タイからやってきた貴公子 NuNew、初の来日公演 国内外から集まったファンと祝った新たな一歩
グローバルな人気を誇る男性アーティスト、NuNew(ヌニュー)の初の日本単独コンサート『NuNew 1st Concert “DREAM CATCHER” in Japan』が12月6日、東京・THEATER MILANO-Zaで行われた。筆者が行った直前のインタビューでは「本番が近いと思うと緊張してしまう」と語っていたものの、いざ舞台に立つとプロフェッショナルなパフォーマンスを繰り広げ、ファンの反応も楽しむ余裕を見せる姿からは大物感も漂う。会場を埋めつくした国内外のファンたちは、微笑みの国・タイからやってきた貴公子の一挙手一投足をリアルに鑑賞して、彼こそがアジアのエンターテインメントのけん引役だと確信したに違いない。本公演は2部制で行われたが、本稿ではファーストステージ(DAYLIGHT DREAM)の模様をお届けする。
始まりを告げるファンタジックな映像が映し出され、美しいピアノの調べに導かれてNuNewのファルセットが響くと、会場のあちこちから歓声がわき上がる。ディズニー映画『アナと雪の女王』の挿入歌として知られる「For The First Time In Forever」と「Let it go」で幕を開けた公演は、ジャンルレスな演出のおかげで早くもこの時点でオンリーワンの輝きを放っていた。
「ウ、ウン」と何度も喉の調子を冗談っぽく確認しながら、最初のトークタイムへ。「こんにちは、NuNewです。ドキドキしています。これから一緒に夢の中へ行くために、みなさんのエネルギーをブーストしましょう。ワン、ツー、スリー!」。彼の掛け声にファンの熱い声が応えると、いよいよショーが本格的にスタート。
まずはタイでリリースした1作目のシングル「Anything」を披露し、歌い終えた後は「おやすみなさい」と言いながらステージ奥のベッドへ移動。すると「ようこそ、夢のような素敵な世界へ。すべてを忘れてこの瞬間を楽しみましょう。準備ができたら目を閉じて。でも本当に寝たらダメですよ」というメッセージが投影される。こうした一連の流れは、まるでブロードウェイのミュージカルを観ているかのごとく、うっとりとさせるものだった。
「日本の音楽マーケットは本当に大きくて、世界でもトップクラスの規模。僕もこれで自分のことを“小さな”日本のアーティストって呼べるようになれたかな?」「僕の最初の海外コンサートですが、みなさんが来てくださって寂しくないです」。日本デビューに対する思いやファンへの感謝の気持ちを率直に語ったインタビュー動画に続き、記念すべき日本デビュー曲「渋谷のBARで初めてのデイト」のステージが始まると、会場はすっかり祝祭ムードに。
タイと日本の音楽シーンを代表するクリエイターたちが手掛けたこの曲は、両国の情緒がバランスよくミックスされた軽やかなサウンドで、世界へと羽ばたくNuNewの第一歩にふさわしい華やかさもある。ナチュラルな日本語で恋人に語りかけるように歌い、〈困っちゃうね〉のフレーズに合わせたキュートなポーズで喜ばせるなど、人懐こいキャラクターが伝わってくるステージングも曲の良さを際立たせていたと思う。
同曲に関連したトークでファンとのやりとりを楽しんだ彼は、今度は外国のポップスをカバーするコーナーで客席を魅了する。YOASOBIの「たぶん」(日本)、ワン・イーボー&シャオ・ジャンの「Wu Ji」(中国)、LE SSERAFIMの「Smart」(韓国)、Tylaの「Water」(南アフリカ)といった国やジャンルにこだわらない選曲と、それらを瞬時にして自分の色に染めてしまう確かな表現力は、最も評価すべきポイントだろう。
なかでも客席を盛り上げたのは日本のナンバー、LiSAの「紅蓮華」である。マンガ『鬼滅の刃』に登場する竈門炭治郎を彷彿とさせる羽織を着たNuNewは、「この服を着ると力がわいてきます!」と同曲を熱唱。オリジナルとはまた違った魅力を引き出す伸びやかな歌声、その響きに寄り添うように聴く観客たちを見て、本人も満足そうな笑みを浮かべた。