『オリオンブルー』インタビュー
Uru、自然と導かれた“オリオンブルー”の個性 ドラマ主題歌に対する思いも語る
Uruが、2018年12月にリリースした1stアルバム『モノクローム』から約2年3カ月ぶりとなるニューアルバム『オリオンブルー』を3月18日にリリースした。
同作には、TBS系日曜劇場ドラマ『テセウスの船』の主題歌である「あなたがいることで」をはじめ、アルバム新録曲としてデビューから数回しか披露されていなかった幻の楽曲「今 逢いに行く」、Kan Sanoがアレンジを手掛けた「space in the space」、Shingo Suzukiがアレンジを手掛けたウェディングソング「marry」、渡辺シュンスケがアレンジを手掛けたアップナンバー「Don't be afraid」など全13曲が収録。バラードを紡いできた印象の強いUruが、新たな一面を見せた今作の収録曲を通して新境地を開いていこうとする音楽へ向き合う姿勢や、デビューから4年を経て自分の色=『オリオンブルー』にたどり着くまでの挑戦や今の心境を語ってもらった。(編集部)
「いろんな表情を持った曲が詰まった“お弁当箱”みたいなアルバム」
――1stアルバム『モノクローム』のリリースから約2年3カ月が経ちました。その時間はUruさんにどんなものをもたらしてくれましたか?
Uru:『モノクローム』は私の原点をコンセプトに作った曲たちをまとめたアルバムだったんですけど、それ以降は自分らしさ、自分の色みたいなものを少しずつ表に出せるようになってきたかなと思います。自分で作詞/作曲した曲を聴いていただく機会が増えたこともあって、自分自身がUruの色を見つけられた実感もありますし。それを象徴するのが今回のアルバムタイトルになっています。
――Uruさんにしかない個性を象徴する色が“オリオンブルー”だったわけですね。その色を見つけるためには模索もありましたか?
Uru:模索というよりは、自然に導かれたような気がします。いつも応援してくださっている方々に、“Uruと言えば何色?”っていうアンケートに答えていただいたことがあって。そのときに、青系の答えがすごく多かったんですよね。それを見た時に、あぁやっぱりそうなんだなって。
――様々なブルーがある中で、オリオンブルーはちょっと緑がかった明るい青ですよね。
Uru:そうなんです。アンケートの回答にもいろんなブルーが書かれてあったんですけど、けっこう水色に近いブルーという印象を持ってくださっている方が多くて。私自身は緑色が好きなので、水色にそれを足してみたところすごく素敵な色になったんです。それがオリオンブルーという名前だったので、直感的に決めました。
――これまでのUruさんは重厚なバラードを歌うイメージが強くあったので、色で言えば濃い青、濃紺が似合う感じだったと思うんです。でも今回のアルバムを聴かせていただくと、明るさを持った曲もあるし、これまでになかったタイプの曲もある。まさにオリオンブルーというタイトルがふさわしい内容だなと思いました。
Uru:バラードではない曲も前々から作ってはいたんですが、皆さんに聞いていただくタイミングがなかなかなかったというか。それが今回、自分の色をテーマにしたアルバムを作ることになったので、私の違った一面も聴いて欲しいなと素直に思えて収録することができたんですよね。
――今回収録されているような幅広いタイプの楽曲を昔から作っていたのだとすると、バラードのイメージばかりが強くなっていくことに対してもどかしさを感じたりすることもあったのではないかな、とちょっと思ったりもしたのですが。
Uru:バラードを歌うことはすごく好きなのですが、自分の中にあるバラード以外の部分も聴いて欲しいなという思いは確かにありました。ただ、活動していく中で自分のバラードを求めてくださる方がいることはすごくありがたいことなんだなって、あらためて思えるようになっていったんですよね。それによって自分が歌うバラードをより愛せるようになったし、より素直な気持ちでバラードを作れるようにもなりました。
――ご自身が作るバラードにも変化が表れたり?
Uru:そうですね。たとえばアルバムにも収録されている「あなたがいることで」は、ドラマ『テセウスの船』(TBS系)の世界観に寄り添いつつ、自分の作りたいバラードの形と応援してくださる方々が喜んでくださるであろうバラードの形をいいバランスで落とし込むことができました。自分の音楽性と求められていることの両方を曲にできたことは、デビュー当時から一番変化した部分なのかなと思います。
――ご自身の中でバラードに対して折り合いがつけられたことには何か理由があったんですかね?
Uru:なんなんでしょう……。でも、自分のバラードがたくさんの方に届いて、それを愛してくださっていることをダイレクトに感じられているからだと思います。「あの曲を聴いてこんな気持ちになりました」といった感想がSNSやブログなどを通じて直接届くようになったことで、少しずつ素直になれていったんですよね。昔の話で言えば、YouTubeにアップした動画に対して自分ではあまりうまく歌えていないな、もうちょっと何かできたんじゃないかなと思っていたとしても、肯定的な感想をいただけると「あ、そっか。自分の発信した曲で、こんな感想を抱いていただけることもあるんだな」って素直になれたりしていたので。それと同じ感覚だと思います。
――そんなUruさんの様々な心の変遷を経て生み出された今回のアルバム。あらためてどんな仕上がりになったと感じていますか?
Uru:いろんな表情を持った曲が詰まった“お弁当箱”みたいなアルバムになった気がしますね。いろんな栄養を持った曲たちを入れることができたんじゃないかなって。
――うん、栄養価のバランスはすごくいいと思います(笑)。
Uru:ありがとうございます(笑)。
――先ほどお話に出た「あなたがいることで」をはじめ、「願い」「remember」など、今回も様々な作品とタイアップした曲がたくさん収められています。Uruさんがタイアップ曲を作る際にはどんなことを大事にされているのかをあらためて伺いたいです。
Uru:作品の世界観を壊さないこと、それが私の中に絶対条件としてあります。とは言え、映画やドラマ、アニメの制作に最初からかかわっているわけではないので、制作者の方々とイメージを完璧に共有することはけっこう難しいんですよね。なので、いただいたリクエストを軸としつつ、原作や脚本をじっくり読んで、その作品世界を自分の中に染みこませる作業をすごく大事にしています。私が作った曲を聴いたときに、その作品のことも一緒に思い出せるような一体感を作れたらいいなって。
――先ほど、自分の作りたいものと求められるものとのバランスが整ってきたというお話がありましたけど、タイアップ曲に関しても自らのやりたいこと、アーティスト性を曲に盛り込むことを意識することもありますか?
Uru:どんな場合であれ、自分のアーティスト性をしっかり表現できるようになりたいという憧れはありますけど、タイアップ曲に関しては、やっぱりその作品のストーリーに寄り添うことを第一に考えることにしています。
――今回のアルバムはその布石になるような内容だと思います。「え、こんな表情もあるんだ⁉」って確実に驚かされるはずですから。
Uru:曲調も歌詞も、いろいろな表情を持った楽曲を収録することができました。「頑な」という曲なんかは、今までの私にはなかった、聴いてくださる方の背中をポジティブに押せるような曲になっていますし。「space in the space」も、今までとはちょっと雰囲気の違う曲になりました。
――アルバム曲はどれも新鮮な表情が打ち出されたおもしろい仕上がりですよね。「頑な」のような、ある種の応援ソングが書けるようになったのはどうしてだったんでしょう?
Uru:これは以前、プロボクサーの和氣慎吾さんのドキュメンタリーをTVで見たことをきっかけに作った曲なんですよ。自分にないものをすべて持っている和氣さんの姿に感動して、たくさん泣いて、その感想を書くみたいな感じで一気に作ったんですよね。その当時は今と比べるとネガティブに過ごしていた時期だったので、自分の中ですごく感銘を受けたんです。
――この歌詞にはUruさんご自身の決意が込められているようにも感じました。
Uru:確かに自分も和氣さんのようになりたいって思っていたのかもしれないですね。この曲は作ってから少し時間が経っているので、今あらためてこの曲を聴くと、当時の悶々とした日々を思い出しながらも、あの頃よりは前を向けているなと思える部分もあって。過去を振り返る余裕がちょっとずつ出てきているような気もします。
――なりたいと思っていた自分に近づけているのかも。
Uru:そうかもしれないです。まだまだだとは思いますけど(笑)。