H△G、メンバーも知らなかった中国での大ヒット 7年前のボカロカバーアルバムが国境を越えた理由

Chihoという存在が刺さっている感じがする(Yuta)
ーー上海での初中国ライブに続き、11月に広州で行ったワンマン2公演『H△G・CHINA TOUR 2024 - Phase 2 1st Lve in Guangzhou「 声 」』は、ボカロカバーアルバムの収録曲を軸にしたセットリストだったらしいですね。
Yuta:上海のライブでみんなからの反響が大きかった楽曲は盛り込みたいと思っていたなかで、やっぱり『声 ~VOCALOID Cover Album~』に入っている楽曲は手ごたえを感じていたので、よりフィーチャーしたライブにしたいと思いセトリを組みました。
Chiho:上海でライブをしたときに、そのアルバムのCDを持ってきてくれた子もいたんですよね。7年の時を経たいまも大事に持ってくれていることを感じましたし、中国で特に聴いてもらえているこのアルバムの楽曲をたくさん披露したことで、この作品がひとつ違う形で完成に近づいたような気がしました。やっぱりただ聴いてもらうだけではなく、それをその場まで届けに行くことが大事なんだなっていう。
ーーなおかつ一部の楽曲ではスマホ撮影OKという、H△Gとしては珍しい取り組みもされたとか。
Chiho:はい。せっかくならみんなと一緒に楽しめる企画ができないかなと思って、現地でイベンターさんやスタッフの方たちと話し合うなかで、それなら実現できそうということで、アンコールの2曲はあまり顔が見えないような照明を作ってもらって、撮影OKの時間を設けてみました。最近は言わずとも撮影してしまっている事態があるなかで、あらかじめ撮影できる時間があることを伝えておくと、それ以外の時間はみんな撮影せずに楽しんでくれたのでメリハリがつきましたし、思い出としてもオフィシャルで残せる時間になりました。でも、集中してライブを楽しみたいのか、撮影せずに前のめりで聴いてくれている人もいてかわいかったです(笑)。
ーー他に中国ならではの反応や盛り上がりを感じた楽曲はありますか?
Chiho:「カラフル」は反応が良かったです。今回、イベンターさんからの提案で、ライブでやる楽曲の曲目を事前に公開していたのですが、「カラフル」は2日間のどちらにも入れていたら、SNSで「カラフル」をやるなら2日とも行きたいと反応しているお客さんもいて。一緒に声を出せる楽曲でもあるので、実際にライブでもすごく盛り上がりました。
ーー「カラフル」はH△Gのオリジナル曲で、『声 ~VOCALOID Cover Album~』の収録曲ではないですよね。ということは、やはりボカロのカバーというだけでなく、H△Gの音楽自体が受け入れられているのかなと。
Chiho:それはすごく実感しました。今回はボカロカバーが中心ではあったのですが、中国のWeiboというSNSに「この曲をやってほしい!」というリクエストがたくさん送られてきたなかで、「銀河鉄道の夜を越えて」とか懐かしいオリジナル曲も結構あって。いろいろ聴いてくれていることを感じてすごく嬉しかったです。
Yuta:広州のライブでもやった「星見る頃を過ぎても」は、僕らが最初に作った楽曲なのですが、この曲も反応が良くて、イントロが鳴った瞬間に歓声が上がったんですよ。僕らが12年前に作った楽曲が、いま国を越えて認知されていることがすごく不思議でしたし、H△Gはそこから始まっているので、ものすごくエモい気持ちになりました。
ーー改めて、実際に中国でライブを行った反響を受け止めたうえで、H△Gの楽曲が中国の人たちに受け入れられている理由をどのように考えていますか?
Yuta:いまは日本でもK-POPや韓国の文化が好きな方が増えていますが、それと同じように中国にも日本の文化が好きで、日本語も理解したいという方が一定数いると思うんですね。そんななかで僕らH△Gは日本語の響きを大切に楽曲を構築していて、Chihoの声も絶対的に聞きやすいと思うので、その意味で刺さりやすい部分があるのかなとは思います。あくまでも推測になりますが。
ーーボカロの楽曲も言葉やストーリー性を重視したものが多いので、その意味でもH△Gとは相性が良かったんでしょうね。だからこそ日本のボカロや周辺の文化に興味を持つ中国の人たちにも受け入れられた。
Yuta:よく「音楽は国境を越える」と言いますけど、今回、それを本当に体感することができたんです。文化が違うなかでお互いをリスペクトし合うこと。音楽によって一瞬で距離が縮まること。中国に限らず、音楽や芸術を通して繋がれるのは素敵なことだと感じていますし、そういう機会をもっと作りたいなと思いました。
Chiho:私はH△Gの楽曲からにじみ出てくるものというか、パッと聴いたときのサウンド感の受け入れやすさも理由なのかなと感じていて。中国では以前から、私たちの楽曲を踊ったり、歌ったり、オタ芸をしたり、私たちが作ってくれたものに対して二次創作的な形で自分たちなりの楽しみ方をしてくれていたんです。そういう文化が好きな人たちの好みに刺さりやすい音楽なんだろうなって思います。
Yuta:あと、これは一緒にステージに立っている身だから感じるのですが、Chihoという存在が刺さっている感じがするんですよ。
Chiho:えっ!? それはどういうこと?
Yuta:歌姫的なアイコンとして受け入れられているというか。ライブでもChihoが会場をコントロールしている感じがあって、Chihoが動くと会場もそれについて動くんですよ。
Chiho:そんなことある?(笑)。でも私のリアクションに対するスピード感、サインを絶対に見逃さないように少しでも感じ取りながら楽しんでくれているのはライブ中にもすごく感じましたし、一緒に楽しもうとしてくれる気持ちの強さ、お互いがいなければ成り立たない一体感は会ったと思います。
ーーそういった中国でのライブの経験を、今後の活動にどう活かしていきたいか。最後に今後の展望についてお聞かせください。
Chiho:まずはやっぱり国内でもライブをしたいですね。きっと中国ライブがなかったら、ここから先の活動も全然違っていたと思うんです。このライブを経たからこそ思うことがたくさんあって。私たちはもともと地元の岡崎市を拠点に音楽活動を続けていて、生活と音楽のバランスを意識して活動していたのですが、最近は音楽にしか向けられないであろうエネルギーが自分の中で特に強くなっていて。今回の中国ライブは機会を逃さないようにスピード感を大事にしましたけど、ここからは慎重に、もし日本でH△G主催のワンマンをやるとしたら、みんなとどう再会するのがいいのか、丁寧に考えていきたいと思っています。
ーー音楽へのエネルギーが高まっているのは、中国ライブとは別に何かきっかけがあるのですか?
Chiho:この話はあまりしたことがないのですが、やっぱりコロナ禍というのが大きいです。そのときにやりたかったことができなくて残った気持ち、それを昇華するものが音楽の他にはないということが、この期間でよくわかったんです。だから今回の中国ライブのお話はすごくありがたかったですし、やっぱり機会を逃してはいけないというのを強く感じるんですね。それと私はボーカリストとして最後にH△Gに加入したので、だんだんH△Gになっていったところがあるのですが、ここからは自分がその輪の真ん中に立っていかなくてはいけないという強い気持ち、これまでがあったからH△Gのボーカルとして何かを出せるんじゃないかと感じていて。いまは12年目にして過去最高に燃えているかもしれないです(笑)。
Yuta:2022年の10周年ライブを終えて、そこからはゆるく活動していくはずだったのが、ご縁があって中国ライブも実現して。今日この場にいることも含めて、いろんな方とのご縁で繋がってきた12年だと思うんですね。なので今後も関わってきた方たちとのご縁を大切にしたうえで、年齢を重ねたぶん、地に足を付けて活動していきたいです。それと国内のファンの方からの「待ってます!」という声もすごく感じていて。それが自分のモチベーションにもなっていますし、届けたいという気持ちはすごく高まっています。
ーーYutaさんはXで「まだ世に出ていない曲が10曲ぐらい溜まっています」とポストされていましたね。
Yuta:そうなんです。やっぱり人からもらうパワーはすごいなと思って。2023年は2曲しか作らなかったんですよ(笑)。楽曲も量産していますし、まだお話できないことを含めて、いまの僕たちは「なんでこうなっているんだろう?」と思うほどの状況にあるので、期待してもらえたらと思います。

■作品情報
H△G『声 ~VOCALOID Cover Album~』
<収録曲>
1.心拍数♯0822 (Music & Lyrics:蝶々P)
2.インタビュア (Music & Lyrics:クワガタP)
3.glow (Music & Lyrics:keeno)
4.地球最後の告白を (Music & Lyrics:KEMU VOXX)
5.from Y to Y (Music & Lyrics:ジミーサムP)
6.少年と魔法のロボット (Music & Lyrics:40mP)
7.アイロニ (Music & Lyrics:すこっぷ)
8.ハローハロー (Music & Lyrics:残響P)
9.桜ノ雨 (Music & Lyrics:halyosy)
10.タイムマシン (Music & Lyrics:1640mP)
11.星屑オーケストラ (Music & Lyrics:ハヤブサ)
12.ティーンエイジ・ネクラポップ (Music & Lyrics:石風呂)
13.からふる日和 (Music & Lyrics:みきとP)
14.声 (Music & Lyrics:H△G)
詳細:https://www.universal-music.co.jp/hag/products/uicz-4395/
■ライブ情報
『MERRY ROCK PARADE』
2024年12月21日(土)出演
開催地:ポートメッセなごや
https://www.merryrockparade.jp/
■関連リンク
X:https://x.com/HAG_official
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC8DXdGQcmCkiXXfKiioW0Cw
公式サイト:https://hag-official.jp/



















