宗像明将『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』刊行記念 ちょい読み第1弾:BiS元メンバー プー・ルイ
音楽評論家・宗像明将による書籍『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』が、2025年1月7日に株式会社blueprintより刊行される。
2010年に結成、2011年からライヴ活動を開始し、それまでの「清純派」のアイドルとは異なるラディカルなスタイルを打ち出した、アイドルグループ「BiS」。アイドル業界に一石を投じる存在として、現在でも大きな影響を与えている。特に2024年7月8日に再結成ライブを行った、プー・ルイ、ヒラノノゾミ、カミヤサキ、テンテンコ、ファーストサマーウイカ、コショージメグミなどが在籍した第1期BiSは、これまでのアイドルのイメージを覆すアイドルとして、今でも語り継がれるようなさまざまな過激な伝説を残した。
そのBiSのファンである通称「BiS研究員」たちは、圧倒的な熱量でBiSに人生をささげるようなファンが多くいるほど、明らかに他のアイドルファンとの特異性が見られる存在であった。中には若くして亡くなってしまった研究員や、BiS研究員として生きた証を墓石に刻んだファンもいる。ただ、BiS研究員のそういった記録は時代とともに風化をしており、ほとんど残ってない状況にある。本書では自身も研究員として当時の熱狂を体験していた著者が、元メンバーのプー・ルイやミチバヤシリオをはじめBiS研究員と関係者のギュウゾウ(電撃ネットワーク)などの取材を重ねた渾身のルポルタージュ作品である。
リアルサウンドでは本書の刊行を記念し、内容から一部抜粋してお届けする「ちょい読み」企画を連続展開。第1弾となる今回は、BiSを作った人物であり、リーダーであるプー・ルイへのインタビューの一部を先行公開する。
<BiS元メンバー プー・ルイより一部抜粋>
誰よりも研究員と向き合ってきたのは誰か? BiSを作った人物であり、リーダーであるプー・ルイであることは間違いないだろう。BiSの始動から解散まで、無秩序かつ乱雑を極める研究員の言動に向きあい、そのすべてを見てきたのがプー・ルイだ。
2022年5月19日に研究員のTumapaiが亡くなった後、2022年6月25日には新宿LOFTで「EXTRA!!!supportedギュウ農フェス」が開催された。「EXTRA!!!」も「ギュウ農フェス」もTumapaiが関わっており、事実上のTumapai追悼イベントだった。そこに、プー・ルイが事務所社長とプロデューサーとメンバーを務めているPIGGSが出演したのだ。
そして、「その瞬間」はライヴの途中で突然に訪れた。プー・ルイが突然「primal.」と口にしたのだ。静かなイントロが鳴り、PIGGSがBiSの楽曲を歌いはじめる。1曲だけかと思いきや、BiSの「レリビ」のイントロまで流れだした。「primal.」「レリビ」を歌い終えると、PIGGSはまた自分たちの楽曲に戻っていった。その姿が粋だった。
2024年7月8日に第1期BiSが再結成した後、2024年7月15日に配信された「角由紀子の明日滅亡するラジオ」の「#197BiSはいい思い出だよね。でも戻りたくないよね笑」では、出演したプー・ルイが泣きながらある研究員について言及していた。BiSを知る者ならば、プー・ルイの言う「そいつ」がTumapaiを指していることは明白だった。
プー・ルイは、研究員について語ってくれるだろうか。そう不安を抱きながら打診をすると、取材を受けてくれた。そして、インタビューの場で研究員について聞きはじめると、すぐに涙を流しだしたのだ。
「特別ですよ。話すと泣いちゃうけど。オタクとは想い出がたくさんあるから」
2022年6月25日に、BiSの「primal.」と「レリビ」をPIGGSが歌った理由を聞くと、プー・ルイはこう即答した。
「特別だからじゃない? でも、イヤなこと言われたりするとイヤだなって思ってましたよ。Tumaさんっていうか全員。嫌いっていうか、うざいって思ってました(笑)。好きとうざいが同じぐらい。お母さんとかと一緒ですよ。感謝してるけど、うぜえ。みんな小言ばっかり言ってうぜえ、みたいな!」
プー・ルイが特にそう感じたのは、Twitterでの研究員の言動だった。
「私の中で、研究員であろうとぶーちゃんズ(PIGGSのファンの総称)であろうと一緒なんですけど、もう友達じゃないですか。認知をして、名前を知っていて、顔を合わせている。アイドルとオタクだけど、踏みこんだ関係じゃないですか。TwitterがLINEみたいな感じで、友達みたいな感覚なんですよ。例えば、わざとエゴサに引っかかるように悪口を書くのは、見てほしくて書いてるわけじゃないですか。その行動が理解できないんですよ。
2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)は匿名だし、吐きだしてるだけだから気にならないんです。勘違いしてほしくないんですけど意見を送るのはいいんですよ。でも、私達にも心はあるんだから、例えばですけど『好きゆえに言っちゃう』とか、一言添えて欲しいなって思ってます。でも、私達のことが好きでねじまがってそう言ってるのは、わかってたんで。それがうざいけど、わかるから好きって感じ。でも、心に残ってます。言われた言葉は忘れないんで。でも、特別は特別。良くも悪くも特別。そんなにいろんな感情を放り投げられたことが初めてじゃないですか。汚い感情も、いい感情も」
続きは書籍にて
■書籍情報
『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』
著者:宗像明将
amazon予約:https://www.amazon.co.jp/dp/4909852476
四六判/268ページ(口絵20ページ)
ISBN:978-4-909852-58-8 C0073
定価:2,750円(本体2,500円+税)
発売日:2025年1月7日(火)
■目次
はじめに
BiS研究員 ごっちん
BiS研究員 越田修
2011年のBiSと研究員
BiS研究員 みぎちゃん
BiS研究員 Kん
2012年のBiSと研究員
BiS関係者 高橋正樹
便器の男
BiS研究員 Kたそ
2013年のBiSと研究員
BiS研究員 がすぴ〜
BiS研究員 Tumapai、あるいは田中友二へ
Tumapaiの母
2014年のBiSと研究員
BiS関係者 ギュウゾウ(電撃ネットワーク)
BiS元メンバー ミチバヤシリオ
2014年7月8日の横浜アリーナ
BiS解散後の研究員
BiS元メンバー プー・ルイ
2024年7月8日の歌舞伎町シネシティ広場
BiS年表2010-2024
あとがき
BiSオフィシャル&ブートTシャツとBiS研究員