森口博子と『GUNDAM SONG COVERS』――“最終章”のその先へ! デビュー40年目の今、挑戦と感謝を語る

みんなが40年続けさせてくれた

――今回デビュー曲の「水の星へ愛をこめて」をオーケストラアレンジで歌うにあたって、何か意識したことはありましたか?

森口:この曲も以前に(コンサートで)オーケストラの演奏をバックに歌ったことはあるのですが、歌い方としてはオリジナルでのパーンと鳴らすように歌う箇所を、あえてもっとふくよかな響かせ方にして、全体的に大きくて壮大になるように意識しました。〈呼び合う…〉のところも、いつもよりまろやかな感じで歌っていて。

――おそらく、森口さんがこれまでに最も多い回数歌ってきた楽曲だと思うのですが、40年歌ってきたなかで楽曲に対する受け止め方に変化はありましたか?

森口:変わりました。デビュー当時の私は17歳で、レコーディングの時にディレクターさんから教わるまで、“水の星”が“地球”を意味することに気づかなかったくらいで(笑)。とにかく緊張していて、ディレクターさんの「上手に歌おうと思わなくていいよ」「言葉を大事に語尾を丁寧に歌ってね」という言葉を一生懸命守りつつ、私なりに歌っていました。あの時は「地球に愛を込めて歌う」というのも漠然としかわかっていませんでした。だけど、年齢を重ねるうちに理解できるようになって、デビューから30年経った時にようやく、歌詞を書いてくださった売野雅勇さんにお会いできたんです。

――そうだったんですね。

森口:その時に、1番Aメロの〈蒼く眠る水の星にそっと〉という歌詞は、「地球は青かった」という言葉を残したガガーリンが宇宙から撮影した地球の写真を見て生まれた、というお話を聞いて、自分のなかでより明確にイメージできるようになりました。売野さんが「天地創造の世界を描きたかったんだよ」とおっしゃっていて、「なるほど!」と思って。すごく哲学的で、深い歌詞なんですよね。

――そうなんですよね。たしかに、17歳だとなかなかすべては受け止めにくいと思います。

森口:ただ、当時からすごくきれいな歌詞だと思っていましたし、大人になって特に〈時間(とき)という金色のさざ波は/宇宙(おおぞら)の唇に生まれた吐息ね〉という歌詞が震えるほど美しく感じたんです。〈時間(とき)という金色のさざ波〉は私たち人間の時間や命のことで、宇宙全体で考えると、それこそ吐息のように儚くて、一瞬のものだと思うんですよね。もちろんいろんな解釈があると思いますし、売野さんも歌詞は「それでいいと思っている」とおっしゃっていて。私は売野さんからお話を聞いてから“天地創造”を根底に置いて歌うようになって、それまでとは全然違うものになりました。

――そういった奥行きのある歌詞だからこそ、深みのあるオーケストラアレンジで聴くと、さらに想像の羽が広がる印象を受けました。

森口:私もそう思いました。この曲は特にストリングスのカウンターメロディが美しいんですよね。Bメロの〈心にうずもれた優しさの星たちが〉のところのカウンターメロもすごく切ない旋律で。売野さんは「人生にはいろんなことがあるけれど、人はひとりじゃないし、絶望することはないんだよ」ということも訴えたかったとおっしゃっていました。サビの〈もう泣かないで〉というフレーズも「絶対に諦めてはダメだよ」という想いが込められていて、そこの部分のストリングスのメロディがBメロよりも少し明るくなるんですよね。そういう部分にも人間の心情がオーケストラの音に表われているように感じられて。大勢の人たちで演奏していることも含めて、人間の生命力をより投影させたアレンジになったと思います。

――全編オーケストラアレンジのレコーディングを経て、あらためて感じたことや得たものはありましたか?

森口:今までのポップスとは少し違ったアプローチにしようと思っていたので、とにかくレコーディングが大変だったんですけど、あらためて“音を楽しむ”という基本にかえることができました。特に「ETERNAL WIND」は思い入れの強い曲ということもあって、何度もレコーディングし直したんです。私はいつもマスタリングやTD(トラックダウン)の作業にも全部参加するのですが、TDの時に自分の思い描いていたバランスでリクエストしたら、私が声に執着しすぎていたみたいで、全然曲のよさが感じられなかったんですよ。「あれ、こんなにいい曲なのに全然感動しない」と思って、ストリングスやピアノのグリッサンドを目いっぱい上げてもらったら、その瞬間にちゃんと物語が見えたんです。

――ボーカルとサウンドが調和することで、音から見える景色が変わったわけですね。

森口:そうなんです。そんなことは100も承知だったはずなのに、あまりにもこだわりすぎて、視野が狭くなってまわりが見えなくなっていたんですよね。この曲の物語がちゃんと見えた時に、自分の歌とかではなく、楽曲に対して涙がこぼれたんです。もうボロ泣きしてしまって(笑)。あらためて音との会話を感じて、初心にかえることができた瞬間でした。

――40周年にして初心に立ち返ることができたのは、貴重な経験だったのではないでしょうか。

森口:去年のコンサートで1992年リリースの「夢がMORI MORI」を歌った時に、これまでたくさん歌ってきた曲なのに今までにないノリを感じて、「私、この曲の歌い方がやっとわかってきたかも!」と思ったんですよね。長く続けていると、それまで見えなかったものが突然見える瞬間というのがあって。ジャズトランペッターの日野皓正さんも、70代後半の頃に「俺、やっとトランペットの吹き方がわかったんだよ」とおっしゃっていて「えー!」と思ったんですけど(笑)。私もちょっとは成長したのかなと思いました。

――このキャリアでまだまだ自分に成長の伸びしろを感じるというのは、とても素敵なことだと思います。

森口:いやあ、私はそもそもが牛歩なので。こう見えて実はあまり冒険したがらないタイプで、髪型にしても、好きな色にしても、ずっと変わらないんですよ。でもここ数年は、似合う/似合わないは置いておいて、「やってみたい!」と思ったら挑戦するようになりました。人間、新しいことに挑戦する時はエネルギーが必要ですし、もちろん年代ごとのよさや輝きはあると思いますけど、単純にだんだん年齢とともに体力が追いついていかなくなるので。うじうじ迷うヒマがあったらまずはやってみよう、と。最近はテレビでも髪の毛を結んでみたりとかして……なんかデビューしたばかりの新人みたいなことを言ってますけど(笑)。

――(笑)。そんな森口さんがデビュー40周年イヤーとなる今年、今回のオーケストラカバーのほかにもどんな新しい姿を見せてくれるのか、楽しみにしています。

森口:実は『GUNDAM SONG COVERS -ORCHESTRA-』のCDのなかにお知らせが入っているのですが、今年の冬に40周年のアルバムをリリースします。しかもデビュー曲の「水の星へ愛をこめて」を作ってくださった売野さんとニール・セダカさんが40年越しにタッグを組んだ新曲や、「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」の西脇唯さんがアンサーソングを書き下ろしてくださった楽曲も収録されます!

――ええっ!

森口:泣いちゃいますよね(笑)? 売野さんとニール・セダカさんのふたりが40年越しに集まってくださったこと自体が素敵なことだと思うんですよ。「ああ、みんな色々戦ってのりこえて生きてきたなあ」と。それと今までアニソン以外の楽曲を提供してくださったアーティストの方々も再集結してくださいます。その全貌は8月に第2弾として発表します。そして全国ツアーも!! もう夢のようなアニバーサリーです。

――でも、それは森口さんが40年のあいだ、第一線で歌い続けてきたからこそ、集まれた場所でもあるわけですよね。

森口:本当にありがたいことです。でも、私が40年続けてこられたというよりも、みんなが40年続けさせてくれたんですよね。私がどんなにひとりで熱く語っても、こうしてインタビューの場を設けてくださるスタッフやメディアの皆さんがいないと伝えられませんし、応援してくださるファンの皆さん、キングレコードの皆さん、事務所の皆さんの支えがあってこそのアーティストだと思うんです。その意味で私はすごく恵まれていますし、アニバーサリーに向けてみんながこんなに盛り上げてくれて一緒に向かって行けるのが嬉しくて……ああ、泣けてきた。

――こちらまで感無量です。

森口:(涙を押さえながら)素敵な仲間たちに巡り合えて本当に幸せですし、ファンの皆さんが作ってくれた40周年なので、今おっしゃっていただいた「歌い続けてきたから」という言葉を、そのまま皆さんにプレゼントするような一年にできればと思っています。アニバーサリーの詳しい情報も含めて予定が“もりもり”なので、楽しみにしていてください! みんなで濃厚に駆け抜けていきますよ!!

■リリース情報
『GUNDAM SONG COVERS -ORCHESTRA-』
発売中

特設サイト:https://cnt.kingrecords.co.jp/gsco/
配信リンク:https://moriguchi-hiroko.lnk.to/GSCO

<仕様>

初回限定盤

・初回限定盤(KICS-94203)
2CD+Blu-ray
スリーブケース仕様(ことぶきつかさ描き下ろしイラスト)
価格:¥5,500(税込)

通常盤

・通常盤(KICS-4203)
CD ONLY
価格:¥3,300(税込)

<収録内容>
・CD-DISC1(初回限定盤/通常盤 共通)
01. ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~ (『機動戦士ガンダムF91』主題歌)
02. 10 YEARS AFTER (『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』エンディングテーマ)
03. 水の星へ愛をこめて (『機動戦士Ζガンダム』オープニングテーマ)
04. 月の繭 (『∀ガンダム』エンディングテーマ)
05. 銀色ドレス (『機動戦士Ζガンダム』挿入歌)
06. FIND THE WAY (『機動戦士ガンダムSEED』エンディングテーマ)
07. 哀 戦士 (『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』主題歌)
08. FLYING IN THE SKY (『機動武闘伝Gガンダム』オープニングテーマ)
09. 遠い記憶 (『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』エンディングテーマ)
10. めぐりあい (『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』主題歌)

・CD–DISC2(初回限定盤のみ)
CD-DISC1のInstrumental Versionを収録

・Blu-ray(初回限定盤のみ)
『ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~』Music Video
『ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~』Making of Music Video

クリアファイル

・CD購入特典:A4サイズクリアファイル

■ツアー情報
『40周年記念コンサートツアー』
2025年12月20日(土)広島・はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ 大ホール
2025年12月21日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール
2026年1月10日(土)福岡・福岡市民ホール 中ホール
2026年1月24日(土)東京・東京国際フォーラム ホールC
※チケット販売スケジュール、開場/開演時間、チケット価格など詳細は後日発表

森口博子 オフィシャルサイト:https://www.mogeshan.net/
X(旧Twitter):https://x.com/hiloko_m
YouTube:https://www.youtube.com/c/hiroko_m
ブログ:https://ameblo.jp/hiroko-moriguchi/

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