ORANGE RANGEが変わらずに変わり続ける理由 “王道”を裏切る「マジで世界変えちゃう5秒前」制作秘話

遊び心たっぷりに弾けるTVアニメ『戦隊大失格』(TBS系)のオープニングを彩る新曲「マジで世界変えちゃう5秒前」でバンドの真骨頂を響かせるORANGE RANGE。最新曲の制作秘話や、結成から間もなく25年を迎える現在の心境と音楽への情熱、“変わらずに変わり続ける”バンドの現在地について、NAOTOとHIROKIに話を聞いた。(えびさわなち)
アニメフェス出演で知った新たな世界、FLOWへの感謝

——近作でのアニメタイアップ曲はFLOW×ORANGE RANGEでの「デイドリーム ビリーヴァー」(アニメ『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2』第2クールOPテーマ/TBS系)以来、単独名義でのアニメタイアップはアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』(テレビ東京系)OPテーマの「ラビリンス」以来。約4年ぶりだそうです。
NAOTO:もうそんなに経つんですね。
——ただ「デイドリーム ビリーヴァー」以降にも、アニメフェスに出演する機会がいくつもありました。ORANGE RANGEとしても珍しい機会でしたね。
HOROKI:そうですね、FLOW主催の『FLOW 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE 2023 ~アニメ縛りフェスティバル~』だったり……FLOWが僕たちを新しい世界へと引っ張りだしてくれた感じでしたね。ORANGE RANGEを導いてくれました。
NAOTO:うん、本当にFLOWがきっかけでしたね。
HOROKI:FLOWは唯一無二の存在というか、ロックとアニメという両フィールドのアーティストを誘って1つのフェスを成立させているバンドなんですよね。そういう形で音楽やライブを届け続けていることがすごいですし、そのスタイルを理解したファン層だからこそ、FLOWが作る空間の中で自分たちも違和感を感じることなくライブができたんだと思います。あと、その前に純粋なアニメフェスにも出たよね。
NAOTO:ああ! 『ANIMAX MUSIX 2022』でね。
HIROKI:FLOWの出番にサプライズで出たんですよ。あれもFLOWに声を掛けてもらって出演したんですけど、長くやっていても自分たちの知らない世界や空間があるんだなって実感しました。目の前で揺れるペンライトも新鮮でしたね。
NAOTO:正直、出るまではちょっとビビってたんです。でも実際は緊張する必要なんてなくて、みんなウェルカムな空気で迎えてくれました。それなのに、2023年の『NARUTO THE LIVE』に出た時には、俺たちアニメの曲全然やらなくて(笑)。
HIROKI:そう、KANA-BOONがライブしている時に気が付いたんだよね。みんなアニメにまつわる曲をやっていて、「やばい。今日のセットリスト、全然違うけど、どうしよう」(M1「以心電信」M2「イケナイ太陽」M3「上海ハニー」M4「ビバ★ロック」)って。
NAOTO:FLOWのTAKEさんが来て「お前ら、アニメの曲やれよ!」って(笑)。今、言うなんて! って思ったんだけど、お客さんはみんなウェルカムな雰囲気で。
HIROKI:アニメフェスっていうものが何もわからない状態だったけど、受け入れてもらえたのが嬉しかったです。
NAOTO:その後もアニメフェス出演の機会をいただきましたが、いつも盛り上がってくれましたね。
HIROKI:普通のロックフェスに負けないくらいの声量、熱量。
NAOTO:そう、熱量ハンパない!
HIROKI:男子も女子も熱が高くてすごいなって思いました。
『戦隊大失格』のOPで表現した“王道”とは外れた部分
——そんな皆さんの新曲「マジで世界変えちゃう5秒前」はTVアニメ『戦隊大失格』(TBS系)のOPテーマです。まずは今回のコラボの相手となる作品の印象をお聞かせください。
HIROKI:最初に思ったのは、いわゆる今までの戦隊モノの王道イメージや世界観を裏切っていくストーリーがすごいなって思いました。それに、ストーリーの作り方も面白いなって。その“ひねくれ具合”は自分たちのバンドとも通じる部分があると思います。普段アニメはあまり観ないのですが、この曲を作るために1st seasonを観たんですよ。今のアニメやマンガはベタな展開じゃなく、表現や展開が細分化されていっているんだなと感じて、シンプルにすごく面白いなって感動しました。
NAOTO:自分たちの子供の頃にはない切り口の作品だなと思いましたね。人の深層心理や考えていることを面白おかしく、真面目すぎずユーモラスに表現しているのが今風だなと。そういう作品なので、楽曲のインスピレーションも湧きやすかった。バトルのシーンの歯切れもいいし、見応えもあって楽しかったです。
HIROKI:アニメについては放送されているところまで観て、さらに原作も全部読みました。
NAOTO:いろんな角度から楽しめる作品だよね。
HIROKI:笑いもあって、ユーモアを忘れない感じもいい。どっちが正義でどっちが悪なのか、そういう境界も視点によって変わるよなって思いました。
NAOTO:インスピレーションが湧きやすかったですし、目まぐるしさや展開のスピード感、切り口の独自性も含めて作品に引っ張られた感覚はありました。
——楽曲について、アニメ側からのオーダーはありましたか?
NAOTO:細かい指定はなかったです。大枠のオーダーから汲み取って、できたデモを「どうですか?」とお届けしたところ「いいですね」ってことで、割とスムーズにこの曲に決まりました。
——そもそも以前からデモがあったのでしょうか。それとも書き下ろしですか?
NAOTO:完全な書き下ろしです。楽曲制作のために作品を観て、バタバタした感じや展開の突飛な感じを楽曲に織り交ぜて提案しました。
——『戦隊大失格』のOPとして必要だと思ったのはどんな要素ですか?
NAOTO:いわゆる“王道”とは外れた部分ですね。曲が始まってサビにいくまでの流れが予想できないようにしたいと考えていました。タイトルに“戦隊”とあると、僕らの世代はヒーロー5人が並んでポーズを取っている背後で爆発がドーン! と起きて、悪を倒す! みたいなことを想像しがちだと思うんです。でも『戦隊大失格』は違う。だからこそ、曲でもその“違い”を表現しなくては、みたいなことは考えていました。それが表現できれば大丈夫かな、という手応えはありましたね。
——歌詞についてはいかがでしたか?
HIROKI:1st seasonのキタニタツヤさんのOP「次回予告」があまりにもよすぎて「『戦隊大失格』に対する表現はやり尽くされてるな」って思ったんです。あの曲こそが1つの正解を叩き出していたので、そことは違う切り口を模索しました。そこで、もっとコミカルな部分を出したいと思って。バタバタした感じや戦闘員Dのぶっきらぼうでおバカな部分にフォーカスして、ストレートに生きていく様を表現できたらなと、そこから書き始めました。
——戦闘員Dのことを深く考えたんですね。
HIROKI:そうですね。彼のことを考えることによって、自然に作品に寄っていくというか。アニメを観ていない人にも、“器用に生きていく”のではなく、“その瞬間の感情で突っ走る”キャラクターとしての戦闘員Dを表現することで、「ありのままで突っ走っていいんだよ」と応援するようなメッセージが伝えられたらなと思って書きました。
NAOTO:そうやってHIROKIが書いた歌詞に引っ張られるようにアレンジも変わっていったので、お互いに刺激し合うことで完成に近づいていく感覚がありました。
——OP映像を観た感想をお願いします。
NAOTO:面白かったですね!
HIROKI:かっこいい。展開ごとに絵が変化していくのもよかったです。
——久々のアニメタイアップですが、このような制作の際に気をつけていることや“ORANGE RANGE色”の出し方はありますか?
NAOTO:曲についてはアニメありきではありますけど、アニメ要素100%ではなく、今の自分たちのやりたいことや伝えたいことを半分くらい混ぜて作ることは意識しています。
HIROKI:アニメに寄り添いながらも自分たちの言いたいことも描こうという意識は、作詞の上でも大事にしていますね。
——ジャケットもすごくいいデザインですね。
NAOTO:実は、シングルCDで自分たちが映っているジャケットってあまりないんですよ。15周年のアルバムで特別にやっただけで、自分たちを映すことをほとんどしてこなかったんです。……一応、覆面バンドなので。
HIROKI:覆面バンド(笑)。