Caravanの“原点”で振り返る20年前に生まれた2作 二つの恒例行事『新年祭』『HARVEST PARK』も語る

Caravanの道を開いた“原点の場所”

ソロでの道を開いてくれた“原点”、そして『新年祭』に向けて

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

ーー今年の『新年祭』は、最初にリリースした『RAW LIFE MUSIC』と『Trip in the music』から20周年ということで。

Caravan:2枚とも2004年で、『RAW LIFE MUSIC』が出たのが4月20日なので、その日で20周年にあたる年が終わる。それで、この2枚をアナログ盤で出すというので、今年の『新年祭』は、この2枚から選曲して今のメンバーで鳴らしてみよう、と。

ーーこの2枚の頃の記憶ってあります?

Caravan:ありますよ。そこに至るまでに、だいぶトンネルをくぐり抜けましたから。闇の中にいましたからね(笑)。おぼろげに向こうから光がやってきては、でもダメで、がっかりして、みたいなことを繰り返している中で、「アルバムを出さないか」という話をいただいて。もう半ばヤケクソになってた頃だったので、音楽業界に対して。でも当時のレーベル(アーロンフィールド)の社長はじめ、スタッフたちがすごく熱心で。なんか信用できるな、っていう感じがあったのと、僕がコツコツひとりで作り貯めていたデモのようなものを、「このまま出そうよ」と言ってくれて。「もっとアレンジして」とか「サビを作り直して」とかじゃなくて。「あ、そんなことが許されるんだ?」と思って。

ーーその前は、そんなことが許されなかった状況にいたわけですね。

Caravan:そうです(笑)。

ーー確か、最初はバンドをやっていて、ギタリストだったんですよね。

Caravan:はい。10代からやっていたバンドで、一度は、メジャーデビューしようっていうところまでいったんですけど。でも、よくあるじゃないですか、「メンバーを替えろ」と言い出したり。挙句、僕とボーカルの二人組でデビューしたらどうか、みたいな話にすり替わっていって。そんなんしているうちに、メンバーもギクシャクしだして、解散してしまうという経験をしたんですね。それでひとりになったので、宅録で、この2枚の原形になるものを作り貯めている中で……当時はまだ自分でボーカルをやろうとは思っていなくて、これを元にバンドを組みたいな、と思っていて。

 それで、デモ音源を受け付けているプロダクションに片っ端から送ろうと思って送り始めたら、すぐに返事が来て。デビューに向けて、ソロアーティストとして契約できることになったんです。それで契約したんですけど、なかなかレーベルが決まらず、だんだん事務所のお荷物になっていくわけですよ。事務所の人たちも、露骨に「今売れてる曲10選」みたいなCD-Rを渡してきて、「これみたいな曲を作ってくれないか」とか、「アレンジもサビを頭にして」とか、口を出してきて。クリエイティブでポジティブな意見だったらいいんですけど、ハナから二番煎じ狙いというか。そういうのもイヤで、精神的に病んでいっちゃって。「音楽やるの、こんなに大変なのか」みたいな気持ちになって。好きで始めたものが、このままだと嫌いになっちゃうな、と思って、その事務所をやめたんですけど。

 その後は、もう等身大で、自分で作った音楽でライブをやっていこう、と思って、下北沢とか渋谷とかのライブハウスにアプローチしていくんですけど。ライブハウスはライブハウスで、バンドマンを相手にしているようなところも多いので、毛並みが違うからどうにも受け入れられなくて。居心地が悪くて、「こんなふうにみんなやっていくのか……」と。

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

ーーメジャーでバンド、メジャーでソロ、ライブハウスでソロ、ひととおり挫折が。

Caravan:でもそういう時に、横浜のここ、サムズアップとか、系列のバディという当時あったバーとかの存在を知ったんですね。そこでライブを観たら、自分が理想としていた世界というか、ステージとお客さんが近くて、ジャムセッションが自然と発生して、そのクオリティがすごく高くて、「あ、こういうシーンがあるのか」と、目からウロコでした。それで足繁く通うようになって、Keisonとかとライブをやるようになったりしているうちに、だんだん今のベースができていった感じはありますね。まずびっくりしたのは、出演ノルマがないところで。

ーー飲食代で回しているハコはそうですよね。

Caravan:「今日は何人入ったから、これだけね」と出演料をくれるんですよ。そこにいるミュージシャンたちは、気持ちのいい人ばかりで、音楽的にもすごく成熟していて。ここの一員になりたいな、この中で音楽をやれる体力をつけたいな、と思った記憶がありますね。もちろんライブを観に来ている人だけが集まっているわけではなく、お酒を飲む場でもあるから、お客さんは良くなかったら良くないって言うし、ブーイングが飛ぶこともありますけどーー。

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

ーー鍛えられた?

Caravan:鍛えられますよね。ライブでの心の持ちようだったり、立ち振る舞いだったり、そういったものが。そういうお店って、モニター(演者が音を確認する環境)とかちゃんとしてないし、照明もなければ舞台もない、みたいなところも多いんですけど。そこで裸一貫、何ができるか、みたいなことがすごく試されるので。それで徐々にライブが増えていって、地方も回りだして……熊本だったか、滋賀だったかで、アーロンフィールドの人たちとも出会ったんですけど。

ーー1年の間に、2作続けて出したのは?

Caravan:1stの方は、それまで録り貯めていた曲を入れた感じで、これを持ってあちこちツアーをしていたんですけど。そんな間に、またどんどん曲ができるので、もう1枚作った、という感じでしたかね。自分的には、年齢的にも30近くなって、ようやく始まった、やっと自分らしく活動できるようになってきたな、っていうので、すごくやる気が戻ってきて、音楽活動が楽しくなったんですね。その喜びが、詰まっているような気がしますね。

Caravan / ハミングバード【LIVE VIDEO】
Caravan / Stay【LIVE VIDEO】
Caravan / Feed Back 【LIVE VIDEO】

ーーこの2枚を聴き直して、ほかにどんなことを思いました?

Caravan:思った以上に手の込んだアレンジをしていて。ライブで再現できないような細かい音とかいっぱい入っていたり。当時サンプラー、MPCを使っていたので、いろいろ仕込むと、使いたくなっちゃうんですよね。カラフルだな、いろんな音が入ってるな、というのが、最近聴き直して思ったことですね。

ーー「ハミングバード」に、虫の声が入っていたりするんですよね。

Caravan:そうそう。あと、何かを逆再生した音が、ずっと入っていたり。何を考えていたのか、自分でもわからないけど。

ーーそもそも『新年祭』という毎年恒例のライブは、どんなふうに始まったんですか?

Caravan:最初は、2月にチッタでライブをやるのが決まって、年はじめのライブなので、新年っぽいこと……振る舞い酒を用意したりして、みなさんに「今年もよろしく」というものになったらいいなと思って。その時は、毎年恒例になるとは思わなかったですけど。

ーーお客さん全員にプレゼントをあげた年もあったし、振る舞い酒は必ずありますよね。

Caravan:はい。まあでも、できませんよ、なかなか(笑)。赤字ですからね。そもそも振る舞い酒をやらせてくれる会場がないですから。

ーーまあ、ハコで売っているものをタダで配らせてくれ、と言われてもねえ。

Caravan:でもチッタは全然OKなんですよ。ただ、毎年、お酒を提供してくれる先を探すのも大変で。何年も前だけど、直前なのに決まっていない時に、J-WAVEの番組に出たんですね。「まだ決まってないんですよ」って話をしたら、その番組のスポンサーがサッポロ生ビール黒ラベルで、「じゃあうちがやります」と(笑)。そういうことが起きた年もあるんですけど。

Caravanインタビュー写真(撮影=西村満)

ーー選曲の件以外にも、何か考えていることはあります?

Caravan:最近はCaravanのお客さんも、自分同様、いい感じに年齢を重ねてきて。「オールスタンディングがきつい」という、切実な声をよく聞くので。半分は席を出して、半分スタンディングにして、チケット代を少し変えたんですけど、席ありの方が売れてるんですよ(笑)。「あ、みんな座りたいんだ」っていうデータは取れたかな。そういう用意もしているし、20周年の締めくくりでもあるので。20年前の曲を……僕はあんまりそういうのをやらない方なんですけど、今回はその当時の曲を、今のバンドと一緒に鳴らす、ちょっと特別なライブなので。自分も楽しみだし、これ一回きりのライブなので、ぜひ来てもらえたら、と思いますね。

■ライブ情報
Caravan 20th Anniversary
『LIVE EXTRA 新年祭 2025 “RAW LIFE in the music”』
2025年2月2日(日)CLUB CITTA'川崎
open16:45/start 17:30
ticket:前方指定席 7,000yen(D別) / 後方スタンディング 6,500yen(D別)
※振舞い酒あり
Member:宮下広輔(pedal steel gt.)、高桑 圭(ba)、椎野恭一(dr)、堀江博久(key)
info. DISK GARAGE:https://info.diskgarage.com
チケット販売:https://tix.to/shinnennsai25

Caravan 20th Anniversary
『THEATER TOUR EXTRA 2025 "My Life as Caravan"』
2月16日(日)シネマスコーレ【名古屋】
open18:45/start19:00
ticket 自由席 4,500yen ※ポストカード付
info. JAIL HOUSE 052-936-6041

2月22日(土)UPLINK 京都【京都】
open16:00/start16:20
ticket 自由席 4,500yen ※ポストカード付
buy ticket : https://tix.to/theatertourextra2025
info. HARVEST : contact@harvest-music.com

3月1日(土)渡辺淳一文学館 【札幌】
open15:30/start16:00
ticket 自由席 5,500yen ※ポストカード付
buy ticket : https://tix.to/theatertourextra2025
★HARVEST Radio 公開収録あり
info. HARVEST : contact@harvest-music.com

『RAW LIFE MUSIC』
『RAW LIFE MUSIC』
『Trip in the music』
『Trip in the music』

■リリース情報
Caravan20周年企画 1st & 2ndアルバム アナログレコード発売
2月2日(日)新年祭2025  CLUB CITTA'会場にて

『RAW LIFE MUSIC』
SFMA-002 ¥4,620
限定シリアルナンバー入 180g重量盤

SIDE-A
01 Feed Back
02 Think
03 ハミングバード
04 Everyday
05 Love & Hate
SIDE-B  
06 Camp -Band version-
07 246
08 STAY
09 SLOW FLOW
10 Night Song

『Trip in the music』
SFMA-003 ¥4.620
限定シリアルナンバー入 180g重量盤

SIDE-A
01.Trip in the music
02.FOLKS
03.Another days
04.12月
05.Little town
06.Soul music
SIDE-B
07.旅について
08.Tripper's Anthem
09.Sky high
10.No reason blues
11.Over
12.Rainman

■関連リンク
Caravan Bio Link:https://bio.to/caravan_harvest

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