FIVE NEW OLD、結成からの15年で向き合い続けた命題 新たな旅の幕開け――ツアー『FiNO is』最終公演振り返る

 FIVE NEW OLDの結成15周年ツアーファイナル公演『15th Anniversary Tour FINAL「FiNO is」-New Chapter-』が、9月15日に東京・東京国際フォーラム ホールCで行われた。本公演は彼らの15周年イヤーを締めくくるメモリアルな一夜であると同時に、16年目以降へ向けた新たなスタートでもある。それは『-New Chapter-』、すなわち“新章”というタイトルにも表れている。バンドにとっての重要な節目となる公演とあって、会場はファンによってびっしりと埋め尽くされた。

 2010年に結成されたFIVE NEW OLD。当初はポップパンクバンドとしてスタートし、次第に「ONE MORE DRIP」(日常にアロマオイルのような彩りを)をコンセプトに、R&Bやソウルミュージックなどの要素を取り入れながらジャンルレスなポップミュージックを奏でる音楽集団へと進化した。2017年にはメジャーデビューを果たし、今年3月19日にはキャリアを総括する初のベストアルバム『FiNO is』をリリース。同日に東京・恵比寿ガーデンホールにて行われたアニバーサリー公演や、6月から8月にかけて全国を巡ったツアー『15th Anniversary Tour「FiNO is」』を通じ、タイトルどおりに「FiNOとは何か」をあらためて提示してきた。それらを経て迎えたのが、この日のツアーファイナルとなる。

 開演時刻を少し回ったところで客電が落とされ、英語のアナウンスとともに穏やかなムードのSEが場内に響きわたった。薄暗いステージにWATARU(Key/Gt)、SHUN(Ba)、HAYATO(Dr)、そしてサポートメンバーの山本健太(Key)、chankeng(Tp)、NAPPI(Tb)、村上大輔(Sax)が姿を現すと、客席からは盛大な拍手と歓声が飛ぶ。彼らが定位置にスタンバイする間も流れ続けるSEは次第にビート感を増していき、そのテンポに合わせたフィルインを契機にバンドが演奏を開始すると、満を持してHIROSHI(Vo/Gt)が颯爽とステージに登場。「始めようぜ、東京!」の高らかな掛け声に導かれ、リズミカルなグリッサンドが印象的な単音リフから始まるグルーヴィなミディアムチューン「Breathin'」でライブは幕を開けた。

HIROSHI(Vo/Gt)
WATARU(Gt/Key)

 序盤は「By Your Side」「Don't Be Someone Else」「Hole」など、彼らのシグネチャーと言えるアダルトオリエンテッドなソウルポップを畳みかけてフロアをゆるやかに踊らせ、手拍子やシンガロング、コール&レスポンスを巻き起こす。前述のとおり、本公演にはホーンセクションが参加しており、厚みのあるサウンドが楽曲の深みと説得力を倍加させる。時には各プレイヤーのソロをフィーチャーしたセッションパートなども挟みつつ、彼らは卓越した演奏技術を惜しみなく繰り出しながら心地好い音楽空間を構築していった。ゆったりと波打つフロアを満足そうな表情で見渡したHIROSHIは伸びやかな歌声を響かせ、抑えの利いたカッティングやエモーショナルなリードプレイでWATARUが彩りを添える。SHUNはツーフィンガーやピック弾き、スラップ、果ては細野晴臣をも彷彿とさせる親指奏法までありとあらゆるスタイルを駆使し、HAYATOの着実かつ華のあるテクニカルなドラミングとともにボトムを支え続けた。

SHUN(Ba)
HAYATO(Dr)

 中盤からはギターポップやネオアコ、シューゲイザー、ドラムンベースなどさまざまな音楽要素を取り入れた多彩な楽曲群が繰り広げられ、バンドが備える音楽性の幅広さと懐の深さを存分に見せつける。「Ghost In My Place」からは再びムーディーなファンクビートを基調としたセットリストに回帰し、ステージは終盤へ。会場全体によるスキャットの大合唱が空気をうねらせた「What's Gonna Be?」や、HAYATOのスリリングなドラムソロを皮切りに披露された「Sunshine」でフロアを沸かせたのち、HIROSHIがあらためてこの日のライブへの思いを語った。

 「この『FiNO is』という物語を終わらせることに、僕自身すごくこだわりを持っていて」と切り出した彼は、「こんなに長いことバンドをやってきて、『もう終わってもいいかな』と思った時もありました。いつ終わってもよかったかもしれないけど、少なくとも(バンドを)やめてたら、今日この時間をみんなと一緒に過ごせなかった。やってきてよかったなと思ってます」と述懐。さらに言葉を続け、「ベストアルバムを出せるバンドになってよかったな、誇らしいなと思うと同時に、後ろばっか振り返ってるのはイヤだなと思って。だから、終わらせて次に行きたい。だから『-New Chapter-』だし、この音楽が鳴りやまない限りはみんなで一緒にいい未来が作れると思う」――そう切実な声色で語り、ホール中から喝采を浴びた。

 その後バンドはビッグスケールなパワーバラード「Moment」、盛大なシンガロングとWATARUの泣きのギターが絡み合うライブ定番曲「Please Please Please」で本編を締めくくり、アンコールに応えてナット・キング・コールの「Smile」をBGMに再登場するやいなや、何の前触れもなく初披露の新曲「Smile」をいきなり投下。軽快でリズミカルなピアノロック調のソウルポップナンバーで大歓声を巻き起こし、バンドがすでに“新章”に突入していることを誇らしげに音で示してみせた。

 この新曲に込めた思いをHIROSHIは「僕の人生観を言葉に、音楽にした曲。人生うまくいかないこともあるけど、最後に笑えていたら勝ちだと思うんですよね。いつか笑える日がきっと来る。人生の幕引きの瞬間に僕は笑っていたい」と表現し、会場をあたたかな空気で満たした。そしてサポートプレイヤーが全員退き、ステージに残った4人はラストナンバーに「Rhythm of Your Heart」をチョイス。バンド4人だけでクールなエレクトロテイストのミディアムチューンをソリッドに奏で、この濃密な一夜に粛々と幕を引いた。

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