Uru、これまでの恋愛ソングをアップデートさせた新しい響き 新曲「フィラメント」で結実した真骨頂

Uru、「フィラメント」で結実した真骨頂

 大切な人を想うことで強く生きられること、どんな苦しみや悲しみに見舞われても、希望の光を抱いて前に進んでいくこと――。Uruの新曲「フィラメント」は、痛みや葛藤を抱えながらも日々を頑張っているすべての人に寄り添うラブソングだ。

 「フィラメント」は映画『おいしくて泣くとき』の主題歌として書き下ろされた。

 森沢明夫の原作小説を映画化した『おいしくて泣くとき』の主人公は、幼い頃に母親を亡くした心也、家に居場所がない夕花。ふたりは“ひま部”を作り、小さくてかけがえのない関係を作っていくが、ある時、夕花が姿を消してしまう。そして30年後、心也はその真相を知ることになる。

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 「フィラメント」は、映画のストーリーや登場人物たちの凛とした佇まいとまっすぐにつながっている。まず心に残るのは、繊細さと力強さを併せ持ったメロディライン。楽曲が進むにつれてダイナミズムが増し、さまざまな感情――切なさ、痛み、後悔、そして、光と希望――をまといながら、聴く者を豊かな感動で包み込んでくれるのだ。

 ピアノと歌を中心にしたミニマムな編成で始まるアレンジも秀逸。色とりどりのシンセの音色、穏やかなギターの響き、力強いビートなどをバランスよく配することで、「フィラメント」に込められた想いを増幅させている。編曲はUruの「恋」のアレンジも手掛けているKOHDが担当。生楽器とエレクトロ的な要素を組み合わせ、歌のよさを際立たせる彼の手腕は、「フィラメント」でもしっかりと活かされている。

 さらに特筆すべきは、歌詞の素晴らしさ。前述したように「フィラメント」の歌詞は映画『おいしくて泣くとき』とリンクしているのだが、大切な人との別れ、そして傷つきながらも、消えそうになりながらも希望を忘れないでいたいという思いは、誰しもが経験したことがあるはず。つまりこの曲は、リスナーの日々に寄り添い、明日へと向かう力を与えてくれるエールソングでもあるのだと思う。

 個人的に心に残ったのは〈街ですれ違う人たちも/今隣にいてくれる君も/乗り越えてきた苦しみや傷痕を/両手に抱えながら生きているのかな〉というパートだ。ふたりの関係にフォーカスしていた視点が外に向けられ、より幅広い世界へと拡大していく。これも筆者の解釈だが、〈街ですれ違う人たち〉というフレーズがあることで、この曲は一人ひとりのリスナーの日常や人生に近づき、聴き手に「これは自分の歌だ」という思いを抱かせるのではないだろうか。

【Official】Uru 「フィラメント」 映画『おいしくて泣くとき』主題歌

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