日向坂46 一期生がグループに残してきたもの 存在意義を模索したけやき坂46時代からの歩み

 佐々木久美、佐々木美玲、高瀬愛奈が、1月6日に13thシングル『卒業写真だけが知ってる』の活動をもって日向坂46からの卒業を発表した。1月25日に卒業セレモニーを控えている東村芽依を含めて、けやき坂46の草創期を知る一期生メンバーがグループを去ることになる。

 本稿では、日向坂46一期生の歩みを改めて辿るとともに、彼女たちがグループに残してきたものが何なのか考えてみたい。

 日向坂46は、“一期生の挑戦と努力の歴史”といっても過言ではない。2015年に誕生した欅坂46のアンダーグループとしてけやき坂46(ひらがなけやき)が結成。当初は長濱ねるの欅坂46への途中加入に伴って生まれた偶発的なものだった。しかし、それは後に加入する日向坂46一期生たちが、自分たちの存在意義に戸惑いを抱えることにもなった。それこそ、けやき坂46から日向坂46の改名に至る3年間は存在意義を見出す期間だったと言えるだろう。日向坂46の一期生については、欅坂46からの決別という物語性を抜きには語れない。

欅坂46 『サイレントマジョリティー』

 欅坂46の1stシングル『サイレントマジョリティー』がリリースされた約1カ月後、2016年5月に長濱とともに一期生の活動がスタートする。書籍『日向坂46ストーリー』(集英社)でも明かされているように、初の全国握手会では長蛇の列が並ぶ欅坂46に対して、けやき坂46の列はガラガラだったという。初の単独イベント『ひらがなおもてなし会』は、ワンコインの500円で開催してようやく会場が埋まるというかなり過酷な状況。1stシングルがすでに社会現象とも言えるヒットを記録していた欅坂46とけやき坂46の差は深まるばかりだった。しかし、2017年には初のツアーとなる『ひらがな全国ツアー2017』では様々な課題に直面しながらも、けやき坂46として進むべき方向性を見出していった。

けやき坂46(ひらがなけやき) 追加メンバーオーディションCM

 そんなけやき坂46に、メンバー追加オーディション(二期生オーディション)の開催が通告。ライブリハーサルの現場で偶然それを知ったメンバーたちが衣装部屋に立てこもる、いわゆる「衣装部屋立てこもり事件」が起こった。存在意義を問い、葛藤を抱えながらもこの事件を経て心を入れ替えたメンバーたちだったが、自立心の芽生えたメンバー同士のすれ違いも生じていたのも事実。それが、2017年夏に起こった『TOKYO IDOL FESTIVAL2017』での「TIF激怒事件」へと繋がる。勇気を振り絞って伝えた佐々木久美の一言がグループの意識を変え、けやき坂46はグループとしての絆が強固になっていったのだ。

 日向坂46の歴史を改名以前/以後で分けるのであれば、けやき坂46の期間は長濱の欅坂46専任前後でより細かく分けることができる。けやき坂46のメンバーにとって、長濱は同期であると同時にグループの初期メンバーの1人として一目置く存在だった。彼女が欅坂46に専任するということは、自分たちの力でグループをリスタートさせなければならないということ。しかし、それはまた、欅坂46からの自立を意味してもいた。

けやき坂46『ひらがな武道館 ∼Day3 Special Selection∼』ダイジェスト映像

 2018年、けやき坂46として大きく飛躍を遂げる。1月30日〜2月1日に『ひらがなけやき日本武道館3Days!!』を開催、初の冠番組『ひらがな推し』(テレビ東京系)のスタート、初舞台『あゆみ』への出演、デビューアルバム『走り出す瞬間』のリリースとそれに伴う全国ツアーの開催など、グループ単体としてオリジナルな活躍の場を増やしていった。

日向坂46 『キュン』

 2019年には日向坂46へと改名し、3月には1stシングル『キュン』をリリース。ついにメジャーデビューを果たし、この頃にはすでに欅坂46のクールなスタイルとは対照的な“ハッピーオーラ”を武器に、独自のグループ像を確立させていく。『Seventeen』2018年7月号(集英社)より二期生の小坂菜緒がグループ初の専属モデルを務めていたが、それに続くようにして2019年には加藤史帆、佐々木久美、佐々木美玲、高本彩花がファッション誌の専属モデルに抜擢され、齊藤京子もレギュラーモデルを務めるなど、ソロ活動も活発化。2021年には齊藤とヒコロヒーの冠MC番組『キョコロヒー』(テレビ朝日系)が放送開始、佐々木美玲がドラマ『賭ケグルイ双』(Amazon Prime Video)や『ぴーすおぶけーき』(日本テレビ系)などで俳優として活躍、影山優佳がクイズ番組やサッカー番組で独自のキャリアを開拓するなど、多方面でグループの道筋を示した。

日向坂46『3周年記念MEMORIAL LIVE 〜3回目のひな誕祭〜 in 東京ドーム』ダイジェスト映像

 2022年には東京ドームにて『3回目のひな誕祭』を開催。楽曲「約束の卵」の歌詞にもあるように、〈一緒に歩いて/一緒に辿り着こう〉と宣言する夢の場所だ。一期生が歌唱した「こんな整列を誰がさせるのか?」や「永遠の白線」、「期待していない自分」など、一期生の歩みを感じさせるセットリストであると同時に、活動を休止していた小坂の復帰や三期生の活躍など、未来へと繋がるライブでもあった。佐々木久美が終盤のMCで「今日ここがまた新たな出発の場所となりました」と語ったように、同年に四期生も加入し、新たな世代とともに未来へと進んでいく。

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