『京都大作戦2025』、走り続けるロックバンドの覚悟が輝いた2日間 10-FEETがいるから体感できた“人生の真髄”

「タイヤ1個か2個もげてからの方がむしろスピードが出る。それがバンドマンや!」

 2日目の本編ラスト、10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)はそう叫んでステージを去っていった。かんかん照りの太陽の下、1日あたり2万人が滝のように汗を流し、時には泥まみれになりながらも、なぜ『京都大作戦』に集まるのか。ひとえに、この2日間を通して心と体をフルに使って体感できるものこそがバンドの真髄であり、ちょっと大袈裟に言えば音楽の真髄、そして人生の真髄だからということに尽きる。

TAKUMA(10-FEET)
NAOKI(10-FEET)
KOUICHI(10-FEET)

 『大作戦』とともに歩んできたバンド。『大作戦』に憧れてきたバンド。『大作戦』とはつかず離れずながらも、ここにきて大きな邂逅を迎えたバンド。20年近い歴史の中で『京都大作戦』を中心とした様々なストーリーが生まれている。2日間とも快晴に恵まれた灼熱の太陽が丘(京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ)で、そんな数々のバンドストーリーが輝いたのが、7月5日・6日に開催された『京都大作戦2025〜暑さも雨もお茶のこ祭祭〜』だった(以下、2日間のステージを順不同で振り返っていく)。

SUPER BEAVERからAge Factoryまで、“丘越え”バンドの揺るぎない強さ

 牛若ノ舞台から源氏ノ舞台へのスケールアップーーいわゆる“丘越え”を果たしたバンドたちが朝イチからアツいライブを響かせた。初日のAge Factoryは「2025年。形なんか意味ねえ、お前がすべて!」という清水英介(Vo/Gt)の叫びで太陽が丘を叩き起こす。「これは夢じゃない。そこにいるんだろ!?」と一人ひとりに言葉を突き刺した「See you in my dream」に続き、全員で拳を高く掲げた「GOLD」では、リリース時に思い描いていたであろう巨大な景色がしっかりと眼前に広がった。ストイックな音楽性にさらなる磨きがかかってきたここ数年のAge Factoryだが、彼らの根底にある“怒り”や“熱情”はまだまだ多くの人と繋がり得るポテンシャルを秘めている。清水は「みんなのおかげでここにいる」とも語ったが、それだけ多くのリスナーがシンパシーを感じてきたということだ。

Age Factory

 2日目のバックドロップシンデレラは「結成19年、こんなにたくさんの人の前でやるの初めて! 『京都大作戦』ヤバすぎるでしょ!」と源氏ノ舞台に立つ喜びを爆発させながら、「もっといろんな人たちの体と心を踊らせるようなバンドになるよ!」と20周年の先へ向かう志を露わにした(「フェスだして」の大合唱には感慨深いものがあった)。続くSHANKも、庵原将平(Vo/Ba)が「牛若の守り神から、ふざけたMCと下ネタだけでついに源氏に戻ってきました!」「(ステージの)大小問わず出られればいいと思ってたけど『大作戦』は別」という素直な想いを吐露し、「Mind games」や「Wake Up Call」でスカやレゲエを気持ちいい歌メロに乗せて響かせた。早川尚希(Dr/Cho)が、KOUICHI(Dr/Cho)療養時の10-FEETのサポートドラマーを務めたことも記憶に新しいが、地元を拠点にして“ここだけのフェス”を開催し続けている両者にはアツい信頼が垣間見える。

バックドロップシンデレラ

SHANK

 そして『大作戦』に憧れを抱く若者たちの物語は、牛若ノ舞台でこそ蠢く。広島発の3ピース、the奥歯'sのアサベシュント(Vo/Gt)は、どうしようもなく寂しい夜に10-FEET「アンテナラスト」に救われたという。「夏休み」の中に〈言葉足らずのあなたの言葉〉という歌詞を混ぜ込みながら、「ロックに騙され続けろ!」と叫ぶピュアで懸命な姿に、初見のオーディエンスもすっかり魅了されていた。また、2021年に京都で結成された「ツインボーカルはちゃめちゃロックバンド」ことカライドスコープは、6年前に初めて観た『大作戦』の舞台にこうして立つ喜びを爆発させながら、「WAYA★WAYA」や「ずっきゅん♡」などフックのあるキャッチーなパンクで盛り上げる。自然とシンガロングが起こった「LOVE ME MORE」では〈平凡な愛より熱い愛を〉〈時計の針も無視して踊ろう〉と“今この瞬間”に懸ける想いをメロディに託して歌った。

the奥歯's

カライドスコープ

 同じく京都発 Brown Basketは結成9年で初出演。「出られたのは嬉しいけど、お前らと一緒にもっと行きたい場所がある」と言ってかき鳴らされた「BY MY SIDE」はエモーショナルの極みだったし、「いつか『大作戦』に帰ってくるから、今日のライブを覚えといてくれよ」と手渡された「リメンバーユー」は約束の証そのものだった。さらに、3度目の出演にして丘越えに期待したいKOTORIは、「主催フェスは気合い入りますよ。先輩ぶっ倒さなきゃいけないんで」「レジェンドばっかりだけど負けてらんねえ。新しい風吹かせましょう」と沸き上がる言葉を口にしながら、「ジャズマスター」や「素晴らしい世界」で合唱を巻き起こし、不安や孤独を抱えながらも確かに今このステージに立っているという実感を歌い上げ、KOTORIらしさ全開で魅了した。

Brown Basket

KOTORI

 2014年からほぼ2年に1回のペースで出演し、今年は2年連続出演となるSUPER BEAVERもまた、丘越えを果たしてきたストーリーを持つ。どんなに大勢の前に立っても、いや、大勢の前に立つほど、彼らの原点である“一人ひとりに向けて音楽を鳴らす”という信念はむしろ強まっていくばかり。「俺たちがこの場所に立って音楽をやる意味なんて、あなたと一対一で対峙すること以外考えられない」「現実逃避のための音楽なんてやるつもりはない。現実としっかり向き合うための音楽を」ーーそう堂々と宣言する渋谷龍太(Vo)の姿はやはり頼もしい。時代や社会や生活、すなわち“今を生きるあなた”と地続きになり、本当の意味で人生を動かすきっかけになる音楽。忙しない時代に忘れかけてしまうような「正攻法」を地で行くSUPER BEAVERだからこそ、“一つ一つの灯り”を見逃さない「主人公」という歌が歌えるのだろう。「人として」で幕を開けた35分間は、〈僕は笑顔の 渦を作りたい〉と歌う「切望」、そして〈抗ってやろうぜ〉と叫ぶ「さよなら絶望」で締め括られた。まさにSUPER BEAVERの音楽とは何たるかを真っ向から証明してみせたステージだった。

SUPER BEAVER

 『大作戦』とともに歩んできたバンドは数知れず。5年連続出演を果たしているほか、過去にも多くの伝説を残してきたKen Yokoyamaは「予想が立ちそうな曲をあまりやらなくなったのよ。意地悪でいいかなと思ってさ」と、あくまでその時々にやりたい曲で楽しませるスタンスを見せつつ、「These Magic Words」や「May16」といったメロディアスかつビートの立った近年リリースの楽曲で盛り上げ、「大丈夫だ」と言わんばかりの笑顔でサムズアップを見せた。さらに、「1年に1回しかやらない曲」と言って「ヒトリセカイ」(10-FEET)を披露したdustboxも、「VIBES BY VIBES」(10-FEET)からスタートさせつつ「ここのバイブスに合うはず!」と言ってヘヴィな新曲「爛々ラプソディ」で踊らせたWANIMAも、「Fantasista」(Dragon Ash)・「super stomper」(10-FEET)からの「FLY AGAIN」でミクスチャー史を一気に接続し、スケールの大きさで魅了したMAN WITH A MISSIONも、初出演以降長きにわたって『大作戦』を支え続けているファミリーたち。それぞれ10-FEETのカバーを美味しいところに交えたセットリストでリスペクトを示した。

Ken Yokoyama
dustbox
WANIMA
MAN WITH A MISSION

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