「石井恵梨子のライブハウス直送」Vol.5:SEMENTOSが鳴らす一生やめない音楽 バンドマン兼店長の信念「好きなものは絶やしたくない」

上から説教する歌はない。演奏中はびりびりした緊張が走るが、MCになればふっと空気は緩む。出演者のyubiori、マスドレ、さらにBB.STREET店長との過去エピソードを披露して場を和ませる藤村は、さすが、フロアの捌き方がよくわかっている店長という感じだ。あくまで柔和に、複雑にならない言葉で、しかし決して軽くはない問いかけを。そんな新曲が続く。
「上の世代から受け継いだものを下の世代に繋いでいきたい、好きなものは絶やしたくないし、残っていてほしいっていう気持ちが出てきて。僕自身、田舎から出てきた人間ですけど、新宿の、日本の中心地のような場所でライブハウスをやって、今はいろんな人たちを繋いだり何かを受け渡したりしている。そういう役目なのかもしれないっていう気持ちが、今、芽生えてきてます」

本編のラストは「どんと構えて」。変なタイトルに思えるが、〈どんと構えてればいいさ〉と〈Don’t come yetなんて言うなよ〉で韻を踏む、なかなか洒落の効いた一曲でもある。メロディはかなり明るくポップだが、周りには渋味が滲み出し、間奏ではベースソロ、ギターソロ、あとはドラムソロと言いたいくらい三者三様の見せ場が作られる。青い叫びがメインだったスタイルから脱却することで、SEMENTOSには初めて、年相応の説得力や包容力が生まれたのではないか。過去最大規模となった現在のツアーはどこも大盛況。この日も拍手と歓声は止むことがなく、3人は笑顔で二度のアンコールに応えていたのだった。
あくまでマイペースに続いたバンドだ。無理をしないのが前提なのでライブ活動を休止した時期もある。ただ、現在のSEMENTOSにはかつてないほどの追い風が吹いている。これまでは共演者もNine Spicesで繋がった仲間たちが中心だったが、3月9日に控えたツアーファイナルの渋谷クラブクアトロ公演はゲストにZAZEN BOYSが決定。快挙とも言える初共演である。
「ダメ元でオファーしたら向井さんから連絡が来て。でも考えてみたら、ダメでもいいから思い切ってチャレンジして、っていうのをずっと繰り返してきたんですね。売れたいとは思わなかったけど、行けるところまで行きたい気持ちはずっとありましたから。すべてはこの10年で培ったもの、なんだと思います」

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