Mrs. GREEN APPLE、Ado、aiko、女王蜂、[Alexandros]、IMP.……注目新譜6作をレビュー
女王蜂「強火」
アヴちゃんの体調不良による活動休止を経て届けられた2年ぶりのオリジナルアルバム『悪』からわずか1カ月で届けられた新曲「強火」は、TVアニメ『炎炎ノ消防隊 参ノ章』(MBS/TBS系)第1クールのオープニングテーマとしても話題を集めている楽曲。エキゾチックなアコギの響きのなかで〈ねえ忘れないで/慣れてしまわないで〉と語り掛けるようにはじまるこの曲は、全編を通してしっかりと抑制されたトラック、鋭利な手触りと内省的なムードを併せ持ったボーカルが一つになったミディアムチューン。どこか静謐な雰囲気もあるのだが、その奥にある強烈な火こそがこの曲の芯であり、それはこの困難な時代において、「それでも強く火を灯して生きたい」という切実なメッセージへと結びついている。(森)
[Alexandros]「超える」
ギラッとした光を感じさせるギターサウンド、あっという間にトップスピードに達する疾走感、楽曲が進むについれて飛翔感とダイナミズムを増していくボーカル。約3年ぶりのフルアルバム『PROVOKE』から先行配信された「超える」(アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第1クールオープニング主題歌/TBS系)は、[Alexandros]のクリエイティビティがさらに加速していることを証明するロックナンバーだ。既存のやり方やフォーマットに留まることなく、常に奔放なトライアンドエラーを続けてきた彼ら。その姿勢を端的に示しているのが〈私が私を超えていく〉という歌詞なのだと思う。初期衝動を失うことなく、これまでに得た技術やセンスを注ぎ込みながら、自らの音楽を更新。それは当然、アルバム『PROVOKE』にも強く反映されているはずだ。(森)
IMP.「Cheek to Cheek」
2023年にデビューしたTOBE所属の7人組ボーイズグループ。6月発売の4thシングルの表題曲だ。海外トレンドを意識し、とはいえドープなヒップホップに寄り過ぎず、親しみやすさと現代性を備えたダンスミュージックに向かう、というのはデビュー当時からの路線だと思うが、この新曲は現時点での最高峰かもしれない。厳選された音数のトラックやラップパートは実にクール、そしてサビのメロディは覚えやすくて超キャッチー。先鋭性と普遍性、もっといえばクリエイションとアイドル性のバランスが実にいいのだ。頬を寄せ合う行為を意味するタイトルを、時計の“チクタク”音に発想転換した、着席スタイルのダンスも面白い。(石井)