いしわたり淳治との対話が導いた新しい自分 夜々、「I Hope」で向かった音楽の本質を語る

夜々が見つめた音楽の本質と自分

 2025年1月、「Lonely Night」でデビューを果たしたシンガーソングライター・夜々。デビューからおよそ半年、その間にライブを重ね、2曲目となる「センセーショナル少女」もリリース。夜々の表現は着実に広がり続けている。そんななか、3曲目となる楽曲が6月18日にリリースされた。

 「I Hope」と題されたこの曲では、歌詞プロデュースとしていしわたり淳治が参加。彼との対話の中で生まれた歌詞は、これまでの夜々の楽曲とは明らかに違うキャラクターを持ったものとなった。散りばめられた具体的なワードがリスナーの想像を喚起し、今まで以上に夜々という“人間”を近く感じるこの曲は、彼女自身にとっても“夜々”という存在、そして音楽そのものとあらためて向き合う大きなきっかけとなったようだ。以下のインタビューで「悟りを開いた」と彼女は言っているが、それがどういうことなのか、ぜひその目と耳で確かめてほしい。(小川智宏)

デビューから半年――確立した自分のなかの“夜々”

夜々(撮影=篠田理恵)

――デビューから半年が経ちましたが、ここまでやってきてどんなことを感じましたか?

夜々:本当にありがたいことに、どんどん日々が過ぎていって、気がついたらもう6月になっていたっていう気持ちです。充実していたからだと思うんですけど、もう年末の気分(笑)。

――それぐらい濃い時間を過ごしてきたということですよね。印象に残ってる出来事はありますか?

夜々:デビューしてからの1カ月間は初のラジオ出演があったり、生放送の音楽番組に出たりして。怒涛のデビュー1カ月目だったので、今でも昨日のことかのように思い出しますね。

――夜々として活動する、夜々として生きていくということに対する実感は強くなりました?

夜々:アー写を見た方からは夜々はミステリアスだと思われるみたいで。でも私、人と話すのが好きなんです。ラジオのキャンペーンとかに行ったりすると「結構喋るんですね」というようなお言葉をいただくことが多くて。夜々として生きるのも楽しいし、夜々の“中身”の人として生きるのも楽しいので、最近はちょうどいい、マイルドな感じになってきました。自分のなかで夜々としての確立したものができてきましたね。

――ライブもいろいろやってきましたけど、どうですか?

夜々:いちばん最初は、今年1月の下北沢DaisyBarでのライブだったんですけど、その時は本当に緊張しました。ステージに立つとみんなが私のことをまっすぐに見てくれるから、その圧にやられちゃって、結構ふわふわしたMCをしちゃった記憶があります(笑)。でも、それからたくさんのライブに出させてもらって、回数を重ねるごとにステージが楽しいって思えるようになってきました。これは経験を重ねたからだと思っています。

――その“楽しさ”っていうのは、どういう楽しさですか?

夜々:今までは「聴いてもらうからには、何か爪痕を残さなきゃ!」って気持ちが先走って焦ったりしていたんですけど、ライブを観にきてくれる人たちは音楽が好きで、大切な時間を使って足を運んでくださっているんだなって思ったら、「私が緊張してどうするの!」って。私も音楽が好きだからアーティストになりたかったし、アーティストになったからこそ表現できる場所がある。ライブのステージは自分の夢が叶っている場所なんだなって改めて気づいて「だったら楽しまなきゃ!」って考えるようになりました。

――ライブだと当然、目の前にお客さんがいるじゃないですか。もちろんまだまだ「初めまして」の人もたくさんいると思うんですけど、みんな夜々の歌を聴きたいと思って足を運んでくれているわけですよね。そういう人たちと向き合った時に、どんなことを思いますか?

夜々:この前、初めて『SAKAE SP-RING 2025』に出させていただいて、初めて名古屋でライブをやったんです。「お客さん、本当にきてくれるのかな?」って少し不安もあったんですけど、客席が埋まって立つ方もいるくらい観にきてくださって。しかも、みなさん一緒に熱唱してくれたりして、すごくあたたかい空間だったんです。だから、自ずと私もお客さんからエネルギーをもらって、こっちからもお返しするようなライブができたんです。私も楽しむけれど、みんなのことをとにかく楽しませたいっていう気持ちを重視して、ライブには挑んでます。

夜々(撮影=篠田理恵)

――そうやって、お客さんと一緒に歌うとか、一緒に盛り上がるっていうライブをやるようになるなんて、ご自身で想像していました?

夜々:全然していなかったです。それこそ1曲目に「Lonely Night」をリリースして、2曲目が「センセーショナル少女」で。「センセーショナル少女」は、ライブで歌いたい楽曲として作ったんです。でも、出す曲ごとにジャンルが違うことに対して「私はこのままでいいのかな」と悩んだ時期もありました。でも、やっぱりみんなと一緒に盛り上がれる曲を作って良かったなと思いましたし、これからもそういう曲を作っていきたいです。最近はそうやって、新しい細胞がどんどん生まれてきてる気がします。本当に悟りを開きましたね。

――悟り開くの早いなあ(笑)。でも、覚醒している感覚はありそうですね。

夜々:はい!日に日に。自分のなかでは、新しい感情とか気持ちの捉え方が生まれてきています。もちろん悩んだ時期もあったし、へこんじゃってネガティブな時もあったんですけど、それを乗り越えて、今やっと自分らしさ――自分のなりたい“夜々”としてのアーティスト像みたいなものに、ピントが合ってきたのかなと思います。

――先ほどもちらっと話してくれましたが、どういうところで悩んでいたんですか?

夜々:最初は「Lonley Night」しかない状況で、ライブに呼んでいただけることはすごく嬉しかったけど、「まだ1曲しかないのにどんなライブしたらいいんだろう」とか、そのあとに出した楽曲も全然違うジャンルだから、「夜々といえばこういうジャンルだよね」っていうのがない状況で「どういうパフォーマンスをしたらいいんだろう?」って、すごく悩んだ時期がありました。3月、4月は自分のなかで「うえーん!」ってなっていた時期だったんですけど、そこからいろいろ経て、「楽しもう!」というところにたどり着きました。大好きな音楽ができてるんだから、悩むことも楽しみに変えよう、って。私はそもそもポジティブな人間ではあるんですけど、一度「えっ?」と戸惑ってしまうと、急にドーンと落ち込んじゃうタイプ。それが“人間・夜々”なんです。だから、最近は本当の自分になってきた気がします。

――なるほど。「夜々ってこういう人だよね」とか「こういうキャラクターだよね」っていうのを決めたほうが、もしかしたら悩まなくていいのかもしれないけど――。

夜々:そうなんです。本当の自分が混じった“夜々”がいるので、どうしたらいいのかわからない葛藤があったんです。でも、最近はどんどん“私”が溶け込んできた感じがします。

――今回の「I Hope」を聴いて、すごくそれを感じました。今まで2曲出してきましたが、今回はちょっと違いますよね。

夜々:デビューから6カ月しか経ってないんですけど、歌声も悟ってる感じがしますよね。なんて表現したらいいのかわからないんですけど、自分が変化していっているのを感じます。いい曲だな、って思えます(笑)。

――すごくいい曲だし、これまでの曲と比べても夜々さんという人間を感じるというか。歌声もそうだし、歌詞とかサウンドも含めて生の人間らしさみたいなのがちゃんと注ぎ込まれた曲になった気がします。

夜々:ありがとうございます。「I Hope」は、夜々としてデビューしてから制作に取り組んだ楽曲なので、“夜々”と“私”が中和した曲かなと思います。

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