八木海莉⚡電音遊戯に初インタビュー ユニット結成の理由、『ACTION!EP』を鋭児 藤田・市原とともに語る

シンガーソングライターの八木海莉による新プロジェクト・八木海莉⚡電音遊戯の1st EP『ACTION!EP』が完成した。八木が自身のルーツである電子音楽を主軸としたアイデアや、音楽観を拡張する手段とパートナーを探していた際に、鋭児の藤田聖史(Key)、市原太郎(Dr)と再開し始動した八木海莉⚡電音遊戯は、まさに“電音”で“遊戯”するエレクトロユニットだ。
ライブではDJセットやDJコントローラー︎、SPDを藤田と市原が操り、八木の温度のある歌声とともに、さながらクラブのような熱狂を生み出す。『ACTION!EP』の発売前に出演したライブイベント『Parallel Konnection』ではリリース前の曲にも関わらず楽曲のキャッチーさと3人の楽しむ姿につられて、早速キラーチューンのような盛り上がりを生み出しているのも印象的だった。そんな八木海莉⚡️電音遊戯について、また、互いに学びがあるという八木海莉⚡電音遊戯の楽曲制作について、八木、藤田、市原の3人に話を聞いた。(小林千絵)
「電音遊戯を始めてよかったなと思っています」(八木)
ーーそもそも八木海莉⚡電音遊戯はどのようにして生まれたプロジェクトなのでしょうか?
八木海莉(以下、八木):ソロで曲を作っていく中で、ひとりではできないことも多いし、まだまだ知らないこともたくさんあると感じていました。そこでいろいろなアーティストさんとコラボさせていただいていたんですが、もっと定期的に会って、コミュニケーションを深めながら音楽を作る仲間が欲しいなと思っていたんです。そこでふたりを紹介してもらいました。
藤田聖史(以下、藤田):ちょうどバンド(鋭児)がお休み期間に入って時間ができたタイミングに連絡をもらって、「これはぜひやりたい!」と思いました。これまでは同世代の男5人︎でやっていたので、一回りくらい年下の女の子と一緒にやるのは初めてだったんですけど、今すごく楽しく活動できています。
市原太郎(以下、市原):僕はもともと八木ちゃんのサポートをしているミュージシャンが知り合いで、八木ちゃんのソロのライブも2回くらい観に行っていたんです。その時に「歌詞めっちゃ面白いね」みたいなことを話していたら、スタッフの方から「こういうプロジェクトを考えているんだけど、やってみない?」と連絡をもらって、「めちゃくちゃやってみたいです!」とお返事をしました。
八木:鋭児のことは知っていて、「攻めたことしている人たちだな」というイメージだったんですけど、実際に会ってみたら……今日も会っていただいてお分かりいただける通り、すごくユニークな人たちで(笑)。そのおかげもあって、なかなか人に対して心を開きにくい自分でも早い段階で仲良くなれたんです。すごくいい出会いができたなと思いました。

ーーどういうところから仲良くなったのでしょうか? 好きな音楽の話をしたのか、やりたい音楽を話したのか、それとも先に音を合わせてみたのか。
八木:まずは「何でもない話をしてみよう」という会を開いたんです、会議室で。そしたら、聖史くんのトークが止まらなくて(笑)。好きな映画や好きな音楽の話もしたんですけど、その流れで突然自分自身の人生を語り始めて……。
藤田:何の印象にも残らないよりは、何か面白いエピソードを話したほうがいいと思って。まぁめちゃくちゃスベったんですけど(笑)。
八木:30分ぐらい、ずっとひとりで喋っていて(笑)。
藤田:八木さんとスタッフさんの顔が“無”でした(笑)。だから、正直ミスったなと思いましたけど……そのあと徐々に仲良くなれてよかったです。
八木:でも、バイバイする時にはもう敬語じゃなくなっていたので「やっていけそうだな、どうなるかわからないけど」と思っていました。
藤田:大丈夫だったんだ……!

ーー(笑)。市原さんはその時にどんなことを話したんですか?
市原:僕は聖史の話をみんなと一緒に聞いていました。僕は慣れているので(笑)。でもたしかに、帰り道にふたりで「ちょっと話しすぎたかな」「ヤバいかな」みたいなことを話した記憶があります(笑)。
八木:そのあと、3人でスタジオに入りました。セッションみたいな感じで、ふたりがドラムを叩いてキーボードを弾いて、自分がメロを乗せていくというのをやってみたんですけど、人前でメロを作るのは初めてだったのでめちゃくちゃ緊張して。でもやってみたら、すごくいい曲ができたんです。そこで「いけるかも!」って確信みたいなものを得られました。
市原:今でも、渡したトラックに八木ちゃんが鼻歌をのせながら曲を作っていくみたいなことも多いし、最初にあのセッションをやったことがよかったなと、今振り返ると思います。
ーーこのユニットの音楽性はどのように決まったのでしょうか?
八木:私はもともとボカロや電子音楽が好きなのですが、ソロではそのやり方がわからなくて。いつか電子音楽やインターネット文化みたいなものを取り入れたいなと思っていたところから、スタッフさんに「こういうプロジェクトをやってみない?」と提案をしていただきました。
藤田:僕はちょうどバンドが活動休止をしている時に、VOCALOIDに興味を持ち始めていたんですよ。せっかく時間もあるし、今まで触れたことのないものに挑戦してみようと思って。初音ミクなどのVOCALOIDを買って、いろいろ作っていたんです。そんな中でこのプロジェクトの話がきたので、この音楽性にはだいぶスムーズに入っていけましたね。
市原:エレクトロは鋭児の時から聖史がときどき作ってきていましたけど、ボカロっぽいものは電音遊戯が始まってから初めて触れました。だからこそ、知ったかぶりはしたくなかったので、逆にそういうところに自分のニュアンスをどう入れるかを考えるようにしています。

ーー藤田さん、市原さんは、八木さんのボーカルや歌詞、メロディなどに対してどのような印象を持っていますか?
藤田:まず、歌がめちゃくちゃ上手い。今まで一緒にやってきた人類の中でずば抜けて上手くて。初音ミクで作った曲を、八木さんが歌うと魂が宿るというか。それがすごいんですよ、毎回感動します。全然慣れない。毎回「めちゃくちゃうま!」ってなります。
八木:いつもこうやって反応してくれて、毎回「本当にありがとう」って言ってくれるんですよ。トラックはみんなで作っているんですけど、スタートになる部分を作ってくれるのはふたり(藤田、市原)なので、時々自分の役割が不安になることもあって。でも、歌を入れると毎回こうして褒めてくれるので、素直に嬉しいです。
市原:もちろん歌の上手さもすごいなと思うんですけど、僕は特に「面白い歌詞を書く人だな」と思っていて。ちょっと天邪鬼な感じというか。もともとソロの「お茶でも飲んで」がすごいなと思っていたんですけど、一緒に作ってみると、「その目線でくるんだ」という驚きがあって、いつも楽しみにしています。
ーー八木さんは電音遊戯をやりながらも、八木海莉としてのソロの活動も並行していますよね。そのふたつを、ご自身ではどのように分けているのでしょうか?
八木:ソロで作っている曲は内省的だったり影の部分が多かったりするんですけど、電音遊戯の曲は前を向いていることが多いですね。電音遊戯は「踊ってほしい」とか、「こう聴いてほしい」「こうあってほしい」という意図が明るい方向にあるので、どの曲にもキラキラした要素を出すようにしています。

ーーちなみに、どちらもやっているのはどうしてなのでしょうか? たとえば、ソロでこういう音楽をやるということもできなくはないと思うのですが。
八木:単純に“やりたいこと”が多いんです。「これも好きだし、あれも好き」ってなった時に、どちらかだけを選ぶより、どちらもやりたいから欲張っているっていう。しかもそれがひとりで全部できるならソロで欲張っていたと思うんですけど、電音遊戯はひとりではできなかったから。
ーー先ほど「自分の役割が不安になる」ということも話されていましたが、みんなで一緒に曲を作るという作業も、ソロとはまた違いますよね。そのあたりはどう感じていますか?
八木:ひとりではできなかったことや、自分だけでは出てこなかったものが生まれていくことが面白いですし、「こんな作り方もあるんだ」っていう発見も多いです。3人ともLogicというソフトウェアを使っているので「こんな機能あるんだ!」っていう勉強にもなりますし(笑)。本当に、電音遊戯を始めてよかったなと思っています。




















