けてる節もあった気がするんです。
シノダ:あったかもね。
ゆーまお:だから、「アンノウン・マザーグース」を作るってなったときは「よかったな」って思いました。1回言い始めたら頑固で、誰かが説得するかしない限り戻ってこないタイプですし、VOCALOIDでまた曲を作るっていう壁は結構デカめだったんで。
イガラシ:俺らがどうこう言えることでもなかったしね。
ゆーまお:だから作るって言った時に作るんだと思いました。
――「バンドになろうと必死だった」っていう話がありましたけど、それは今にして思えばどういうことだったんですか?
ゆーまお:たぶんなんですけど、今では俺らみたいな存在って当たり前になって、普通にゴロゴロ出てくるし、誰も何とも思わなくなったじゃないですか。でも俺らは何とも思われてたんですよね。
――確かに、ヒトリエが出てきたときは、ロックシーンのなかでも異端というか、ちょっと特殊な感じがあったかもしれない。
ゆーまお:当時そうだったじゃないですか。それが許せなかったんですよね、俺は。イメージでこいつらは食ってかかってきてんだな、音楽聴いてないんだなっていうのはすごくよくわかっていたので。だからそれが今こうやって市民権を得ていることも正直言って腹が立ってしょうがない。
――なるほど。
ゆーまお:たぶんみんな、俺らとか、米津玄師とかもそうですけど、がんばってた人たちのおかげで結構平気になってる部分があるということを、もうちょっとみんな認識してもいいんじゃないの?とは思ってるんですけど、別に「ありがとう」って言ってほしいわけでもない(笑)。
イガラシ:はははははは!
――wowakaさんは人一倍それを感じていたでしょうね。「ボカロP・wowakaのバンド」って言われることは嫌だったでしょうし。
ゆーまお:そうです。「ボカロっぽいな」ってめっちゃ言われてましたからね。
イガラシ:めちゃくちゃ言われてました。
ゆーまお:「ボカロっぽいってなんだよ」って。
イガラシ:「俺なんだよ」っていう感じだった。
――そこの葛藤と戦いみたいなのが、4人体制で作ったヒトリエの作品にはめちゃくちゃ刻まれてるような感じがしますよね。
シノダ:そことの戦いだったのかな。あの人はずっと自分とファイトしてた。
ゆーまお:音楽のフォーマットをひとつ作っちゃったのは罪深いね。それが自分の首を絞めたね。
シノダ:パイオニアの苦しみを目の前で見てましたよ、ずっと。
――実際、ヒトリエは音楽のフォーマットを作ったと思うんですけど、それは今ヒトリエとして音楽を作る上でも意識しているんですか?
ゆーまお:なんか今思ったんですけど、結構4つ打ちをやっていたと思うんですよ、当時。シーンが4つ打ちばかりになった時代があったけど、その前から彼は4つ打ちをやっていて、なんならあのブームの導入ぐらいだった印象があるんです。だからこそ、そこからシーンは変わっていったけど、俺らは動じずに4つ打ちを続けられている。それは結構強いなと思ってます。
イガラシ:確かに。流行ったからやったわけじゃないからね(笑)。
ゆーまお:そう。時代の流れに乗ってた部分もあると思うんですけど、別に関係ないっていう。だからそのぶん、得意技が他のバンドよりは多いかもしれないとは思ってます。
――うん。時代とかと関係なく自分たちの得意技を増やしてきたんでしょうね。最新アルバムの『Friend Chord』を聴くと、いわゆる「ヒトリエらしさ」みたいなものはもはや関係なくなってきている感じもするし。
シノダ:そうですね。
イガラシ:3人で曲を作るっていうときには「wowakaっぽいことをするのはやめよう」みたいなところがあったんです。もはや自分たちで演奏してレコーディングしたらヒトリエの色にはなるわけだからっていう感じで作り始めて、『Friend Chord』はその3枚目なので。

――そう、もうアルバム3枚作ってきたんですよね。
シノダ:よく作りましたよ、本当に。
――だって、4人で作ったアルバムが4枚じゃないですか。
ゆーまお:そうなんです。もう半々くらいになってきた。メジャーの在籍年数的にもwowakaがいた時期と半々くらいなので。
シノダ:あちゃあ。
ゆーまお:そう、わりかし「あちゃあ」っていう感じ。まあ、時間は進むから自ずとそうなっていくものですけど、もうそこまで来たっていうか。まだ2、3年ぐらいのつもりだったんですけど。
――時間は着実に積み重なっていますね。ライブのセットリストにおける4人で作った曲と3人で作った曲の割合も変わってきましたし。
シノダ:3人で作った曲でも結構ライブでは定番化してくるものが出てきたし。
――もちろんそうですよね。
ゆーまお:何かのときのセットリストで、全員の曲がバランスよく入っていたことがあるんですよ。意識したわけじゃないと思うんですけど、普通に感動的でしたね。「全員の曲がバランスよく入ってる! なんて素晴らしいんだ」と思って。そんなことも最近ありました。
イガラシ:正直、どこかのタイミングまでは「みんなwowakaが作った曲が聴きたいんだろうな」っていう気持ちがあって、そういう曲をやってあげたほうが絶対に喜ぶっていう意識はあったし、今でもそれはあるんですけど、どこかのタイミングで「3人で作った曲から聴き始めた人もいるんだな」と思ったら、自分たちのそういう意識にあまりとらわれないほうがいいかもしれないなって。なので対バン相手とかライブの内容によってフラットに曲を選ぶようになりました。それは続けてきたからだなって思いますね。
――事実、4人でやっていた頃は「wowakaの曲をやるバンド」として活動していたわけですからね。
イガラシ:そうなんですよ。
シノダ:続けようと最初に思ったところも、僕はそれがあったんです。wowakaの曲を演奏できるバンドとしてアーカイブ的にヒトリエを続けられたらいいんじゃないかって。
イガラシ:「アーカイブ」って言い方はすごくシノダっぽいね。
シノダ:そしたら最初のツアーのファイナルぐらいでゆーまおが「曲を書こう」って言い出したから「あれ?」って(笑)。
ゆーまお:誰かが言わないと曲書かなそうだったんで。
シノダ:あれ言われたときの重責感は半端なかった。
――でもそこで3人で曲を書くっていうことと、シノダさんがボーカルとして歌うっていう決断ができたからこそ、ここまで3枚のアルバムができたし、バンドとしても進化できたわけですからね。「アーカイブとしてやっていく」という意識だけだったらここまで続かなかったと思います。
シノダ:そうですね。本当にライブをやればやるほどどんどん変わっていきますし、結局自分の中に落とし込んでいってしまうので。だから今ではwowakaの曲だけど自分流のやり方でやっちゃってるなあって。たまに4人の頃の音源とか聴くと歌い方が全然違うんですよね。「勝手にやっちゃってごめん」みたいな(笑)。それぐらい、どうしても変化していくものなんで。
――ヒトリエとしてはツアーも終わったところですけど、今後についてはどんなイメージを持っていますか?
シノダ:この『初音ミクシンフォニー』があって、来年のLINE CUBEがあって、他にもライブはいっぱい決まっていて。今は曲書いたりしてます。
ゆーまお:あとは日本の市場だけを考える雰囲気が徐々になくなりつつあって。中国で需要が出てきているので、毎年のツアーでは最低でも5、6カ所、いろんな都市を回りたいなって思っています。アジア諸国以外の、ヨーロッパもアメリカも行けたらいいんですけど。そういうふうに視点は変わってきているのかなと思います。
初音ミクシンフォニー2025
札幌、東京公演を収録した開催10周年アニバーサリーCD
2025.10.1(Wed)Release‼︎
『Miku Symphony Live at Sapporo & Tokyo - 10th Anniversary Best -』

10周年アニバーサリーCDオフィシャルサイト:
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/10th/anniversary_best/
■初音ミクシンフォニー2025札幌公演(札幌コンサートホールKitara)・東京公演(サントリーホール)2公演分の全演奏曲収録‼︎
■LPサイズパッケージ仕様の超豪華初回生産限定盤‼︎
『初音ミクシンフォニー2025 10th Anniversary』
【横浜公演】SOLD OUT
2025年10月4日(土)
パシフィコ横浜 国立大ホール
開場17:00/開演18:00
指揮:栗田博文
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:杉並児童合唱団
【神戸公演】SOLD OUT
2025年12月27日(土)
神戸国際会館 こくさいホール
開場17:00/開演18:00
指揮:佐々木新平
演奏:兵庫芸術文化センター管弦楽団
合唱:三田少年少女合唱団
10th Anniversary Special Guest
ヒトリエ

『初音ミクシンフォニー10周年記念スペシャルブック』(仮)
2025年12月27日(土)発売予定
発行:株式会社blueprint
仕様:A4、ソフトカバー、4色、128ページ
予価:6000円+税
2025年10月4日のパシフィコ横浜 国立大ホール公演にて、会場限定の先行予約実施。
予約者には先行して特典の缶バッジ2種が配布される。
詳細:https://realsound.jp/2025/09/post-2154163.html
【会場予約のご注意事項】
※購入冊数は最大で5冊までとさせていただきます。
※ご予約いただいた商品は発売日となる12月27日(土)前後に郵送にてお届けいたします。
※送料として一律400円をいただいております。
※ご予約後のキャンセル、返金は対応不可です。
※ご予約に際しては商品代金全額を当日お預かりさせていただきます。
※商品がお手元に届くまで、この控えは紛失しないようにご注意ください。
※個人情報は予約管理のみ使用させていただき、他の目的では使用いたしません。
※発売予定日が12月1日から12月27日に変更となりました。ご了承ください。
パシフィコ横浜 国立大ホール公演『初音ミクシンフォニー10周年記念スペシャルブック』予約シート:20251004-hatsunemiku-yoyaku

初音ミクシンフォニーコラボカフェ「10th Anniversary Party」
開催期間:2025年10月02日(木) ~ 2025年11月08日(土)
開催時間:カフェ
①11:00~12:15 ②11:30~12:45 ③12:30~13:45 ④13:00~14:15
⑤14:00~15:15 ⑥14:30~15:45 ⑦15:30~16:45 ⑧16:00~17:15
⑨17:00~18:15 ⑩17:30~18:45 ⑪18:30~19:45 ⑫19:00~20:15
⑬20:00~21:15 ⑭20:30~21:45
※75分の完全入替制となります
※最終入店時刻は各回開始10分後です
※各回ラストオーダーは終了時刻の30分前です
開催場所:Cafe Fan Base
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい2-2-1ランドマークプラザ5階
ご予約ページ:https://www.tablecheck.com/shops/cafe-fan-base/reserve
詳細:https://cafefanbase.com/event/mikusymphony2025/

【初音ミクシンフォニー】オフィシャルサイト
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/
【初音ミクシンフォニー】オフィシャルX
https://x.com/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー】オフィシャルグッズ
https://axelstore.jp/mikusymphony
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