fhána、『The Look of Life』ツアーで示した変化の中にある不変 更新続けるバンドの姿勢に触れて

fhánaが1月13日にヒューリックホール東京で『The Look of Life Tour '24-'25』の最終公演を行った。このライブは彼らの現在地を示し、そして新たな姿で塗り替えた、そんな一夜だったように思う。

ライブは「Introduction (life is coming back)」で幕をあける。『The Look of Life』のファーストトラックであり、雑踏からソリッドなカットアップに変化するその音は、日常から非日常への入り口として機能する。fhánaのライブではもはやお馴染みになった小池恭平の照明演出により、観客は一気に『The Look of Life』の世界観に引き込まれていった。メンバーたちがステージに上がると、勢いの良いキメから「Beautiful Dreamer」がスタート。以降「現在地」「Runaway World」とオーディエンスのクラップによって盛り上がる楽曲が続いた。

fhánaはこれまでバラエティ豊かな楽曲を制作してきたが、ストレートに拳が上がる楽曲というのはそこまで多くはない。「Beautiful Dreamer」と「Runaway World」というレーベル移籍後のアニメタイアップ曲が、足りないピースを埋めるように機能していることを、「Runaway World」のサビ終わりでtowana(Vo)が客席にマイクを向け、大きなシンガロングが起こったシーンに感じ取った。

そこからkevin mitsunaga(Sampler/etc.)が「いままでのfhánaにはあまりないタイプの振り付けだから」と観客にプチ振り付け講座をおこなったあとに披露した「city dream city」を経て、キャッチーなシンセサイザーのフレーズを佐藤純一(Key/Cho)が手弾きすることでより生っぽい質感を持った「Matching Error」、MVを縁のある京都で撮影し、パフォーマンスでは佐藤の歌唱にkevinのラップ、そして観客がフラッグを振る光景に“集大成”を感じた「spiral」と、『The Look of Life』に収録している個性的な楽曲で畳み掛けていく。
続くMCでは、佐藤が年末年始に「ものすごい曲ができた」と期待を持たせる発言で客席のテンションを上げたあと、“生活を描く”というアルバムコンセプトの起点となった楽曲だと前置きしたうえで「天使たちの歌」を披露。ピアノイントロやコードの展開、サビメロにリズムパターンの構成、ストリングスの使い方などfhánaの楽曲における「らしさ」を散りばめた彼らにとっての“王道”と呼べる楽曲は、ライブという舞台でさらに豊かな表現力をもって届けられた。そこからライブの前半を締めくくるかのように、アルバムでも真ん中に位置付けられている「Last Pages」を情感たっぷりにパフォーマンスした。

その後のMCでは、佐藤が「“生活”することって大変ですよね?」と客席に問いかける。彼曰く「ライブは“非日常”ですが、それと正反対の生活があったうえで非日常に向かうという循環的な煌めきがある。一方で“生活”も大事にしなきゃいけないし、その中にも煌めいている瞬間はある。今回のアルバムではそういうことを表現したいなと思って作ったんです」とアルバムコンセプトを丁寧に説明したうえで、アルバムの表題曲である「Look of Life」へ。10周年イヤーを終え、レーベル移籍や事務所設立、メンバー脱退など、様々な別れを経験したバンドの姿にも重ね合わせることができる楽曲でストレートに観客の心を揺さぶると、fhánaのライブにおける“必殺曲”のひとつである「星屑のインターリュード」で、一気に会場のテンションが上がる。そこからkevinとtowanaの掛け合うラップが特徴的な「GIVE ME LOVE (fhána Rainy Flow Ver.)」を経て、fhána唯一の英詞曲である「Relief」では、小池による虹色の照明演出がこれでもかと炸裂した。
そしてライブの定番曲である「光舞う冬の日に」は、大量の照明によるストロボエフェクトも効果的に機能していた。towanaが指揮者のように5拍子をカウントする手の動きはお馴染みとなっているが、客席からは一瞬一瞬が静止しているように見える。その後のMCで、佐藤は「fhánaの歌詞で生活のことを歌うなんて思ってなかった」とここ数年の大きな変化を口にした。fhánaはこれまで社会や世界、ときには異なる世界線や人生を音楽によって旅してきた。コロナ禍でその旅が強制的に終わり、内省的なアルバムである『Cipher』が生まれたことで、バンドの方向性や音楽性は大きく変化したように見える。そこから生活とリンクした音楽、生活に根ざした音楽をという『The Look of Life』の制作において、ラスト2曲として生まれたのが「風になって」と「waltz for lily」だ。佐藤はMCで「この2曲の歌詞を書いてもらったときに、テーマが“人生”や“生きるとか死ぬ”といったものに広がっていった」と語り、前者の作詞を担当したtowanaも「わたしなりの” The Look of Life”を歌詞にしてみました」と話したあと、それぞれの楽曲を披露した。