Vaundy、ちゃんみな、Travis Japan、キタニタツヤ、MISAMO、いきものがかり……注目新譜6作をレビュー
キタニタツヤ「あなたのことをおしえて」
スマホカードゲーム『Shadowverse: Worlds Beyond』テーマソングとなる書き下ろし新曲。ボカロ系クリエイター特有の詰め込み方と乱高下するメロディと生のギターサウンド。これは「青のすみか」を筆頭とするキタニタツヤの得意技だと思うが、今回はアコースティックギターの使い方が印象的。ポロポロ爪弾くのではない、弦が切れそうな勢いで掻き鳴らすさまが、楽曲の焦燥感と勢いをさらに高めている。また、『Shadowverse』自体は対戦型トレーディングカードゲームだが、〈あなたはもう何も差し出さなくてもいいと思うよ〉なんて歌詞を書いてしまうのは実にキタニらしい。結局刺さるのは〈どうか生きて、笑って、泣いて〉という切実なメッセージだ。(石井)
MISAMO「Message」
穏やかで温かいトラック、素朴な手触りのボーカル/ラップ、そして、「遠く離れていてもメッセージは伝わっているよ」という思いを込めたリリック。漫画家・東村アキコの実話をもとにした漫画原作の映画『かくかくしかじか』の主題歌「Message」は、リスナーの心を柔らかく包み込み、前向きな気持ちへと導いてくれるミディアムチューンだ。漫画家を目指す少女と絵画教師の関係を軸にした映画のストーリーに寄り沿っているのだが、〈聞こえるMessage 遠くにいても〉という普遍的なフレーズによって幅広いリスナーの思い出や感情ともしっかりとリンク。MINA、SANA、MOMOによる、一つひとつの言葉に豊かな思いを刻んだ歌もじんわりと心に浸透する。(森)
いきものがかり「彩り」
通算11枚目となるアルバム『あそび』のリード曲で、小田急グループ企業CMソングにも起用された一曲。水野良樹によるこの楽曲は、王道のJ-POP、いきものがかりの十八番と言える正統派エールソング。MVにも大勢のコーラス隊が出演しているように、個人の物語を超えたみんなの物語が綴られる。タイアップから〈駅〉や〈暮らし〉に着目し、綺麗事だけではない〈痛み〉や〈すれちがい〉も汲み上げながら、最終的にはどこまでも端正で普遍的なポップスに仕上げていくのが水野ワークス。ここまで時代やエゴに振り回されない音楽家も珍しい。吉岡聖恵の変わらぬ歌声も相まって、新曲でありながら長らく聴き馴染んだ名曲のひとつのように響く。(石井)