ハルカミライ、4人らしさをありのまま鳴らせた理由 2度の武道館を経て追求する“真のオリジナリティ”

須藤俊、“家族のような観客”に伝えたかったこと
──楽しみにしています。須藤さんが作詞作曲編曲を手がけたのは「心の真ん中を叩けば」です。
須藤:もともと、俺と学も含めて、1人1曲ずつ作って4曲入りのEPを作ったら面白いなと思ったところからみんなで曲を作り始めたんです。だからなんとなく4曲入りのEPに入るならどういう曲がいいかなと考えて。同じメロディが繰り返される、疾走感のある曲を作りたいなと思ったところから作っていったのがこの曲です。起点は、イントロの歪んだベースのフレーズ。そこからギター、ドラムを考えていきました。
──最後の〈ここから見えるよ、お前が俺のバンドスター〉というフレーズが印象的ですが、この歌詞はどのように?
須藤:コロナ禍に『THE BAND STAR』というアルバムを出したんですが、それを改めて説明した感じです。俺たちとしては、お客さんのことを指して“バンドスター”と言っていたんですが、俺たちのことをバンドスターだと思っているお客さんが多くて。「ハルカミライってバンドスターだよね」って。そんなナルシストなタイトルにしないです(笑)。
──いやいや、それはそれでカッコいいですが、ハルカミライとしては違ったと。
須藤:はい。“バンドから見た星”という意味でつけたので。コロナ禍で30人くらいしかフロアに入れられないライブもありましたけど、それでも来てくれる人たちがいた。その人たちに向けたタイトルでした。

──その気持ちを、改めてまた曲にして説明しようと思ったのはどうしてなのでしょうか?
須藤:今話したようにコロナ禍で支えてもらったという感謝もあるし、その期間を経たからか、コロナ禍が落ち着いてモッシュやダイブが戻ってきてからはわりとフロアに目がいくようになって。自然とお客さんのことを見られるようになったので、この気持ちを改めて伝えておこうと思いました。今はサブスクも解禁して、『THE BAND STAR』の曲も聴けるようになっていることですし。
──コロナ禍で改めて感じたお客さんへの思いが、さらに増幅しているんですね。
須藤:そうですね。まあ日によってはムカつくときもありますけど(笑)。家族みたいな存在なので。
──皆さんは、この曲を初めて聴いたときどのように感じましたか?
橋本:メロディの感じとかも含めて、俊っぽいなと思いました。メジャーセブンスが鳴っていて、ちょっと哀愁のあるコード感が俊っぽい。
小松:俺も俊っぽいなと思いました。でもリズムの感じは今までの曲にはなくて、ちょっと新しい。ドラマーとしては楽しいノリなんですよ。俊っぽさの中に新しさも感じる曲だなと思いました。
関:最後の歌詞が俊さんっぽくていいなと思いました。あと、この曲、途中で転調するんですけど、いまだにキーがよくわかりません(笑)。俺、基本的に転調するときキーとか拍子をめちゃくちゃ気にするんですけど、この曲だけは唯一説明ができない。
須藤:俺もわかってない(笑)。なんか結構パワープレーで転調して戻しているよね(笑)。
関:そうなんですよね。めっちゃ自然に、すごく高度なことをしている気がする。弾きながら解読していきたいと思います。

橋本学が掴んだ革新性「やりたいことが全部できた」
──「4人で1曲ずつ作ろう」という話になっていたということは、そのタイミングで橋本さんが作った曲もあるということですか?
橋本:はい、それが「ラストベット」です。
須藤:「The Landolt C」だよ。
橋本:えっ、そうだっけ?
須藤:うん、別の取材で「ラストベット」って答えていたけど、俺は「『The Landolt C』だけどな」と思っていた。でも疲れたから、まあいいかって流しちゃって(笑)。
橋本:あ、そうなんだ。じゃあ「The Landolt C」です(笑)。

──そうなんですね。この曲はハルカミライには珍しいマイナーコードの楽曲なので、それぞれが1曲ずつ持ち寄って作るEPに向けて作られた曲と聞いてすごく納得しました。
橋本:こういうロック然とした曲って、あまりこれまでのハルカミライではやってこなかったけど、音楽としては好きではあるので、いつかやってみたいなと思っていて。暗い感じから始まってサビで一気に開けるみたいな。取っ掛かりはそのイメージからでしたね。
──歌詞の世界もそのサウンド感から?
橋本:はい。というか、目が悪くなって嫌だなと思って。
──橋本さんご自身が?
橋本:はい、本当に歌詞に書いてある通りの……。
──本当に2.0あった視力が0.4に?
橋本:そうです。
須藤:しかも1年で一気に落ちたよね。
橋本:そうなんですよ。
須藤:小松、視力どれくらい?
小松:俺、0.4なんてもんじゃない。0.03とかっすよ。
須藤:大地は?
関:俺は小松さんよりはより良いっすけど悪いです。
──須藤さんは?
須藤:俺は1.5あるっす。
──橋本さんもバンド内で、視力良い組だったのに、悪くなってしまったんですね。
橋本:そうなんです。「これをうまい具合に曲にしよう……しょぼん……」となって。そのときに「視力検査ってみんな通っているし、それをテーマにしたら面白いかもな」と思って書いてみました。
──楽曲のイメージもあるところから作り始めたということですが、実際に完成してみていかがですか?
橋本:やりたいことが全部できたなという感じです。ゴスペル調のコーラスが入っているんですが、それもやりたかったことなんですよ。今までは、やりたいけど自分たちだけじゃできないと思ってやっていなかったんですけど……メンバーとマネージャーでやってみたらすごくうまくいって。俺たちじゃないみたいなゴスペルができた。それは革新的だなと思ったし、それも含めて、やりたかったことができてうれしかったです。
小松:ドラムで言うと、前半は今までにないフレーズで、後半はハルカミライっぽい得意なノリになっていくので、「はい、来た来た来た」って感じで叩けて楽しいです。だけどレコーディングでは結構苦戦しました。使ったことない機材を使ったんですが、慣れていないこともあって叩きづらかったんです。
橋本:重たいやつ使ったんだよね。
小松:そう。バスドラを叩くビーターという機材を、重たいものにしたんですよ。
橋本:どれを使うか聴き比べてみて、「これがいい」って言ったら一番叩きづらいやつだったみたいで(笑)。
小松:「これか〜!」って(笑)。でもその分、ノリがちゃんと出せるんですよ。だからムズいなと思いながらも頑張りました。
関:ギターではギャンギャン言ってる、ファズっぽい音を入れました。普段ギターは「いかに曲に溶け込むか」を考えているんですが、この曲ではリードギターらしい音にしています。それもこれまでの曲ではあまりやってこなかったので、新しいことをしたなと思います。
須藤:僕は真ん中あたりの曲調が変わるところが気に入っています。カノンコードにしただけで、やっていること自体は普通のことなんですけど、それだけですごく明るくなった感じがして。1回下げて上げるのっていいんだなって思いました。曲に限らず「今月給料これくらいかな」って見積もっておいて、それより1万円多かったら全体的には大して高い金額じゃなくてもうれしいじゃないですか。そんな感じです。
橋本:あはは(笑)。


















