NIKO NIKO TAN TAN、新たな扉が開いた100年に一度の『2525の日』 TESTSETとの共鳴が生んだ名演を振り返る

2025年2月5日、100年に一度の『2525の日』にNIKO NIKO TAN TANがTESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)をゲストに迎えた2マンライブを開催。最初にこの顔合わせを知った時、オーバーグラウンドシーンでこれほど主にイギリスのロックやダンスミュージックを背景に持ち、少しシニカルだったり独特のユーモアを内在させ、音楽と映像の融合におけるオリジナルなセンスを持ち、ともに2023年の『FUJI ROCK FESTIVAL』のメインステージに出演したという共通点が思い浮かんだ。シーンや仲間意識とは違うし世代も違うが、深い部分での共通項にゾクゾクした。二組ともアルバムリリースや結成時から次のタームに移行するタイミングであることも興味深い。
先攻のTESTSETはバンドアンサンブルも映像演出もフルスペックで挑み、完全にオーディエンスを掌握した。Zepp Shinjuku (TOKYO)の3面LEDスクリーンの利点を活かし、冒頭からデジタルな曼荼羅を背負ってアジアっぽいシークエンスのある「Interface」で没入感のあるステージを展開。また、LEO今井のボーカルに永井聖一(Gt)がコーラスを重ねることで生まれる色気、「Japanalog」などボディロック的なソリッドな曲以外に、抒情的な「Sing City」、永井ボーカルの「Yume No Ato」も盛り込み、ラストの「Bumrush」までフロアを揺さぶり続け、10曲1時間の濃厚なセットでNIKO NIKO TAN TANにバトンを繋ぐ。

転換と綿密なサウンドチェックを経て、NIKO NIKO TAN TANが登場。ギタリストも迎えた3人編成に驚くが、それはスターターの「Jurassic」のみ。OCHAN(Vo/Key/Syn etc)の声の抜けのよさに驚きつつ、ギターソロでそのギタリストがODD Foot Worksの有元キイチであることがわかった。また、3面のLEDスクリーンは赤字に白抜きで歌詞が投影され、早くもサビでは大きなシンガロングが起こる。ノンストップで「怪人」のイントロが放たれると歓声が上がり、この曲のライブでの重要度を理解した。以前もTempalayとの2マンをここで行ったが、音像の立体感が俄然増していることも没入感を高めている。トライバルなビートと三味線のSEにさらに湧いた「IAI」、ハンドマイクでステージ前方に出て、歌とラップを自在に行き来するOCHANの自由度が際立つ「カレイドスコウプ」まで一気に演奏。ノンストップでタイトなビートを叩き出すAnabebe(Dr)の安定感に裏打ちされた迫力にも目を見張る。

最初のMCでは2人ともTESTSETのライブを「えげつないな」と称賛。2023年、自身も出演した『FUJI ROCK FESTIVAL』で初めてTESTSETのライブを体験したことがきっかけで、今回出演依頼をしたという。共演についてOCHANは「光栄です。俺らも食いついていくようなライブをやります」とストレートに闘志を見せ、なんとも清々しい。

序盤のハイテンションから「MOOD」でやや哀愁を湛えたセクションに移行したのだが、映像はこの曲のMVに登場したロッジ(高床式住居に見えなくもなかった)の外観。シュールな気分になりながらグルーヴに揺られるという彼らのライブならではの体感に突入する。さらにOCHANのボーカル表現の前進を感じたのは「琥珀」で、空っぽの琥珀のようなグラフィックが歌詞の切なさとリンクしているようで印象的だった。そのトーンがシームレスに繋がったのは続く「Night Cruising」だったのだが、珍しくOCHANが演奏前に「久しぶりに、バンドを始めて最初にできた曲をやります」と曲振り。揺蕩うピアノリフ、ヒップホップやジャズの要素を感じる抜き気味のドラミングには彼らのもう一つの顔を感じ、『2525の日』とは別にこの日のライブのポスターに“REBORN”と記されていたことに紐づく選曲なのかも? と想像させた。以前の曲を今のスキルで披露し再構築することが、再生とその先を予感させる場面だった。
続いて「The Dawn」では、道路のセンターラインをスローで追っていく映像が硬派な印象を添える。曲中の4拍のハンズクラップを頭上で打ち鳴らすオーディエンスを見るに、どの時期の曲も浸透している、もしくはこの日のオーディエンスが特に強力なファンだったのかもしれない。そして、図太いベースラインとカオスなSEが絡み合いながら拡張するイントロで、再度歓声が上がった「胸騒ぎ」。OCHANは再びハンドマイクで歌い、Anabebeの打ち込み顔負けの精緻なハイハットワークに目も耳も釘付けになる。生身の2人の情報量も多いのがNIKO NIKO TAN TANの強みだと再認識した場面だ。

「調子どうですか〜?」とOCHANが馴染みのMCを放つと、アジア的なメロディやリズム感の「Paradise」が始まり、曲が進むにつれてトランシーな体感を増していく。この正確なビートと感性を刺激しまくるライブアレンジは、彼らがThe Chemical Brothersなどのダンスアクトと比較される理由だろう。外の寒波を忘れるぐらい、オーディエンスが発する体温で室内の気温が上昇している。それぐらい上昇したテンションだったが、エンディングから次の曲のイントロに繋がるタイミングでマシントラブルが発生し、場内全員、一瞬息が止まったかと思うぐらいだったのだが、すぐ立て直して“四つ打ちマラソン”の如き「WONDER」へ。Anabebeの持久力と緩急をつける最低限のフレージングがフロアのダンスを加速させ、ウワモノがブレイクする瞬間ごとに大きな歓声が上がる様子は完全にダンスフロアだ。さらに2人を劇画化したようなタッチとユーモラスなストーリーのMV映像が「同級生」を盛り上げる。人力でビルドするAnabebe、ジャンプを続けるOCHANそれぞれが限界突破しそうな勢いだ。