夏にTHREE1989を聴きたくなる理由がここにある――『2089』で描く時代もジャンルも超えた極上のポップス

豊潤な楽曲が詰め込まれた『2089』の洒脱な構成美

 そしてめでたいことに、すこぶる夏情緒に満ちたアルバムなのである。特にリード曲にもなっている1曲目「Have A Nice Cry!」の威力たるや絶大で、さながら柑橘を剥いたときのような瑞々しい躍動がのっけから無邪気に届けられる。サウンドもボーカルも気持ちいいぐらいに晴れやかだが、リリック面で少しばかり愁いを機能させることで、「涙を肯定するメッセージ」にリアリティを持たせるという心憎い工夫も。なんでもこの楽曲は、過去の持ち歌の要素をメンバー間で分析した末に完成した楽曲とのこと。どおりですんなりと沁み入るわけだ。

Have a Nice Cry ! / THREE1989 - Music Video

 続く楽曲たちも実に豊潤で、土岐麻子との甘美なハーモニーで魅せる「Sweet Sweet」、THREE1989の得意ジャンル・2ステップを用いた「瀬戸際ミーツガール」、iriや松下洸平らを手掛けるESME MORIとのジャージークラブなコライト作「閃光ループ」など、ゴージャスな制作体制と持ち前の遊び心が生んだキラーチューンの数々が、えも言われぬ幸福感を連れて次から次に押し寄せてくる。魅惑のワンナイトラブをSUKISHAと協奏する「泡沫ジレンマ」も、それに連なる静謐なカタストロフィ「Last Tape」も、朗らかに名曲を謳歌するTokimeki Recordsとのカバー「Down Town」も、まるで夏の思い出を一つひとつ回顧するように情緒的な流れを形成していてとても味わい深い。収録曲すべてが夏をテーマにしているわけではないものの、ここまで構成の妙が成立しているとなると、本作も幾度のリピートに耐えうる強力なアルバムであることは明白だろう。

 アルバムタイトルの『2089』は、メンバー3人の生まれ年である1989年から100年後、すなわち2089年の時代でも聴かれることを願って命名された。遠い将来、一人でも多くの人を虜にしている未来に思いを馳せつつ、まずは今夏、猛烈な暑さをも上回るTHREE1989のエネルギーを、本作で存分に堪能しようと思う。

THREE1989 『2089』

■リリース情報
THREE1989
 『2089』
 2025年7月2日配信リリース

<収録曲>
01. Have a Nice Cry !  
02. Sweet Sweet feat. 土岐麻子
03. アイイロ
04. 瀬戸際ミーツガール
05. 閃光ループ
06. 泡沫ジレンマ feat. SUKISHA
07. Last Tape
08. Down Town (Prod. Tokimeki Records)
09. 人生タクシー

■関連リンク
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