『ウィキッド』7分以上に及ぶ挿入歌がバイラルチャートイン シンシアとアリアナ、2人のディーバの底力

 台詞のような歌割りから始まる「Defying Gravity」は、オーケストラによる緩急あるサウンドアレンジ、ハーモニーの絡み方、シンシアとアリアナの見せ場が交互に登場する構成、主役2人のロングトーンで見せるスケール感など、じつにミュージカルらしい1曲である。途中で2人のユニゾンパートが出てくるが、両者の声質の違い、そして両者が備えた倍音が重なり、まるでクワイアのように響くのには驚かされた。

映画『ウィキッド ふたりの魔女』字幕版本編映像/「ワット・イズ・ディス・フィーリング?」<3月7日(金)より、全国ロードショー!>

 主人公の1人、エルファバ・スロップを演じるのは、英国出身の女優のシンシア。映画はもちろん、ミュージカルの出演も多く、アメリカの『アントワネット・ペリー賞』でミュージカル主演女優賞(2015年)を受賞しているほか、『第92回 アカデミー賞』で主演女優賞と歌曲賞にノミネート。『第97回 アカデミー賞』でも主演女優賞にノミネートされている。ゴスペルなどの要素を感じさせるパワフルな歌声が持ち味で、常人なら高音域になる音を中高音域で鳴らすことができるのだと思う。レンジも相当広いようだが、低音から高音まで大きく発音を変えずに通して歌うことができるのは、抜群の身体能力があってこそだろう。

 もう1人の主人公であるグリンダを演じるのが、アリアナだ。現地メディアで彼女はグランダ役のオーディションを5回受けたと報じられている。まさに彼女が手掛けるコスメブランドのキャッチコピー「where your beauty dreams become reality」の“dreams become reality”を体現したことになる。レンジの広さ、抜群のリズム感、ミックスボイスとヘッドボイスを巧みに使い分けるスキルで、1曲の中で多彩な歌声を聴かせるあたりはさすが。美しい声と音圧(声量)を両立させて存在感を発揮している。

 サブスクリプションサービスがリスナーの主な視聴手段となって久しい。その需要に応える形で、曲の尺もどんどん短くなっている中、7分以上に及ぶ「Defying Gravity」をバイラルチャート上位に送り込んだのは、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデという2人のディーバの底力の証明だ。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-03-12

※2:https://realsound.jp/movie/2024/11/post-1851717.html

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