クレナズム、アルバム『a beautiful days』に収めたかけがえのない日常 表現の広がりやアジアへの意識も語る

クレナズムが描く“日常”

 昨年は台北でツアーファイナルを迎えたり、アジアのアーティストとのコラボ楽曲を配信リリースするなど、精力的な海外展開でも注目されている4人組バンド、クレナズム。待望の2ndフルアルバム『a beautiful days』には、タイのシンガーソングライター・QLERのカバーやコラボ曲、映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』主題歌に書き下ろしスマッシュヒットした「リベリオン」、2025年に入ってから配信リリースした「あのモーニングセット」や「センチメンタル」、さらにアルバム新曲「教えてください、神様。」など、チルでグルーヴィなナンバーから疾走感あふれるギターロックまで、従来以上に多彩な8曲が揃った。アルバムについて聞きながら、同時にこのバンドのオリジナリティの必然性を探ってみた。(石角友香)

アジアアーティストから受けた影響 クレナズムというバンドの幅の広がり

――今回、既発曲が多数収録されていますが、アルバムとしてまとめる際にどういうテーマがありましたか?

しゅうた(Dr):今回は“美しい日々”をテーマにしていて、ある人の生活を曲順にしているというのが大きくて。

けんじろう(Gt):朝起きてから夜寝るまでみたいな流れをイメージして曲順を組んでいったんですよ。生活がとらえられるような順番で並べていったというか。

萌映(Vo/Gt):全体で一つの物語になっているような。

――それぞれの曲を作っている時は意識的ではなかった?

まこと(Ba):そこまで意識的ではなかったですね。でも曲をまとめた時に歌詞を見て、「ホーム」は朝で、「教えてください、神様。」も朝の歌詞が入っていたりして、朝から夜までの時系列で流れが組めて。アルバムとしてきれいにまとまったなと思ってます。

クレナズム インタビュー写真(撮影=Yasuda madoka)
萌映

――今回はI Mean UsやQLERさんとのコラボの曲も入っているし、いまのクレナズムが端的にわかるアルバムなのかなと。

萌映:去年はアジアに向けた活動を目標にしていたところがあって。その目標からアジアのアーティストとのコラボ曲に繋がって、こうやってアルバムにまとめられたので、本当にいまの私たちのやりたいことや目標だったことがうまく詰まったアルバムになりました。

――アジアに向けての活動が本格的な目標になったのは、ライブのフィードバックが大きいですか?

しゅうた:2023年にゲシュタルト乙女とのツアーで台湾に久しぶりに行った時に、日本と熱量が全然違っていて。例えば「花弁」という曲をライブでやると、日本だと静かに聴いてくれる人が多いんですけど、台湾では演奏が始まった瞬間に歓声があがるんです。全身で肯定してくれるというか、そういうことを体感して、実際に台湾のアーティストのI Mean Usとコラボしたりして自分たちの方向性が見えたというか。

――音楽性の幅がより広くなってもいいと?

しゅうた:そんな感じがしていて。もともと僕たちは海外の音楽を好きで聴くから、I Mean UsもQLERさんも好きで聴いていたアーティストなんですけど、彼らはジャンルにとらわれていないアーティストなので、自分たちもそういういい要素を取り入れつつ、自分たちの好きな方たちと一緒にできたらいいなと思って実現したコラボが多いんです。だからアジアを目指してもいたけど、今回コラボした方々から影響を受けたところもありますね。

――日本のリスナーもクレナズムのチルな一面に慣れてきているのでは?

まこと:ほんとに。「木村 楓」とかもそうで、これまでは「好きなように乗ってください」みたいな曲がなかったから最初は戸惑っている感じがあったんですけど、最近は変わりましたね。俺らのライブのやり方が変わったからというのもあるとは思うんですけど。

萌映:そもそも私たちはルーツが全員バラバラというのもあるので、それぞれのルーツがより活きたうえでこのアルバムになったんだなとすごく思いますし、ライブの作り方も拳をあげるだけじゃなく、「自由に乗っていってね」っていう言葉もかけられるようにもなったし、よりクレナズムというバンドの幅が広がったなと思いますね。

新曲で実感した「ひとり残らず睨みつけて」の頃からの成長

――アルバム新曲の「教えてください、神様。」は久しぶりに加藤祐介さんとのコライトですね。

しゅうた:加藤さんとは昔「ひとり残らず睨みつけて」や「キミのいない世界」でご一緒させていただいていて。またご一緒したいとずっと思っていたんですけど、なかなかタイミングがなかったんです。でも今回、既発曲が多いし、チルっぽい曲が多いので、もう1回「ひとり残らず睨みつけて」っぽい曲というか、疾走感や爽やかさのある曲も出したいという話になって。そこで加藤さんと一緒に作ったら狙い通りの曲ができるんじゃないかっていう思いでお願いしたんですね。で、萌映ちゃんのデモをブラッシュアップしてもらいました。

――「ホーム」から「教えてください、神様。」へのつながりがいいですよね。電車通勤の新社会人が浮かびます。

萌映:そうですね。始発何時何分まで具体的な例を出したり、より共感される歌詞を自分の目標として掲げていたので、「ホーム」とか「教えてください、神様。」はそういう歌詞ですね。ちょうどリリースの時期を考えた時に、よりこの歌詞は響く人がいるんじゃないかなと思って。慣れてきたと思ったらうまくいかないとか、そういう葛藤のある時期だと思うので、聴いてもらいたいですね。

クレナズム『ホーム』culenasm 『Home』(Official Music Video)
culenasm『教えてください、神様。』(Official Music Video)

――加藤さんとの共同アレンジで以前に比べて手応えが増したところは?

しゅうた:音とかフレーズ的に言うと、「ひとり残らず睨みつけて」の頃は自分たちがやってこなかったことをやって、レコーディングもちょっと違和感がありながら頑張って弾いてたんですけど、今回は結構スッとチャレンジもできましたね。フレーズを自分たちなりに組み上げられるようになったというか、めちゃくちゃ成長してるなと思いながらできました。

――単にまっすぐな疾走感でもないですし。

しゅうた:そうですね。ドラムに関して言えば、ここにフィルがほしいとかここのキメをしっかりしてとか、簡単なドラミングじゃないテクニカルなことも入れてほしいっていう要望があって。

萌映:よりそれで表情が出た気がします。

――ところでけんじろうさんはシューゲイザーがルーツのギタリストですが、J-POP寄りの曲では弾きすぎないアレンジもしていて。自分の中でどう共存しているんですか?

けんじろう:歌ものも好きなので、歌が活きるようなギターを意識していますね。コード進行に対してギターのメロディがちょっと加わるだけで歌のメロディの聴こえ方が変わるような気がしていて。それを2年ぐらい前からずっと研究していて、最近はどの曲でも意識するようになりました。

――ギタリストとしてのリファレンスはあるんですか?

けんじろう:好きなのはBREIMENのサトウカツシロさん。すごく尊敬してます。

クレナズム インタビュー写真(撮影=Yasuda madoka)
けんじろう

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる