重音テトに代わるネクストスターは誰? 雨衣、足立レイ、洛天依……2025年下半期注目の音声合成ソフトたち

 まもなく2025年も折り返しを迎える中、上半期のVOCALOIDシーンはさまざまなトピックスが飛び交っていた印象だ。もはや恒例のイベントになりつつある『The VOCALOID Collection ~2025 Winter~』(以下、『ボカコレ2025冬』)や、新たな国際音楽賞『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』における「最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞」の設立、さらに、Billboard JAPANの上半期チャートにて『ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20』も発表され、改めて今年上半期を彩った楽曲群をチェックするリスナーも多くいたことだろう。

 先述のイベントやチャートなどでピックアップされたような“流行りのボカロ曲”を構成するファクターには、すでに各所でさまざまな視点から言及されている。その中から使用ソフトの傾向を挙げるとするならば、昨年に引き続きSynthesizer V(以下、SV)重音テトの安定した人気、並びに初音ミク&重音テトコンビの起用が特に支持を集めていたと言える。

 カルチャー内に一定の周期で多彩な“歌姫”たちによる流行が生まれる中、現在すでにシーンでは次なるスターの誕生を注視するリスナーも大勢いることだろう。そこで本稿では、これからのカルチャーを牽引する“時代の寵児”となり得る機運を秘めた音声合成ソフトをピックアップ。今後のシーン予想も含めて、今注目を集めるVOCALOIDシーンのキャラクターたちを紹介しようと思う。

“最注目株”VoiSonaの新星 バーチャルシンガー・雨衣

 2025年後半に新たな潮流を生み出す可能性を持つ、おそらく今最もホットな存在。それはやはり、音声創作ソフトウェア・VoiSonaの新星として5月末に登場したばかりのバーチャルシンガー・雨衣である。人気イラストレーターでありYouTubeチャンネル登録者数100万人超のVTuber・しぐれういの歌声を元に作られたソフトとなる彼女。本人の声色の響きを残しつつも、独自の個性を持つ愛らしい歌唱が特徴的なキャラクターだ。

 デモソングなどの公開時から一部界隈ではすでに注目を集めていたが、雨衣のリリース翌日という驚異のスピードで投稿されたボカロP・吉本おじさんによる楽曲「お返事まだカナ💦❓おじさん構文😁❗️」が、投稿から約1週間でYouTube再生100万回を突破。SNSを中心に時折言及される“おじさん構文”を題材とし、雨衣のキャラクター性や幅広いインターネット/スマホ文化オマージュを盛り込んだMVも人気の一因となり、楽曲はまだまだ怒涛の勢いで再生数を伸ばしている。

お返事まだカナ💦❓おじさん構文😁❗️ / 雨衣

 このほかにも、WONDERFUL★OPPORTUNITY!「てんしかあくまか」やOSTER project「ストレートネック」など、生みの親・しぐれうい本人を彷彿とさせるキャラクター性を持たせた楽曲もシーンでは評判の様子。今後もまだまだリスナーの裾野を広げる余地を残していると言えるだろう。

UTAU再評価の兆し、完全なる機械の歌姫・足立レイ

 また、先述の重音テトのリバイバルも関連してか、長年一部クリエイターから熱烈な支持を集め続けている歌声合成ソフトウェア・UTAUも、ここ数年間で改めて注目度が高まっているように思う。近年のシーンを振り返ると、潮流の先駆けにはおそらく完全なる機械の歌姫・足立レイの存在もあるに違いないだろう。

熱異常 / いよわ feat.足立レイ(Heat abnormal / Iyowa feat.Adachi Rei)

 初音ミクへの憧憬から個人が開発した等身大ヒューマノイドロボットを起点とし、Sin波を元素材とする完全な人工音声を持つキャラクター・足立レイ。彼女の持つ特異なSF的背景に魅了されるクリエイターも多く、『The VOCALOID Collection ~2022 Autumn~』にてTOP100部門優勝を果たした、いよわ「熱異常」を契機としその認知は一気に拡大。以降、彼女を起用した作品も徐々にシーンで散見され始め、今年開催の『ボカコレ2025冬』ではTOP100/ルーキー両部門において上位20曲に彼女の楽曲が複数食い込む結果になった。重音テトのような爆発的躍進とはいかずとも、作り手の中には足立レイという選択肢が明確に浸透し始めている、そんな印象だ。

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